岡崎五朗のクルマでいきたい vol.56 奥深いタイヤの奥

僕が出演しているテレビ神奈川の自動車番組「クルマでいこう!」には、紹介するクルマの○と×をボードに書くコーナーがある。ごくたまに「×なし」というたいそうよくできたクルマもあるが、そういうケースは年に一度あるかないかで、たいていは×が付く。

text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.172 2017年3月号]


Chapter
vol.56 奥深いタイヤの奥
マツダ・CX-5
スズキ・スイフト
アストン マーティン・DB11
BMW・5シリーズ

vol.56 奥深いタイヤの奥

アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい ロゴ

たとえば最近とりあげたトヨタ「C-HR」では、×として「退屈なパワートレーン」と書いた。そういえば以前、ヴィッツのマイナーチェンジでは○を「まっすぐ走るようになった」としたが、これは○でもあるが、同時にマイナー前はマトモにまっすぐ走らなかったという皮肉でもあった。

番組はクルマの概要紹介や試乗インプレッション、開発者インタビューなどで構成しているが、僕としては○×コーナーこそが番組の“キモ”だと思っている。なにも×を付けることに快感を覚えてるわけじゃない。

どんなクルマにも長所と短所があり、両方を知ったうえで買うのが健全な購買行動だと思っているからだ。そういう意味では、テレビだけではなくこの連載で書いている原稿も同じである。

クルマを評価する際、僕がいちばん大切にしているのは常に是々非々の態度で臨むこと。心にもない褒め言葉は読者への裏切り行為だし、辛口と称した批判のための批判は精魂込めてクルマをつくった方々に対する誹謗中傷に過ぎない。自分の経験と知識をもとに、客観的な立場から感じたことを率直に書く。それが、評価者に求められる姿勢だと信じている。

たまに「批判的なことを書くと試乗会に呼んでもらえなくなるんですよね?」などと聞かれることがあるけれど、それは都市伝説だ。21歳のときから書き続けてきて、原稿にクレームがきたことは一度もない。以前、某モノ雑誌で白物家電関係の連載をしていたが、書いたことが事実でもネガな内容にはすぐにクレームが付いて驚いた。

聞くとファッション業界にしろ音楽業界にしろそれが常識なのだそうだ。それに対し、自動車業界は筋が通った批判であるかぎりクレームが来ることはない。そんな環境を作ってくれた先輩たちに感謝しつつ、これからも是々非々の姿勢でクルマ評価をしていきたい。

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