MPVやプレマシー等…なぜマツダはミニバン事業から撤退するのか?

モデルチェンジがなく心配していた

好調のマツダですが、ファミリーカーとして必須になったミニバン分野ではいまいちピンときません。日本市場でのミニバンは圧倒的にトヨタが強く、サイズもカテゴリーもしっかりラインナップし、エスティマやアイシスは10年選手にもかかわらず、モデルチェンジを必要としないほど売れに売れています。

マツダの現行のラインナップはMPV、ビアンテ、プレマシーですがどれもモデル末期を迎えているのにも関わらず、モデルチェンジの噂話はあまり出てきませんでした。そこに、今回のミニバン事業からの撤退のニュースです。マツダファンや車好きの方で、残念に思われた方も多かったのではないでしょうか。

ここからは、そんなマツダの「ミニバン三銃士」 を振り返ってみます。

初代MPV登場 1990年(日本)

マツダは日本市場においてミニバンのパイオニアでした。 1990年に日本市場に登場に投入された初代MPVは、当時まだミニバンという言葉が浸透していなかった日本にアメリカンスタイルのミニバンを投入した最初の一台と言えるでしょう。

当時7人乗りミニバンクラスでは乗用車的なドライビングポジションが得られ、走りの質もスポーティに煮詰めていました。そうでなければ、本場アメリカ市場で受け入れられないでしょう。

しかし、初代MPVは、評論家にこそ絶賛されたものの、一般のユーザーにはその魅力が伝わらなかったようです。1990年代初頭はRVブーム真っ盛りでした。シートが回転したり、アクセサリーが豊富であったりとアイディアが勝った時代。成る程 、”本場仕込み”で真っ当に作ったはいいが、日本ではそれがいささか地味に見えてしまったのかもしれません。

初代の課題を克服してみせた二代目 1999年 

ミニバンブームの立役者となったのはホンダ・オデッセイで、そのスマッシュヒットを見て各メーカーは続々とフォロワーを登場させました。マツダも初代MPVの反省から二代目MPVを投入。マツダのミニバンといえばこれを思い浮かべる人は多いでしょう。

二代目の特徴は、FF化されたことで室内が広くなり、後に出てくるミニバンに影響を与えたシートアレンジは凝りに凝ったもので「KARAKURI」シートと名付けられました。3列目シートへのアクセスや荷室のスペースに寄与したのです。

マイナーチェンジでは2.3リッター直4の新エンジンを搭載。往来のフォード製2.5リッターV6は3リッターにアップ。5段ATも採用、ブレーキも大型化するなど二代目はスポーティ路線はそのままに、アイディアをたくさん詰め込み、改良を重ねていくことで鮮度を保っていたモデルに思います。

スポーティ路線を具現化した三代目 2006年

一回り大きくなったボディは全高が10センチも低められ、低床化を実現。ミニバンとしては異例に低いステーションワゴンのフォルムを持ち、内容もリアサスにマルチリンクを採用しました。

エンジンは2.3リッターに直噴ターボの組み合わせでパワーアップ、ミッションは6段ATとなり、ブレーキも17インチを採用するなど、何かに吹っ切れたようにスポーティ路線を具現化したモデルと言えるでしょう。

お得意の「KARAKURI」シートの2列目は、オットマンや座面角度調整、ヘッドレストをスイングできる「スーパーリラックスシート」などがマツダのこだわったポイント。110mmも延長されたホイールベースは居住性、積載性とミニバンとしての機能もアップしていました。

5ナンバー7シートも用意 初代プレマシー 1999年

初代 プレマシー

初代プレマシー 1999年

ウィッシュ、ストリームと5ナンバーサイズ7人乗りミニバンが台頭してきた時期であり、マツダもMPVやボンゴフレンディと併せてミニバンラインナップを形成します。今となっては特徴らしい特徴は見当たりませんが、多彩なシートアレンジ、セダン的な使いやすさを売りにしていました。

敢えてスライドドアを採用 二代目プレマシー 2005年 

プレマシー

アテンザ以降の新世代商品群の初ミニバンとして、ボディサイズを拡大して登場。基本6人乗りとしながらも、いざという時には2列目助手席側シートに隠れた7人目のシートが現れる「6+oneパッケージ」を採用。さらに右側には収納ボックスも現れる格好とし、乗車人数に合わせて、空間を有効に使おうという手法がとられました。


成熟した走り、「Nagare流」デザインがウリ 三代目プレマシー 2010年 

マツダ プレマシー

三代目は基本的に先代のキャリーオーバーで、当時のデザインテーマである「Nagare流」デザインを与えられました。スペース効率を追求するミニバンに動きのあるアグレッシブなデザインは、やりすぎ感があったようにも思われます。

この三代目の注目すべき点は、後期にスカイアクティブ化されたことです。CX-5やアテンザで好評の「SKYACTIV-G2.0」エンジンに6ATの組み合わせでアンチエイジングを果たしました。マツダがロードスターのようにドライブフィールにこだわって作られており、走りの質においては相当いいところにあったのです。

ようやく背高ミニバン投入 ビアンテ登場 2008年

プレマシーやMPVが思うように売れず、ノア・ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンのような2リッタークラストールワゴンの市場にビアンテを投入しました。特にノア・ヴォクシーは月1万台以上は売り上げる強者でした。

ビアンテの車体はプレマシーをベースにしており、敢えて走りの良さを謳わなくてもしっかりしており、お得意のシートアレンジ、ドライビングポジションも乗用車的でそれなりに作られていた極めて無難なミニバンだったと言えるでしょう。外観デザインは当時のデザインテーマを汲む「Nagare流」を採用しておりました。

2013年にはプレマシーと同じ「SKYACTIV-G2.0」エンジンに6ATが搭載され燃費を克服して見せましたが、トールミニバン3強を崩すには至りませんでした。ビアンテは細かなところは3強に比べて経験不足もあり、完成度もイマイチ。ビアンテでなければならない理由は乏しかったと言えるでしょう。

新型が出ず、憶測もいろいろ出た

CX-9

実際の販売の現場では、顧客の買い替えに応えるための新型が投入されないのは困ったものです。そこでキャロルやフレア・クロスーバーのように他メーカーからOEM供給を受けて補填車群の中に入るのでは、という展開が噂されました。

その候補車としては日産セレナ。これまでプレマシーを日産へラフェスタとして供給していたのに対して「ラフェスタのお返し」になったのかもしれません。今のところ7人乗り乗用車を補完するのは、北米のCX-9をベースにしたなんらかの車種が投入されるのでは、と噂されます。

直球勝負ゆえに出た顛末

マツダのミニバン三台に共通するのはずっとスポーティ路線を貫いてきたところです。偉いなと思うのはマツダらしいクルマをするところが身上。単にスペックやエアロパーツなどの見せかけだけで武装せず、運転して楽しいとか、気持ちが良いなど、走りの質を追求した車体セッティングをしているところです。

これは平均速度が低く、移動距離も短い日本のミニバン層に訴求するには伝わりにくかったと言えます。では装備やパッケージング、デザインはどうだったかといえば、特別に他社に遅れていたわけでもなかったわけです。

商品性は過不足なかったのにシェアを取れなかった要因として、販路がトヨタ・日産・ホンダに比べても圧倒的に少なかった部分にあると思われます。

勇気ある撤退

マツダにとってはシェアを取ろうと躍起になり、何とか値引きに値引きをして台数を稼げば収益も少なく、結果的に値崩れになってしまい、市場価値が下がります。顧客も下取り価格が下がれば、また値引きしてくれるマツダ車を買うか、そのまま乗り続けるといった「マツダ地獄」なる言葉が横行したものです。

マツダ自身、これを公に認めており、キャッシュフローを見直し、新世代商品群からマツダディーラーへ訪れる客層が変化したことから、マツダ製ミニバンの役割は終えたと判断したようです。それでもマツダのディーラーでミニバンがほしい、というニーズに現実問題、セレナでも補えたことでしょうが、マツダはそれをしなかったのです。これは英断ではないでしょうか。

それはSUVを柱にして、ロードスターやロータリーエンジンを金字塔にしていくというマツダの決意の固さが伝わります。自動車メーカーの生き残りをかけ、独自の強みをストレッチさせ、大手メーカーの追随はもうしない、という意思表示が見えました。そんなマツダには期待したいです。

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