ひこうき雲を追いかけて vol.75 消去法のクルマ選び

くまで、この仕事を始めて今年で14年目になる私の感想ではあるが、最近のクルマやバイク(新車)は高くなり過ぎたというのが偽らざる実感だ。

text:ahead編集長・若林葉子 [aheadアーカイブス vol.190 2018年9月号]

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vol.75 消去法のクルマ選び

vol.75 消去法のクルマ選び

アヘッド ひこうき雲を追いかけて

例えば、先日、試乗して心ときめいた新型アルピーヌ。発売限定モデルの価格は790万円。

全額ローンで買う人はいないだろうが、初期費用を足して仮に850万円として、単純に5年で考えてみても月々14万を超える。家賃より高いじゃん。10年でも月々7万円。普通車の月額維持費はおおよそ3万円強と言われているから、月々10万円以上の出費となる。

一方、もう少し身近な国産車だって、やはりモデルチェンジのたびにじわじわと価格は上がっているのだ。原材料が高騰していることや、安全に関わる装備が増えていることや、エコ化に伴うコスト高とか理由はいろいろあるのだろうし、メーカーだって頭は痛いはずなのだ。
 
弊誌でずっと連載を持っていただいている岡崎五朗氏とついこの間話す機会があって、「五朗さん、昔からずっとクルマの価格(日本車)は安すぎると書いてらっしゃいますけど、今でもそうですか」と聞いてみた。

五朗さん曰く、「クルマの価格はたぶん、適正なんだよ。それを買えない我々が貧しくなったんだね」

ちょっと調べてみると、この20年間、先進国の中でデフレで苦しんでいるのは日本だけで、この20年間、先進国の中で人件費が下がり続けているのも日本だけなのだそうだ。世界は同じようにリーマンショックも経験しているのに日本だけなぜ? という疑問は大いにあるが、昔のように収入がどんどん増えていくならともかく、その見込みもないなら出費を抑える。それが普通である。

バブルを経験した(正確には私は年代的にその恩恵には預かっていないが)私たちからすると、いったいいつの間にそんなことに…と愕然とするが、これが現実なのだろう。もはや若者のクルマ離れなんて言ってる場合ではない。

加えて、最近のクルマはデカくなり過ぎた。ユーザーが余裕のある室内空間を求めることや、衝突安全性能を確保するためなど訳あってのことではあるが、それにしても日本の道路事情や住宅事情を考えると、クルマの選択肢はどうしても狭まってしまう。

私の住むマンションの立体駐車場のサイズは全長×全幅×全高がそれぞれ4,900㎜、1,850㎜、1,550㎜(もしくは2,100㎜)。最近のSUVは全幅が軒並み1,800㎜を超えているから、入ってもかなりぎりぎり。XC40、いいクルマだなぁと思っても、全幅1,875㎜。アウトである。クルマ選びがどんどん条件面での消去法になっていく気がする。

オチのない話になってしまったが、そんな中、ジムニーが納車1年待ちの人気というのは腑に落ちるのである。手の届く価格でコンパクトでホンモノで。クルマにはやっぱり夢が必要、と思うのは私だけだろうか。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。

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