なぜトルクコンバータ式AT車は「滑る」と言われたのか?「ロックアップ機構」とは?

トルクコンバータ

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日本で登録されている乗用車のほとんどがAT車です。セミオートマチックやDCTなど、その種類も非常に増えています。

その中でも、最もクラッシックなトルクコンバータ式AT車に搭載されている、ロックアップ機構について解説します。
Chapter
トルクコンバータ式AT
トルクコンバータの原理
トルクコンバータのデメリット
そこで登場するのがロックアップ機構

トルクコンバータ式AT

トルクコンバータとは、エンジンが生み出す回転運動を、トランスミッションに伝える役割をする装置です。MT車やDCT車の場合、ここにはクラッチが装着されており、ギアチェンジの際に切り離し、接合させるというような動作が必要になります。

MT車で停止したり、ギアチェンジする際にクラッチを切る(離す)必要があるのは、車両の停止やギアチェンジによりエンストを起こす可能性があるからです。

トルクコンバータは、これらの操作を必要とすることなく、走行時には動力が伝達され、停止時には動力が伝達しない仕組みとして作られました。そのため、トルクコンバータ自体には、「切り離す」「つなぐ」という動作は基本的にありません。

トルクコンバータの原理

トルクコンバータの原理は、2台の扇風機を合い向かいにすることに似ています。2台の扇風機を向かい合うように置き、片方の扇風機の電源を入れます。そうすると、反対側の扇風機のファンも回転を始めます。

このとき、電源を入れた側をエンジン、電源を入れていない側をトランスミッションと見立てることができるのです。トルクコンバータは、扇風機と異なるのは、ミッションオイルによって動力伝達を行っていることです。また、トルクコンバータは閉鎖された空間になっており、エンジンの回転運動を、トルクコンバータがオイルを介してミッションに伝えます。

この二つの羽根の間にあるのはオイルのみ。車両を停止させた状態でエンジンが回転していても、オイルがかき混ぜられるだけなので、エンストする発生することもありません。ブレーキを離すと、トランスミッションも動けるようになりますので、再度駆動力が発生します。そのため、オートマチックの自動車では、アクセルを離すと少しずつ前に進む「クリープ現象」が存在します。

トルクコンバータのデメリット

20年近く前に、ハイパフォーマンススポーツカーにATは設定されない時代がありました。また、強大なトルクのトラックやバスなどにも、 ATは適さないとされていました。

これは、トルクコンバータの「流体を介して回転を伝達する」という構造上、仕方なく、入力側の力が強すぎると、トルコンが「滑る」という現象が発生し、十分にその力を伝えきれないためです。

間に直接、嚙合わせる機械的な部品を持たないトルクコンバータでは、その流体の粘度が力を伝達するための決め手となるため、一定の力以上のトルクやパワーは伝達できないのです。
オイルは温度が高くなると粘度が下がる性質がありますので、トルクコンバータだけでより大きい力を伝達するのは難しいこととなります。粘度の硬いオイルを投入すると、トランスミッション側にダメージを与えることになります。

そこで登場するのがロックアップ機構

ロックアップ機構は、本来流体で伝達しているトルクコンバータに、機械的にエンジン側とミッション側を結合させる機構を持たせたものです。MT車のクラッチとは構造が異なりますが、役割は同じようなものと言えます。

このロックアップ機構は非常に複雑にできており、低速ギアでは微妙に滑りを残しつつも適切にパワー伝達が行えるよう制御してくれます。電子制御が進歩したからこそ発展した機構とも言えます。全域ロックアップのATでは、MT車と同等のパワー伝達をも可能にした製品もあります。レクサスのハイパフォーマンスモデル、IS-F等でも採用されていこともあるのです。

近年、一部の大型バス、トラックなどでもATが設定され始めているのは、このロックアップ機構の進歩によるところも大きくあります。
ロックアップ機構は既存のATをより緻密に制御し、トルコンでのロスを減らして燃費向上やパフォーマンス向上に寄与するものです。AT車が登場した頃は、トルコンの滑りも激しかったため、AT車の燃費は悪い、停止状態からの発進がAT車は遅いなどと言われたことがありました。

最近は、そもそもMTが設定されない車も多くなっているので、比較が難しい車種もありますが、ロックアップ機構の進化によりATでも十分と言える状況になったとも考えられますね。
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