アウトドアライフを楽しむのに不可欠なSUVの中でも、ひときわ個性的でファンの多いジムニー。今や軽自動車唯一のクロスカントリー4×4となったクルマの魅力をさらに引き出すのが、アピオの製作するカスタムである。
今回は、代表取締役である河野仁さんのインタビューからその魅力を探ろうと思う。
写真・文 森下光紹
アピオのコンプリートカスタムの歴史は30年前のJA11型ジムニーをベースにしたモデルに始まる。
先代の社長(現会長)の尾上茂氏は、2サイクルエンジン時代のジムニーからパーツの製作を開始し、主に足周りのモディファイを手がけて、その名声は日本中に轟いていた。
海外のラリーレイド等にも積極的に参加するアピオにあって、その個性的なカスタムを製作することは、その後のコンプリートカスタム製作という道筋をはっきり付けたということになるだろう。
「以前のクロスカントリービークル愛好家というのは、自分で細かくパーツを選んで、コツコツと組み上げるという方法が主流でした。それは、みな手探りでデーターが無かったからなのですが、ユーザーは楽しくモディファイしていましたね」
しかし、モディファイの方法を間違えると、安定性を損なう危険なクルマに仕上げてしまう場合もあり、四駆ブームと言われた時代には、そのようなカスタムカーが世の中に溢れたこともあったのだ。だからこそ安全で楽しいクルマ製作というコンセプトでカスタムカーを製作した。
アピオが提案するコンプリートカスタムは、長いクルマ製作の中で培われたノウハウを、それぞれに表現したラインナップとなっている。TSシリーズと命名されたTは、同社足周りの名称でもある「ツヨシ君」のTである。つまり、やはり基本的にはサスペンションのモディファイを軸としたカスタムラインナップなのだ。
「僕らはクルマを製作するだけでなく、そのライフスタイルを提案しなくてはいけません。ジムニーをカスタムすることで、どんな楽しい世界が待っているのか、様々な方法で表現することで、本当のクルマライフを理解してもらおうと思っています。実用としての実力も大きいですが、だからこそ趣味を飛躍的に楽しむこともできる。それがTSシリーズのコンセプトです」
小さなジムニーだからこそできるカーライフ。日本中の道を知り尽くし、どこでも走ることができる実力があるからこそ、趣味として楽しむことができるのだ。コンプリートカスタムは、レストランにもあるコース料理のようなものと河野社長は言う。完全にアラカルトでは、選ぶのも大変だから楽しめない。だからコースを選んで、その後はアラカルトを追加するのは自由。そして、そのコースは最初からアラカルトとして注文製作するよりも、圧倒的に安い価格設定が成されているのである。
ジムニーというクルマを選択するユーザーは、クルマをただの道具としては見ない。快適性だけを追求するなら、他に優秀なモデルはいくらでも存在する。そこであえてジムニーを選ぶならば、購入後10年を経ても後悔しない個性と魅力が必要である。アピオのコンプリートカスタムは、発展性も兼ね備えたコンセプトを持っている。
ジムニーJB23ベースのコンプリートカスタム「TS3.TS4.TS7.TSB.TSR」で、現在最も人気モデルとなっているのがTS4である。
サスペンションとホイール&タイヤの変更で車高を約60mmアップさせたスタイリングが大きな魅力。
フロントバンパーの小型化、そしてスタビライザーを装着し、コイルスプリングは「A2000Tiつよし君」を採用。ショックアブソーバーはROADWIN製RE50を使用する。
マフラーは「静香御前マフラー」(マフラー認証制度対応モデル)を使用し、排気効率と環境にも配慮する。
アルミホイールは16インチ5.5JサイズのWILDBOARを装備タイヤも新品セットされる。
センターコンソールのカーボンカバーとレザースポーツステアリングホイールは、その他オプション設定。
ペダルは、ノーマルにボルトオン装着できるアルミ製。これもオプションである。
超ヘビーデューティーな時計として知られるルミノックスとのコラボレーションで製作されたTS7のミリタリーバージョン。
車高のリフトを約45mmに押さえたこのバージョンはハイウェイやワインディングロードをより軽快に走行できる実力を持つ。
塗装をミリタリー調に変更し、リベットも化粧ビスにて表現された外観は、本格的な雰囲気抜群である。
車体側面も、ツヤのない仕上がり。ガソリンタンクリッドにも個性的な意匠を持たせてある。
足周りのチューニングは、「スーパーつよし君銀八安心キット」マフラーはヨシムラとのコラボで製作したチタンマフラーを装着。
テールライトにはガードを装備。牽引フックも前後に装備する。
内装もミリタリー調でイメージを整える。コンソールのカバー類はカモフラージュ柄を選択する。※参考品
ペダルはノーマルボルトオンキットのアルミ製。アルマイト加工されたものを採用する。
店内ショールームには、ジムニーのパーツが壁一面に展示されている。明るく広い、寛げるスペースである。
レカロシートにも力を入れているので、実際に座って確かめることができる。
マフラーは、スリップオンタイプからフルエキゾーストタイプまで、様々なラインナップを展示。
サスペンションは、旧タイプジムニー用のリーフスプリングも継続して販売されている。
外装パーツも豊富で、バンパーは形状の違うパーツを様々展示している。
サービスピットには3台のリフトが完備されていて、効率の良いメンテナンス作業が行われていた。
河野仁さん(取締役社長)
シャープのデザイン室からアピオに入社。インダストリアルデザイナーである経験から様々なパーツを生み出し、2005年より社長に就任。明るい人柄と、誰にも負けないクルマ好きを自負する趣味人として知られている。