レシプロエンジンとロータリーエンジン…それぞれのメリット•デメリットは?

軽量コンパクトでハイパワー「だった」ロータリーは構造が簡単

1957年にドイツ(当時は西ドイツ)のヴァンケル博士がNSU(現在のアウディ)でヴァンケルエンジン、すなわちロータリーエンジンの開発に成功した時には、それはもう夢のようなエンジンでした。

シリンダー内をピストンが往復運動する力を回転運動に置き換える機構が必要なピストンエンジンこと「レシプロエンジン」に比べ、最初から回転運動をしているので、そのまま駆動系に接続できるロータリーエンジンは単純明快。

レシプロエンジンで必要な、吸気•排気を行うバルブなど動弁機構もローターの回転で吸気•排気を全て済ますため、複雑な機構は不要です。しかも圧縮•燃焼•膨張•排気に出力軸の2回転が必要なレシプロエンジンに対し、それを1回転で済ますロータリーエンジンは、同じ燃焼室容積であればレシプロエンジンの2倍の排気量を持つ事に相当するとされました。

しかも、アメリカで非常に厳しい排ガス基準「マスキー法」が始まろうとした時、特に新奇な機構を用いなくても、元々NoX(窒素酸化物)が少なかった事で、HC(炭化水素)をサーマルリアクターで再燃焼させるだけでクリアできたのです。

ガソリン以外の代替燃料や軽油、その他粗悪な燃料でも駆動可能で、構造上燃焼が吸気側へ吹き戻るバックファイアーを起こしにくい事から気体燃料も容易に使用可能なことなど、エネルギー問題の解決すら見込まれており、実際に現在でもマツダによって水素ロータリーエンジンに関する特許取得が進んでいます。

このように軽量コンパクトで構造は単純、小排気量なのに倍の排気量を持つレシプロエンジンと同等の出力を発揮し、モーターのごとく回転がスムーズに吹け上がり、機械的な振動や騒音も少ないロータリーエンジンは、スポーツカーや高級車用のエンジンに最適と言われたのです。

実際にはデメリットが多かったロータリーエンジン

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いい事づくめのように思えたロータリーエンジンでしたが、開発に成功したとはいえ耐久性に乏しく、マツダが実用化に成功するまでは、とても量産車に積めないエンジンでした。

しかし、ロータリーエンジン自体の持つデメリットがあまりにも大きかったため、結局ほとんどのメーカーが実用化に踏み切らなかったという事情があります。まず、エンジンとしてはエネルギー効率(熱効率)がが非常に悪く、低回転でのトルクが非常に低くなる上に回転ムラによる振動や不安定なアイドリングという問題がありました。

それを解決するために重いフライホイールやカウンターウェイトによる回転の安定化が必要だったこと、出力を引き出すための高回転化による燃費の悪化、およびオイルや冷却水が高温になるのをカバーするためにレシプロエンジンより大きく重い冷却系を必要としたこと。また、ハウジングに奪われる熱が多いため熱効率が悪化する上に、レシプロエンジンで多用されるアルミブロックなど軽量素材への転換が難しかったことが挙げられます。

そうした補機類の重量やエンジン本体を軽量化できない事での重量増加をパワーで稼ごうとターボ化すれば、さらに燃費は悪化する悪循環に陥り、市販車でもユーノス コスモ(20B)のように実用燃費がリッター2kmまで悪化しました。

これでレシプロエンジンよりパワーがあれば良かったのですが、軽量大出力、高効率化が進んだのはむしろレシプロエンジンの方で、結果的にロータリーエンジンは「燃費が悪くて回転がスムーズなだけなエンジン」となってしまったのです。

燃料を選ばないという特徴も熱効率の悪さから高出力が必要な主動力向けではなく、現在もっとも期待されているのは、マツダやアウディが取り組む「レンジエクステンダーEVの発電用に振動無く低速回転する補助機関」としての役割です。

主動力としては開発余裕の無さが致命的となったロータリーエンジンですが、それでも独特のスムーズなエンジンフィーリングが好まれ、マツダには今でも新型ロータリースポーツのリリースが期待されています。

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