岡崎五朗のクルマでいきたい vol.82 三菱の企業文化

この原稿を書いているまさにそのタイミングで三菱自動車の燃費試験不正問題のニュースが飛び込んできた。速報性ではどだいネットにかなわない印刷媒体は、本来であればきちんとした取材と考察を売り物にすべきだ。この原稿が皆さまの手に届く頃には、現時点では明らかにされていない新事実が出ているかもしれないし、予想も付かない展開になっているかもしれない。しかし、それを承知のうえで書くことにした。いま自分の考えを述べておかなければ、さらに1ヵ月経ってしまうからだ。それぐらい、今回の不正は深刻な問題である。

text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.162 2016年5月号]

Chapter
vol.82 三菱の企業文化
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vol.82 三菱の企業文化

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事の発端は2013年6月から発売している「eKワゴン」「eKスペース」と、日産向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の4車種で燃費試験データの改ざんが発覚したこと。

国に提出する走行抵抗値(タイヤの転がり抵抗と空気抵抗)を実際より低く報告するという不正行為によってカタログ燃費を5〜10%水増しした。日産の試験によって発覚するまで、この不正は三菱の社長に報告されていなかったという。また、4月20日に行われた社長会見では「性能実験部部長が自分が指示をしたと証言している」という主旨の発表があった。

eKワゴンが発売された当時、軽自動車の燃費競争は激化し、各メーカーはコンマ1km/ℓ単位でしのぎを削っていた。わずかな燃費の差が販売に大きく影響したからだ。そんなプレッシャーが不正の背景にあったのはまず間違いない。しかし、不正をしたところでその部長になんの得があるのだろう? その部長の指示に従った人たちを含め「上からの要求にノーと言えない企業文化」があったとしか思えない。

2000〜2004年のリコール隠しでは組織ぐるみの犯罪と認定され当時の副社長が書類送検され罰金刑となった。現経営陣が今回の不正にどれだけ関与しているのかはまだわかっていないが、個人の暴走とはおよそ考えられず、コンプライアンスよりも上からの指示が上回ってしまう企業文化が露呈された。

いま三菱に求められているのはユーザーへの謝罪、賠償、徹底した原因究明、積極的な情報公開、そして何より企業文化の改革である。三菱車ユーザーのためにも、また大部分の真面目でクルマ好きな三菱自動車社員のためにも、非難するだけではなく、三菱頑張れ! というスタンスで僕は応援したい。

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