アルミ素材はもう古い?いまは超高張力鋼や繊維の時代?

市販車への採用でインパクトのあった「オールアルミ」

アウディ A8(初代)

1990年代あたりまで、市販車のモノコック用軽量素材としてもっとも注目を集めたのがアルミ合金です。

既にレースの世界、F1やCARTなど最先端フォーミュラカーでは炭素繊維を用いた高剛性軽量素材、カーボン・コンポジットが使われていましたが、とてつもなく高価ゆえにそうそう市販車に応用できません。

そこで、比較的現実的な価格を実現するための市販車用素材として使われたのがアルミニウム合金でした。

ジュラルミンなど航空機用として長い歴史があるアルミなどの軽合金は、高価とはいえ加工技術も確立していたため、自動車のモノコックボディで鋼材の代わりに使うのにも、それなりに都合が良かったのです。

そのため、90年代にはホンダから初代NSXや初代インサイト、アウディ A8のように「アルミボディ」を売りにしたクルマが登場したのでした。

市販車への仕様が広がるカーボン

BMW 7シリーズ

2000年代に入ると、新世代の軽量素材として炭素繊維を使ったカーボンが市販車にも使われるようになり、主にスーパーカーなどで多用されるようになりました。日本車でもレクサス LFAがカーボンモノコックを採用しています。

それをさらに量産車でも多用しているのがBMWで、現行7シリーズから採用した「カーボンコア」ではボディ主要部の一部をカーボン素材に置き換えて従来の比では無い軽量化を達成、さらに2017年デビュー予定の同社ミドルクラスサルーン、5シリーズにも採用します。

BMWの「カーボンコア」は新技術により従来のカーボンより自由度の高い整形を可能にした事が特徴です。

さらに大量生産のバックボーンには日本企業も深く関わっており、BMWにカーボン部品の量産を可能にするため東レのメキシコ工場や、原材料を生産する三菱レイヨン広島工場などがフル稼働しています。

新素材の問題は「修理」

溶接

しかし、アルミにしろカーボンにせよ、問題になるのは修理です。

溶接機でボディの穴を塞げる整備工場やチューニングショップでも、ボディ素材が鋼材、つまり「鉄」だからこその話であり、アルミ材を溶接できる機材や技術を持っているところは、そう多くはありません。

カーボンに至っては、カーボン製重要部品の修理技術を持っている、と言えるところなどほとんど無いような状況で、例えばBMWのカーボンコアは、日本で1箇所しか認定修理工場がありません。

それがBMW東京の木場サービスセンター(東京都江東区)で、2016年4月にオープンしたばかり。

最近のクルマは修理するより部品交換を、交換するなら買い替えをという傾向が年々強まっていますが、修理できない物を売るというのはメーカーとして好ましい話ではありません。

また、裾野となる産業として中小の整備・修理を生業としているショップや整備工場でもある程度面倒を見られる素材となると、「やっぱり鉄が一番」となるわけです。

ハイテン、超ハイテンによる「鉄」の巻き返し!

ホンダ 工場

そのような事情もあって、今でも自動車のモノコックやボディは主に鋼材で作られていますし、アウディ A8やホンダ NSXも新型はオールアルミボディではなく、アルミと鉄、カーボンを組み合わせたハイブリッド構造となっており、それが今の主流です。

鉄も強度に優れた「ハイテン」(高張力鋼)、より優れた「超ハイテン」(超高張力鋼)の使用が増えています。

これらは昔からの鋼材に比べて強度が優れている分だけ薄く軽く作る事ができるため、鉄の手軽さを持ちながら新素材に近い軽さと剛性を確保できるようになっています。

年を追うごとにより強い素材をより安く作れるよう、鉄鋼メーカー各社の努力もあって、高価な素材を使わなくとも軽いクルマを安く作れているのですね。

このように、「この素材が優れているから、全部これで作ろう!」という風にはなかなかなりません。

素材メーカーの努力もあって、今のクルマは鉄、アルミ、ステンレス、カーボン、樹脂とさまざまな素材を文字通り「適材適所」に使っています。

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