新型NSXにも採用されたドライサンプとは?ウェットサンプとなにが違う?

NSX エンジン

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デリバリー開始から約半年、まだまだ目にする機会の少ない新型NSXですが、その特色のひとつがエンジンにドライサンプを採用していることです。通常の量産車ではあまり採用されず、初代NSXでも採用されなかったドライサンプとは、どんな機構なのでしょうか?また、一般量産車のウェットサンプとなにが違うのでしょうか?
Chapter
一般量産車のオイル循環方式「ウェットサンプ」
特殊なクルマで採用される「ドライサンプ」
一般量産車でドライサンプを使う例

一般量産車のオイル循環方式「ウェットサンプ」

エンジン内部を流れ、潤滑や冷却、防錆などの役割を担っているエンジンオイル。このエンジンオイルを循環させる方式として、一般量産車のほとんどに使われているのがウェットサンプです。

オイルをエンジン内部に送るためには、オイルパン内部のあるフィードポンプ(オイル供給ポンプ)で汲み上げて、各部に送ります。そのオイルは設けられた経路を流れ、重力でエンジン最下層のオイルパンに戻り、再びエンジン内部に送られます。

利点は、構造が単純で、部品点数が少なく、コストが安いこと。また、配管も含むすべてがエンジン内部に収まり、オイル漏れの要素を少なくできることにあります。コストが限られる一般量産車は、ほとんどウェットサンプなのはこれが理由です。

一方、重力に多くを頼る事から、レーシングカーのように横Gが激しいクルマでは、オイルパン内部でオイルの偏りを起こしやすく、オイル供給不足で故障の原因になる欠点があります。

さらに、冷却のためエンジンオイルの量を増やせば、オイルパンが大きくなりエンジンの高さが増し、重心位置が上がってしまうのも難点です。

特殊なクルマで採用される「ドライサンプ」

前述のウェットサンプ方式は、重力頼みでエンジン内部を流れているので、走行中に発生する縦横のGによってコンディションが安定しないというデメリットがあります。そのデメリットを克服する方式が、ドライサンプです。

オイルパンのオイルを強制的にスカベンジポンプ(回収ポンプ)で吸引、別に設けられた大きなリザーバタンクに回収、そこからフィードポンプでエンジンに供給します。

この方式の良いところは、オイル供給が安定することや、リザーバタンク配管の途中にオイルクーラーを増設することが容易。スカベンジポンプによる吸引でエンジン内部が負圧になるため、クランクケース内のオイル攪拌抵抗が軽減される効果もあります。

なにより、オイルパン容量を小さくすることでエンジン取り付け位置が下がり、重心も低くできることがメリット。レーシングカーやそれに準じた性能が求められる超高級スーパーカーやチューニングカーではよく使われる方式です。

しかし、スーパーカーでも量産モデルは信頼性の問題から普通のオイルパンを使ったり、近年では重力によるオイル回収とスカベンジポンプよる吸引回収を併用するセミドライサンプを使うモデルも見受けられます。

一般量産車でドライサンプを使う例

一般量産車でもドライサンプ式を使う例はありました。エンジンの冷却が厳しく、オイル循環の重要性がより高い空冷エンジンです。

空冷時代のポルシェ911やVW タイプ1(ビートル)のような、リアエンジン方式の空冷水平対向エンジンなど、フロントから入る風もエンジンルームの広さも限られるうえに空冷ですから、ドライサンプが採用されたのは言うまでもありません。

国産車でも同様の例があり、強制空冷ハイパワーエンジンを搭載したものの、凝ったエンジンの採用でフロントヘビーがひどかった失敗作、ホンダ 1300などが有名ですね。

新型NSXのドライサンプ採用は、ホンダの市販車として2例目ですが、ある意味ホンダ 1300のリベンジ?ということにもなります。また、意外なところでは空冷水平対抗2気筒エンジンを床下に搭載していた、コニー360などもドライサンプでした。

結局ドライサンプは、一般量産車用のメカとしては必要性に迫られない限り、不要なメカニズムです。それでも採用するのは必要に迫られるほどの高性能車か、それ無しには成り立たない、最初からどこか無理のあるクルマくらいだということですね。

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