【諸星陽一の百”車”繚乱】ボルボ XC60 “金は出しても口は出さない”親会社のおかげで、クルマの質は上がった

ボルボ XC60

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スウェーデンの自動車メーカーであるボルボは、21世紀直前にフォード傘下に入った。その後、2010年にフォードはボルボの株を中国の吉利グループに売却したため、現在ボルボは中国自動車メーカー傘下ということになる。こう書くと中国メーカーのようなイメージが湧くかもしれないが、吉利はクルマの開発に関して、“金は出しても口は出さない”方針とのことで、吉利の資金が入ってからはクルマの質が上がってきている。
文・諸星陽一/Morohoshi Youichi
XC60はSPAと呼ばれる新しいプラットフォームを用いたモデルで、電動化を含むさまざまなパワーユニットの搭載を可能としている。

現在、日本で発売されているXC60は、254馬力の2リットルターボエンジンを積むT5、同エンジンにスーパーチャーチャージャーを追加し320馬力としたT6、さらにフロント34kW、リヤ35kWのモーターを組み合わせハイブリッドシステムとしたT8の3種が用意されている。また、2018年にはディーゼルエンジンの追加も予定されている。

試乗撮影したのはもっともベーシックなT5グレードだが、幸いなことにガソリン系2グレードと、ハイブリッドのT8はすべて試乗しているので、包括的に話を進めていこう。

XC60はSUVにカテゴライズされるクルマだ。SUVというと道なき道を走破できるようなヘビーデューティなクルマが想像されるが、現代のSUVは5ドア、もしくは3ドアのハッチバックスタイルで、車高が高めのクルマ程度の定義でしかない。

XC60はそうしたSUVのなかでもプレミアムクラスに属するモデル。

クルマ全体がかもし出す乗り味は高級感にあふれたものだ。クルマに乗り込むとまず目に付くのが、センターコンソールに縦型に配置された大型のモニター。ナビゲーションとしての性能は標準的だが、モニターの扱いやすさはなかなかのもの。

インパネ、フロアコンソール、シート、ステアリングなどのデザインはドイツ車のようにクルマ感のカタマリではなく、スカンジナビアデザインが生かされたリビング感にあふれたもの。T8に至ってはATセレクトレバーノブをオレフェス製のクリスタル(ガラス)製としている。

高速道路では車高の高さを感じさせない落ち着いた動きを披露してくれる。XC60のサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンクでよく動くタイプ。T8はエアサスを採用し、さらに乗り心地重視となっている。

エアサスというとフニャフニャ、ブヨブヨした動きを想像するかもしれないが、決してそんなことはなく、コーナーでの落ち着き感も十分に高い。スポーツセダンのように、ワインディングをガンガン走るタイプのクルマではないが、そこそこのペースで走ることは十分に可能な足まわりだ。

パワーユニットはもちろんT8のハイブリッドがもっとも力強いが、T5の2リットルターボでもそのトルク感は十分。

考えてもみてほしいT5でも254馬力ものパワーを実現しているのだから、十分さは想像できるだろう。T8の場合はハイブリッドなのでモーターのみでの走行も可能。自宅駐車場と隣家が接近していて、出発時に排ガスを出したくない……というような場合にこの機能はかなり有効的。

ACCはかなり性能が高い。しっかり追従するし、車線の認識も高く安心して任せられるタイプ。新しい機能として、車線変更時に後方からクルマが迫っていると、警報を発してドライバーに注意を促すだけでなく、車線を戻す機能が追加されている。

XC60はもっともリーズナブルなモデルが599万円で、T8となると884万円というプライス。ターゲットユーザーの世帯年収は1700万円以上を設定しているというだけあり、かなり上層をねらったクルマといえる。
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