VWのMQBモジュールとは?

VW ゴルフ 2017

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どこの国に資本があっても、メーカーであれば良いクルマを安価に作ることを目指しています。昨今では、異なる車種間で共通の部品を使用することを前提として開発し、開発効率を上げる工夫がなされています。フォルクス ワーゲンのMQBも、そのひとつです。このMQBには、どんな効果があるのでしょうか?

文・吉川賢一
Chapter
MQBとは何か?
部品共用化は「高品質で安いクルマ」を生み出す
MQBの車は全く同じ性能か?

MQBとは何か?

MQBとは、ドイツ語でモジュールキットを意味する「Modulare Quer Baukasten」の頭文字をとったものです。英語にすると、「Modular Transverse Matrix(モジュラー トランスバース マトリックス)」といい、”車型を横断して共通部品を組み合わせる方法”という意味です。

数十年前、クルマは全長、全幅、エンジンサイズ(レイアウト)で、おおよそ分類されたプラットフォームと呼ばれるまとまりをベースに開発されていました。

ひとつの車種をベースとして、サイズの違うクルマを作るときには、ホイールベースを調節したり、サスペンションアームの長さを変えてトレッドを変更したり、その都度設計を変更して対応していましたが、デメリットもありました。

それは、それぞれの部品が車種ごとの専用設計になってしまうことで生じる、部品点数の増加とコスト高です。

部品共用化は「高品質で安いクルマ」を生み出す

そこで各社は、車種が変わっても流用ができる部品設計を行い、コストを下げ、さらにはある程度の部品をまとめた”モジュール”として搭載ができるよう、合理的な方向へと進んでいきました。

たとえば、エンジン・トランスミッション・エンジンマウントまでを1モジュールとして、複数車種のボディ側取り付け点の座標をそろえ、エンジン排気量が変わっても搭載できるようにしておく等の設計をします。当然、大きなエンジンを搭載できるようにレイアウト設計をおこない、小さな排気量のエンジンは無理なく確実に搭載できるようにします。

そこまでは量産車メーカーであればどこも行っていましたが、VWのMQBでは「セグメントの枠を超えて共通部品を増やし、生産コストと車両価格の抑制、主要技術の共有、そして最高水準の強度の確保を実現させること」を目的に開発されました。

MQBの車は全く同じ性能か?

MQBは、①自由度の高いデザイン・設計が可能であること、②クラストップレベルの居住性を実現できること、③上級モデルに搭載されている先進安全装備を搭載可能、といった特徴を持っており、「コストが高くても性能の良い最高水準のモジュールを、量販車種に搭載して台数効果を上げる(同じ部品の生産数を増やしてコストを下げる)」ことが、メリットとなります。

VWは、世界中で売れている主力車種のゴルフシリーズを筆頭に、Aセグメント(ポロのような小型車)からDセグメント(パサートのような大型車)までをMQBひとつでカバー出来るようにすることを目指しており、セダン、ハッチバック、SUVを問わず、VWの車種はもちろん、同グループのアウディやセアト、シュコダの各車両にも順次展開する計画なのです。

ということは、まったく同じモジュールを使った車はまったく同じ性能になりそうですが、そうではありません。

たとえばゴルフとアウディA3は、乗り心地などの味付け(スプリングやダンパー、交換可能なブッシュなどのチューニング)は、各々のメーカーで最終セッティングすることで、”味付け(車格)の違い”を出す工夫をしています。

この2車種は非常に高いポテンシャルをもち、片方はややオンロード寄りにセッティングしたアウディA3、かたや路面を問わずオールマイティに安定したゴルフといったように、棲み分けに成功しています。

なお、日本メーカーでもモジュール共有化は行われており、ルノーと日産が共同開発したCMF(Common Module Family)など、すでに導入しているメーカーもあります。

これまで異なるメーカーだったものが、設計を合わせていくのは、非常に困難を伴います。設計時のCAD図面の基準座標ひとつとっても、それぞれで異なったりすると、その修正だけでも数週間も掛かります。しかし、それによる台数効果は、計り知れない利益をもたらすことになるので、メーカーは積極的にモジュール化を進めているのです。

その一方で性能の良いパーツを使いたいのは、どのメーカーのエンジニアも同じですから、その費用を捻出するためにも、地道なモジュール共用化が必要。各メーカーのエンジニアの、腕の見せどころですね。

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