なぜ6輪SUVがなかなか普及されないのか?

卓越した悪路走破性を持つ6輪駆動車

G63 AMG 6×6

2014年に販売されたG63 AMG 6×6は、いろいろな点で話題となりました。5台限定という少数生産、8,000万円という価格、そして戦闘車両のようなフォルム。どれを取ってもモンスター級でした。

実際にオフロードで試乗をしてみましたが、まるで戦車のように激しい悪路を難なく走ったことに、驚きを覚えました。同時に、オンロードでの快適性も持ち合わせており、さすが8,000万円のクルマだという印象を受けました。

ちなみに、このモデルのベースになったのは、メルセデス・ベンツのGクラス。Gクラスはかつては「ゲレンデヴァーゲン」という名前で、そもそもの素性は軍用車でした。オーストリアの軍用車メーカーであるシュタイア・プフ社とメルセデス・ベンツの共同開発で生まれました。

ヨーロッパに展開するNATO軍や各国の軍隊に制式採用されたことで、その評価が上がり、民生用としても使われるようになったのです。

Gクラスの6×6は、砂漠部が多いオーストラリア軍のために当初作られました。特殊部隊オーストラリアSAS用の装甲車両をはじめ、輸送用のトラックなどのボディバリエーションがあります。

民生用に生まれ変わったオフロードモンスター

このオーストラリア軍の6輪駆動車の技術を使って、AMGが造ったのが前述のG63 AMG 6×6なのです。見た目は軍用車チックですが、その中身は非常にゴージャスです。

AMGらしい高級感のあるインテリアもさることながら、乗用車では初の空気圧調整機構や悪路走破性を高める5つのディファレンシャルギア、ラリー車用に開発されたダンパー、防弾車と同じコイルスプリングなど、ゴージャスなパーツを惜しみなく使っているのです。裕福な中東の王族を意識して造ったという噂もありますが、SUVとしては世界最強と言っても過言ではないでしょう。

6輪駆動車のメリットは、くどいようですが優れた悪路走破性に他なりません。砂漠や岩のようなシチュエーションでも、より多くのタイヤで地面を捉えてトラクションを得て、駆動力を伝えることで前に進めるという理屈です。さらにクルマの故障が生死に関わる砂漠では、1輪がダメになっても生還できることが重要になってきます。

さらに悪路走破性だけを考慮するのであれば、戦車のような無限軌道を持った車両が圧倒的に有利ですが、舗装路を高速で移動することも考えれば、6輪駆動車はオンロード・オフロードのバランスがいいわけです。

当然ながら、こうした性能を確保するには、前述のような様々なメカニズムが必要であり、そのコストは大きくなります。結果的に販売価格も8,000万円という、大変高いものになってしまうわけです。ここが一般に普及するにあたり、大きなネックになります。

軍用や防災用で使われても民生用には向かない

2017年の東京モーターショーにおいて、いすゞブースでひときわ人目を惹くトラックが展示されました。それが「ISUZU 6×6」というトラックです。このトラックは、災害時の救援活動を想定したコンセプトカーですが、そもそもいすゞは自衛隊に6輪駆動のトラックを納入しており、その技術を民生用に転換することを考えたわけです。

つまり、G63 AMG 6×6の原型が軍用車であったことと同じ関係なわけです。一般の自動車社会において、6輪駆動で生まれる走破性が必要なシーンは、まずありません。道がないことが想定される戦場や被災地以外に、6輪駆動車が必要とされるシチュエーションはまずないのです。

また6輪駆動車はその構造上、非常にコストがかかり、高価になってしまいます。防衛を目的とした軍用車や、非常時を想定した官公庁用の車両なら予算もあるでしょうが、個人が購入し、維持するには難しいのが現実です。軍隊や官公庁なら維持整備にも十分な予算を持っています。

2017年11月に開催されたドバイモーターショーでは、デヴェル・モーターズ社が「デヴェル シックスティ」という6輪駆動車を発表しました。最高速度はなんと500km/hということですが、あくまでもメーカー発表値。価格は約5,000万円とのことです。

また2016年にはオーストラリアのマルチドライブ・テクノロジー社と、ドバイの自動車用品会社NSVが共同で、ランドクルーザー70系の6輪駆動車を開発して話題を呼びました。

共通しているのは、すべて砂漠や道のない場所で使われるために生まれたということ。今日のように、道路インフラが整備された自動車社会では、高価で維持が大変な6輪駆動は活躍の場が少ないのかもしれません。

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