岡崎五朗のクルマで行きたい VOL.44 クルマ作りのプロ意識

前号で紹介したように、新型ムーヴはマイナーチェンジとは思えない大胆な設計変更によって、内外装だけでなく騒音、乗り心地、高速直進安定性、コーナリング性能といった走りの性能までをも大幅に改善してきた。マイナーチェンジ前モデルのオーナーの方には申し訳ないが、まるで「別物」と感じるほどの大きな進化を果たしたのだ。

text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.124 2013年3月号]


Chapter
VOL.44 クルマ作りのプロ意識
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VOL.44 クルマ作りのプロ意識

アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい ロゴ

改良の内容は多岐にわたるが、僕がもっとも感心したのが普通に走っているときのしっかり感。タイヤを軋ませるような走りをしなくても、四つ角を曲がっただけで「クルマ全体がしっかりしたな」と思える。それもはっきりと。

新型ムーヴのサスペンションには、全グレードに「スタビライザー」というパーツが装着されている。コーナリング時の車体の傾きを抑え、姿勢を安定するための基本パーツだ。しかし旧型では低コストを優先するあまり多くのグレードでスタビライザーが省かれていた。

ムーヴに限らず、コスト優先のクルマで真っ先に省かれるのがスタビライザーである。燃費がよくなるわけでもなく、豪華に見えるわけでもないからだ。それをあえて全グレードに復活したのはなぜか? チーフエンジニアの中島雅之さんの言葉に感動した。「ユーザーの方にすぐに分かっていただけるとは思っていません。しかしクルマ作りのプロとして当然必要なものだと判断したまでです」。

たしかに、一般ユーザーがディーラーでのごく短時間の試乗でスタビライザーの恩恵を感じるのは難しいだろう。しかしユーザーにとって幸いだったのは、中島氏が「だから付けない」と考える人ではなかったことだ。ユーザーには分かってもらえなくても、必要だから付ける。それがクルマ作りのプロとしての良識なのだと。そんな素晴らしいエンジニア魂を応援するためにも、我々自動車メディアはいいものはいい、ダメなものはダメと、是々非々の態度で臨まなければならないのだ。

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