「スパルタンなリアルスポーツ」と呼ばれたNSX…スパルタンなクルマとはどんな車なのか?

速く走るため全てを捨て去る

super seven(camera:SuperCar-RoadTrip.fr)

「スパルタン」の定義の一つとして、「快適装備が一切無いこと」があります。エアコンやパワーウィンドーなどの快適装備は一切無し、パワステ等の運転補助装置も一切無し、とにかくエンジンがついてタイヤで走り、曲がり、止まり、公道を走るための法的基準をクリアするための最低限の装備を除けば、何も無い。

そんな車は間違いなく「スパルタン」と呼ばれる資格があります。大抵の場合はその資質を備えた上で、サーキットであれ公道であれ、速く走れる事が第一であり、公道でのドライブが快適な事がありえない車が「スパルタン・スポーツ」と呼ばれる事が多いのです。

例えば、ロータスが作り、後にケータハムに製造権が移ったリアルスポーツ「スーパーセブン」と、それを模したようなレイアウトを持つ「ニアセブン」(国産車では光岡ゼロワンや鈴商スパッセなど)というカテゴリーの車たちがそれに該当します。

これらはスポーツカーというより「公道を走るレーシングカー」に限りなく近く、ドアは無し、フロントウインドゥは後付け、モデルによってはヒーターすら無いような車です。

唯一運転補助装置と呼べるのは、ホールド製の高いバケットシートやシートベルト、握やすいステアリングなどですが、これらが無いと激しい加速Gや横Gの中で運転どころか座り続ける事さえも困難だからついているようなものです。

ここまでくれば、車そのものが「スパルタン」を凝縮して固めたようなものであると言えます。

スパルタンでもあるけど、なりきれない車

一方、元々はスーパーセブンほどスパルタンでは無いものの、走りに徹して一般公道での快適性を犠牲にしたような車もあります。

NSX-Rや、ホンダのユーロ仕様以外のタイプRのベースモデルはこれに該当します。痛快に吹け上がるVTECエンジンや公道を走行するには少々硬すぎる足回りなどはまさに走り最優先と言えるものの、ドライバーの所有欲を満たすようなバケットシートやチタン製シフトノブなどがついているあたりは、少々過剰な装備で、どうもブランドイメージのために「スパルタンっぽく」演出している節があるのではないでしょうか。

トヨタがモーターショーで提案した「S-FR」もオートサロンでは高価なレーシング仕様の提案をするとのこと。最終的にはスパルタン寄りで安価なスポーツカーとしてリリースできるのかどうか、少し心配です。

競技やレースのための「スパルタン」ベースモデル

競技やレースに出場するためのベース車両として、軽量化、あるいは最初から全てを交換する事を前提に、簡素な装備しかなされていないモデルもあります。

そのあたりを徹底した上で車両価格も激安に抑えていたベースモデルと言えば、三菱のCJミラージュRS/ミラージュアスティRSや、ダイハツのミラX2/ミラX4/ストーリアX4、スズキのアルトワークスRなどが存在します。

これらはラリーやダートトライアル、ジムカーナといった競技に出場するため、規則で交換が許されない部分(エンジンやブレーキ、ミッション、ボディなど)は限りなく強化やチューニングを行いつつ、後から交換可能な部分については徹底的に簡素化されていたという意味で、まさに「スパルタン」な車でした。

その結果として車両価格は100~160万円程度に抑えられ、競技に出場しないようなドライバーでも最低限の構成で購入し、後からコツコツ仕上げていくような楽しみ方ができたのです。

もう少し後の時代になると、「簡素な装備」というものがメーカーの生産ラインに存在しなくなりました。ベースモデルのために作り分けるとかえってコストがかかるという理由で、そこまで簡素でスパルタン、かつ安価なベースモデルという車は見られなくなったのです。

スパルタンなのは速さだけにあらず

suzuki jimny(camera:Atilio Leandro)

速さとは別のベクトルで「スパルタン」を表現する場合もあります。速さよりも、ひたすらどこまでも走っていくための車…。スズキのジムニーのような車も、ある意味ではスパルタンな車だと言えます。

現在のジムニーは快適装備も普通についていますが、これをオフロード走行のためだけに使おうという場合には、どこまでも走っていけるために、あるいはどこかで失敗して崖から落ちても大丈夫なように、壊れて困るようなものは取り外したり、強化してしまいます。

国によっては軍用車両としても使われるジムニーは、かつての三菱ジープなどと並んでスパルタンな車と考えても良いでしょう。

仕事の道はスパルタンに通ず

最近は「JPSC」(全日本プロボックス・サクシード選手権)というレースも開催されているくらいで、実はライトバンほどスパルタンな車もそうそうありません。乗用車との共通化で快適装備も普通につくようになってきていますが、一昔前までのライトバンと言えば、唯一の快適装備はAMラジオでエアコンもパワステもパワーウィンドーも無くシートは簡素で汗がベタつくビニールシート。

それでいてカローラバンなどはスターレット譲りでやや実用トルク向けに振ったハイメカツインカムエンジンを積んでいましたし、ルーフが長い事からダウンフォースも稼げて高速安定性は良好、質実剛健なボディと、多少の過積載にも負けない固められた足回りで振り回しても面白く、走りに徹した場合はまさにスパルタンなスポーツカーのようだったのです。

もちろん、本来は「仕事に関係無い装備は不要」というコンセプトではありますが、結果的に「走りに関係無い装備は不要」に通じるものがあったのでした。

スパルタンと快適さの両立は可能か

このようなスパルタンな車を日常仕様で快適に使う事が可能かと言えば、ドライバーに限って言えば「可能」です。もちろん、スーパーセブンのように車そのものがスパルタンでしかありようの無い場合を除けば、日常仕様のために、いろいろと快適装備をつけ、次第にスパルタン色を薄めていく事も可能ではあります。

ただ、同乗者の事を一切考えなければ、単純に「慣れ」の問題で、フルバケットシートで昼寝もできます。真夏にエアコンが無くともウチワとコカコーラのペットボトルの一つでもあれば、後は窓を開けられればそれなりに快適で、場合によっては真夏でもエンジンの水温が上がってヒーター全開な事もあるので、外の風ほど心地よいものはありません。

スパルタンな車に乗っていると、人間としての感覚もいつしかスパルタンになっていきますが、できれば同乗者を載せるための車は別に持っていた方が良いでしょう…。

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