シルビア・プリメーラに搭載された"SRエンジン"が現在でも愛される理由とは

90年代を彩る名エンジン達の短くて熱い夏

エンジン

1990年代という時代は、4気筒DOHC2000ccクラスのスポーツエンジンにとって、まさに黄金時代でした。

排ガス規制をクリアした上での動力性能の向上、高度な電子制御化やターボ化、可変バルブタイミング&リフトといった最新技術が注ぎ込まれ、1970年代末期から1980年代にかけてその原型が作られたエンジンにとっては、まさに開花の時期。

2000年代に入って環境を考慮した規制が激しくなり、旧時代のスポーツエンジンは新世代へ、あるいは完全に息の根を止められるまでのほんの10年少しという時間は、旧時代のスポーツエンジンにとってまさに「短い夏」だったのです。

トヨタの3S-G、三菱の4G63、スバルのEJ20といった「戦友」の中、現在でもほぼ別物となりながら名前だけでも生き残っているのはEJ20くらいとなってしまいました。

しかし、まずはFF/4WDのU12ブルーバードやP10プリメーラ用としてデビューした日産のSR型エンジンは、今でも多くのユーザーに愛され、現役で走り続けています。

新世代「SR」、当初のつまづき

それまでの日産小型車用ツインカムエンジン「CA」の後継エンジンで、1989年にはU!2ブルーバード、1990年にはN14パルサーおよびP10プリメーラ用の横置きエンジンとして登場した「SR」。1991年にはS13シルビアおよびRPS13 180SXのマイナーチェンジで縦置き用エンジンとしてもデビューしました。

1600ccDOHC4気筒の「SR16VE」から2000ccDOHC4気筒ターボの「SR20DET」「SR20VET」まで数種類が存在したSRエンジンは、その当初「アルミブロックエンジンの耐久性は鋳鉄ブロックに劣る」とされ、積極的なチューニング対象とはなっていませんでした。

実際、U12ブルーバードSSS-Rの後継として、230馬力のSR20DETを搭載した期待のラリーベース車、パルサーGTi-R(RNN14)は、久々の日産WRC復帰を飾る大々的な宣伝とは裏腹に、車体とエンジンのミスマッチによるトラクション不足や冷却不足に悩まされています。

チューニングベースとしての発展

しかし、年月を経るにつれて高度なチューニングに耐える事が実証されてくると、様々なチューニングカーに応用され、またはメーカーチューンドエンジンとしても発展型が送り出されるようになりました。

チューニングエンジンの老舗、東名パワードがSR22DETへのボアアップなど数々のチューニングメニューを繰り出したのを筆頭に、国内外のチューナーが次々とSRベースのチューンドエンジンを生み出します。

その中には、6気筒DOHCツインターボの化物エンジン「RB26」を搭載したGT-Rを筆頭に、6気筒エンジン車のイメージが強いR32スカイラインの最下級グレード「GXi」が4気筒SOHCのCA18iを搭載していたのを利用し、同じく4気筒のSR20DETをフルチューンしてスワップした軽量ハイパワーのドラッグレース仕様も存在したほどです。

日産直系チューナーとも言えるオーテックジャパンも、NAモデルのSR20DEに圧縮比アップなど改良をほどこしたチューンドSR搭載のN15パルサーやS15シルビアのオーテックバージョンを送り出しています。

数多くのメーカーチューンド

同時期にライバル、トヨタ3S-Gが改良を重ねていた事もあり、日産純正のSRも次々にメーカーチューンドモデルが送り出されます。可変バルブタイミング機構「NVCS」搭載に続き、可変バルタイ&リフト機構「NEO VVL」に進化したヘッドをも搭載されました。

中でもN1レースへの参戦を視野に入れた特別なモデル「パルサーVZ-R N1」(N15)用のSR16VEはホンダ・EK9シビックタイプR用B16Bの185馬力すら上回る200馬力に達し、NAテンロクスポーツエンジンの最高峰に立った事で、歴史にその名を残しています。

最終的にはクロスオーバーSUV「X-TRAIL GT」用のSR20VETが280馬力に達したのが純正SRエンジンの到達点で、同時代のエンジンのほとんどが排ガス規制で消えていくのと時を同じくしてSRも2007年のX-TRAILモデルチェンジを最後に姿を消したのです。

現在でもSRが愛される理由

実際には2002年のS15シルビアの生産中止と、P12プリメーラのマイナーチェンジでSRは事実上その役割を終えていたと言えます。

しかし、それから10年以上たった現在でも、特に縦置きのSR20DETを搭載したS13~S15シルビアや、RPS13 180SXは街乗りからサーキット走行、ドリフトなどまで、世界中のドライバーにより現役エンジンとして活躍しています。

ラリー用として特殊な需要のあった三菱4G63やスバルEJ20と違い、トヨタ3S-Gが比較的早く一般ユーザー向けの第一線から姿を消したのとは対照的ですが、その違いはどこにあったのでしょう。

その答えは「ユーザーが求める時、求めた車に、求めたエンジンがそこに載っていた。それが日産SR」という事では無いでしょうか?思えば、GT選手権などのレースでそれを搭載したスープラなどを除き、トヨタには3S-Gを搭載したFRスポーツクーペなどありませんでした。

もちろんFRばかりが車ではありませんが、当時のトヨタがユーザーの選択肢を大きく狭めてしまっていたのは事実です。

日産自身、販売台数増加が見込めないジャンルとしてシルビアを廃止してしまったものの、若者が手を出しやすいスポーツカーを求めた時、いつの時代でも「日産SRはそこにあった」。それが一番の理由でしょう。

現在でも特にNVCSの恩恵でトルクフル、かつ扱いやすい中期以降のSR20DETを搭載したS14シルビアは人気で、これからもしばらくは若者向けエントリー・スポーツカーと、そのエンジンとしての活躍はまだまだ続きそうです。

関連キーワード

この記事をシェアする

関連する記事

最新記事