ART FORCE...S13シルビアが放っていた美しさと走りの魅力とは?

エンジン

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S13シルビアといえば、ある人にとってはデートカー、ある人にとっては峠せいい汗を流した相棒、またある人にとってはカスタムのベース車・・・出た時から爆発的人気となり若者のハートを捕らえたS13シルビアですが、それは時と世代を超えて幅広い層に支持されて来ました。
今回はそんなS13シルビアの魅力の源を探ってみたいと思います。
Chapter
日産 シルビアCM映像
キュート、かつエレガントであること
時にアスファルトダンスもこなす
気持ちよく回るエンジン
美の秘訣は、手入れを怠らないこと
花の命は結構長い

日産 シルビアCM映像

まずは発売当時のCM映像をご覧ください。

名曲「青い影」の曲調とエレガントな曲線を強調したシルビアのスタイリングとのコントラストが見事です。キャッチコピーやナレーションもどこか敢えて抽象的な表現で、クルマそのものの魅力を引き立てるような演出となっています。

キュート、かつエレガントであること

シルビアの第一の魅力はスタイリングにあるのではないでしょうか。

無意味でわざとらしい造形を排し、シンプルで美しく、柔らかな曲線と伸びやかなプロポーションはスポーツクーペのセオリーそのもの。多くの人が格好いいと素直に納得するそのスタイリングは、あのピニンファリーナも一目置いていたとか。

キュートでエレガント。現代のスポーツカーがどちらかというと筋骨隆々としたスタイリングなのに対し、やや上品で女性的な美意識を持っていたと言えます。それゆえに、男性のみならず、女性からも高い支持を得ていたということなのでしょう。

時にアスファルトダンスもこなす

プレリュードやセリカなど、多くのライバル車が合理的なFFレイアウトを採るようになり、このクラスのスポーツクーペからは後輪駆動の走りの良さが失われつつあることを惜しむ声がありました。日産は当時このクラスに適切なFFレイアウトを持たなかったこと、またライバルに対してのアドバンスとして、敢えて後輪駆動を選択しました。

今も昔も、合理化の波はFFを選択させ、ドライビングファンの声が後輪駆動に押し戻す、というせめぎあいがあったということになります。なにも今に始まったことではなかったわけです。

さて、こうしてFRを選択したシルビア。スタイリングの良さに加え走りの魅力も全面開花。ただのデートカーにとどまらないスポーツカーとしても高い評価と支持を受けることになります。

このオールラウンド、マルチプレイヤー的な性格こそが、幅広い層の顧客を獲得し、その魅力を長年にわたり保ち続ける源泉になっていたように思います。
オートマで静々と、あるいはマニュアルでフルカウンターのアスファルトダンスを・・・。

美人で、スポーツも万能、それはモテますよね。

気持ちよく回るエンジン

前期型はCA18系ツインカム、自然吸気とターボ。後期型は新開発SR20系ツインカム、自然吸気とターボ。

どちらも実用エンジンがベースなのですが、CA系は給排気と点火系の改良、SR系は4連スロットルの採用などでレスポンスの良さと気持ちの良いピックアップを獲得。どちらも静かなエンジンではありませんでしたが、豪快で生き生きとした性格が魅力でした。

開発者のエピソードとして聞いたことがあるのは、マニュアルギアボックスの2、3、4速のギアレシオの繋がりを重視したということ。ギアチェンジしたときのエンジン回転の低下と次につながるギアのギア比を考慮して、シフトアップ、ダウン時の軽快なフィーリングを重視したとおっしゃっていました。

こうしたあたり、やはり日産は実験部門が強いことを印象づけます。最初期のCA18DE搭載車はスペック的にも一番劣る仕様ですが、マニュアルで乗ればじつに軽快でドライバーを楽しませる才能は十分でした。

こうしたことを実現できるのは、机上の理屈だけではない、実走行による実験を重視している開発姿勢と、その実験を担当するドライバーのノウハウの豊かさ、あるいは発言力があってのものです。

この時代の日産は企画、営業、開発、そして実験、それぞれの要職の足並みが揃っていたことが大きな強みでした。

美の秘訣は、手入れを怠らないこと

S13シルビア現役時代、販売台数はモデル末期までさほど落ち込むことなく根強い人気を保っていました。

それは、ひとえに「手入れ」を怠らなかったことに尽きます。

最後期型のJ'sをベースとした特別仕様「オールマイティ」は、「シトラスイエローツートン」というボディカラーも最後期で設定されたレアなカラーなのですが、こうしたあたりもユーザーの心を捕らえ続けられた要因でしょう。

S13シルビアは異例なほどマメな改良が行われていて、そのペースは一年に一度。今でこそ当たり前のイヤーモデルというスケジュール感ではありますが、当時の改良スケジュールは通常二年ごとでしたから、シルビアは売る側もどんどん営業をかけていたわけですね。

ダイヤセレクション、それがカタログモデルになったダイヤパッケージ、レザーセレクション、アートテリアセレクション、クラブセレクション、Q's-SC(スペシャルカード)、Q'sスクエア、オールマイティ・・・ボディカラーも、当初のライムグリーン、ブルーイッシュシルバー、ウォームホワイトの各ツートンとベルベットブルー、クランベリーレッドの5色から、ダークグリーン、スーパーブラック、スーパーレッド、パープリッシュシルバーツートン、イエロイッシュシルバーツートン、モノトーンのパールホワイト、シトラスイエローツートンまでの追加色。

優れたデザインのクルマは仕様やボディカラーを入れ替えるだけで魅力を保てる、そのことを証明した一例です。

花の命は結構長い

180SXをシルビアの仲間に入れても良いのであるなら、S13の寿命は実に長かった・・・。

ほぼ10年にも及ぶモデルライフを、しかもほぼユーザーから背かれることなくまっとうできたことは、やはり初期段階の企画が優れていたことと、それを維持し魅力を保全するための適切な手入れを怠らなかったという、近年まれに見る真摯な販売姿勢にあったからだと思います。

それはたしかに、S13から14にバトンタッチした際には少なからずブーイングが発生したこともありました。しかしそれ故にS13である180SXをやめるわけにはいかなくなってしまった。販売低迷をつぶさに感じ取り、S13を消滅させてはマズいという舵取りができた機敏さも少なからず効いているはずです。

90年代後半以降、日産はまた混迷期に突入します。合理化が推し進められ例えばこうした、S13のような過去に大きな支持を得られたようなクルマの代役に立つことのできるクルマを作りにくくなってしまいました。

企業は収益や利益といった会社としての社会的信用を重要視するあまり、時にユーザーの声を無きもののように扱うことがままあります。しかし、販売終了後10年以上が経過しているのに、未だにこれだけ人気を博しているクルマなのですから、メーカーとしてはその点をもっと汲み取ってもいいのではないか、そんなふうに思えるのですが、いかがでしょうか。

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