360モデナからF430、そして488まで。近代スモールフェラーリが目指したもの

F430はどこを目指したのか?

フェラーリ F430

フェラーリは、1994年に発売したF355でV8スモール フェラーリのレベルを一気に近代化させ、見事な復権をはたしました。

そして2004年にはF360モデナを世に送り出し、現在に続くプレミアムスポーツカーの地位を確固たるものとしたのです。しかしそのF360モデナは、いわゆるスポーツカーファナティックからはあまり評価されていません。

軽量化に貢献するアルミボディの採用はすでにホンダNSXが達成し、あまりにそのサイズを、F355から一気に肥大化させすぎたのです。

またフロントシートとエンジンコンパートメントの間にラゲッジスペースを作り出し、ゴルフバッグを2個積み上げられるようにしたことや、F1マチックの進化で「誰もが乗れるフェラーリ」というキャラクターを強めたことも、そのラグジュアリーな印象を加速させました。

だから巷の評価では、その後継者であるF430こそが「原点回帰したV8フェラーリ」として珍重されているワケなのですが…。

F430の大きな進化

フェラーリ F430

F430が360モデナから大幅に性能を向上させたのは、そのシャシー性能(エンジン性能は当然の話として)。具体的には空力性能の著しい向上が、一番のトピックです。

F355時代から始まったアンダーフロアにおけるエアフローの整流は、F430においてダウンフォースと呼べる領域にまで発展。

それまで車体の揚力を抑え、空気抵抗を可能な限りまで減らすレベルだった空力性能は、大型ディフューザーの採用によって、レーシングカーの領域にまで踏み込んできたのです。

いわゆるナンバー付きの市販車に、空力性能を付加することにはさまざまな難題がつきまといます。たとえばダウンフォースを増大させればさせるほど、その空気抵抗は増えて燃費は悪化。また空気抵抗の影響が一番低いとされる床下でダウンフォースを得るには、空気の流速を高めるためにフラットなフロア形状と低い車高、そしてその空気を拡散する大きなディフューザーが必要となるといった具合です。

よってF430チャレンジなどは、微妙なライドハイトの変化によって空力特性が大きく変わるという、神経質な一面すら持つようになっていました。ちなみに360モデナは前時代的なメカニカルグリップ主体のシャシー性能であり、走りを煮詰めて行くうえでは、速さこそおよばないもののその操縦性が素直だとするドライバーは多くいます。

さらにF430からは「eーDIFF」が登場し、ハイパワーミドシップの操縦に対して、アマチュアドライバーへ門戸を大きく開きました。

だから技術的な側面だけで見るとF430は、360モデナに較べ「走りを磨いた硬派なV8フェラーリ」に映るというわけです。

フェラーリ F430

しかし俯瞰でこれを眺めてみれば、じつはF430は“高性能な360モデナ”に過ぎないことがわかります。

フェラーリは360モデナでつかんだ裕福層の趣向を確実に掌握し、押し出しが強くて快適なボディのサイズは踏襲したうえで、ここにさらなる空力性能を付け加え、うるさいエンスージアストたちを黙らせたのです。

そしてこの流れはフェラーリ458イタリア、そして488GTBで、さらに高度な発展を遂げています。

つまりフェラーリは、一度たりとも自身のコンセプトを曲げてはいない。その証拠に360モデナ以降、フェラーリは1mmたりともそのボディサイズを縮小してなどいないのですから。

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