オーバーステアとアンダーステアとはどういう意味?駆動方式ごとの特徴は?

ジムカーナ(ちょっとアンダー)

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「肝心なところでねー。アンダーが出ちゃってねー!しかたないねー!」昔の日本人F1ドライバーでレース終了後の口癖として定番化してしまった方もいました。「アンダーステア」や、その対義語で「オーバーステア」という言葉を使う人は多いと思いますが、実際のところどのような意味があるのでしょうか。
Chapter
「アンダーが出た!」
アンダー/オーバーFF編
アンダー/オーバーFR・MR編
アンダー/オーバー4WD編
実は現代だと電子制御でいかようにも

「アンダーが出た!」

わかりやすく言えば、「アンダーステア」とはステアリングを切った時に、ドライバーが意図したより曲がらない時によく言われる事です。多くはドライバーがイメージしたコーナリングより曲がらなかった、というだけの話ですから、必ずしも異常な状態ではありません。

市販車の多くは直進安定性を重視させるためアンダーステア傾向のセッティングを行っており、メーカーによって、また車によっては性格の異なるセッティングを行う傾向もあり、
「あのメーカー(大抵はトヨタ)はアンダー傾向で無難な作りをしている。」「この車(マツダ車が多い気がします)はコントロール性を重視して、あまりアンダーにしない。」などと、ユーザーレビューの定番と化しているところがあります。

そのセッティングは主にサスペンションはスタビライザーなど足回りと、タイヤのグリップ力がメインです。これにボディ剛性や車全体での重量配分、駆動方式に、最近では電子制御などの要素も加え、直進安定性の優れた、あるいは操縦安定性の優れた味付けをしていく事になります。以下、駆動方式ごとに大雑把な解説をしましょう。

アンダー/オーバーFF編

前輪を駆動するFF車の最大の特徴は、「フロントタイヤだけで、真っ直ぐ走らせて、曲がらせる一人二役」です。どちらか一役であることと比べてフロントタイヤの負担は2倍ですから、真っ直ぐ走るだけの直進安定性は優れていますが、曲げる時にはそれが邪魔をします。

初期のFF車にはアンダーステアのきつい車が多く、「FFは曲がらない」と言われていた時代もありましたが、各種セッティングが進んだ今では過去の話。フロントタイヤで曲がりにくいなら、コーナリング中にリアが逃げるような、あるいはフロントへの追従性が高いセッティングにするだけでアンダーステアは解消されていきます。

そのためか、FF車ではリアの足回りをガチガチに固めたり、タイヤの空気圧を極端に上げてリアのタイヤグリップを落とすセッティングが好まれた事もありました。

しかし、それが行き過ぎて極端なオーバーステアからスピンモードになってくると、スピンを止めるためにフロントを意図的にアンダーにしてドリフトに移行するか、早くスピンさせて止める事を優先しないといけません。

そうした不安定要素を取り除いて速く走るため、FF車でのリヤのサスペンションやタイヤのセッティングはフロントよりも重要なのです。

タイトコーナーが続くコースでその特性を生かし、急激な方向転換を行う「タックイン」という技術もありますが、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)を使った「サイドターン」の方が制御しやすいので、現在ではあまり主流ではありません。

アンダー/オーバーFR・MR編

前輪は操舵、後輪は駆動と役割分担がハッキリしているFR車は「操縦性が素直」と言われる事が多いです。エンジンをミッドシップに置いたMR車は重量物が中心にある事で、エンジンなど重量物による影響を受けにくい事から、コーナリング性能に優れていると言われます。

実際には車ごとのセッティングで変わるので、単純な話ではないのですが、だからこそ安定させるも振り回すも自在なFRのマツダ・ロードスターやMRのロータス・ヨーロッパは特別に高い評価を受けるわけです。

そうしたスポーツカーを除けばFR車の大半はあえてアンダー傾向で直進安定性に優れ、多少乱暴な運転をしてもリアが暴れないセッティングにより、ステアリング操作に対して素直な動きをします。

MR車の場合も重量配分や足回りのセッティングを慎重にやらないと、フロントの荷重不足でフロントタイヤが十分なグリップを得られず、操作感は常にスカスカな上にひどいアンダーステアに見舞われる事も。

だからといってアンダーステアの最中に不意にアクセルを抜くと、急にフロントタイヤに荷重がかかって急激にオーバーステアを起こす「リバースステア」という現象があります。どの駆動方式でも起こりえますが重量配分の関係上、MR車はコマのようにスピンしてしまいます。

アンダー/オーバー4WD編

4WDと言っても電子制御スポーツ4WD、クロカンなどハードデューティー4WDまでさまざま。そのため、一般的傾向についての話となります。まず前輪が操舵と駆動を兼ねているという意味ではFFと共通の特性があります。

次に、後輪も駆動しているという意味ではFRに、もしミッドシップ4WDならMRに近い特性を持っています。その二つの特性を一つの車にまとめると、曲げる力に対して前に押し出す力が過剰なので、よほど慎重な足回りとタイヤセッティングを行わない限り、基本的にはアンダーステアです。

同じタイヤサイズでもハイパワーを受け止められる四輪駆動の利点を生かしている場合は、曲げる力が相対的に弱くなるので、プッシングアンダーもひどくなります。

そのため4WDの場合は「曲げ始め」の際に一旦少し逆にハンドルを切ってから、勢いをつけて曲げる「フェイント」という4WD特有の曲げ方を要求される事もあります。ミュー(路面との摩擦)が極端に少ない凍結路面では、これをやらないと全く曲がらないことも。

ただし、4WDには四輪全てがアンダーを出しながら猛烈な前進力も併せ持つ特性を生かし、ドリフト走行では最低限のカウンターステアで抵抗を抑えた「ゼロカウンタードリフト」ができます。

原則として高速ドリフトな上に、アクセル操作へのレスポンスも非常に敏感でクラッシュの危険性もダメージも大きくなりますが、成功すれば最低限の減速でコーナーをクリアできるハイリスク・ハイリターンな技術です(凍結路面なら、直結4WDにできる商用バンなどでも低速で練習できます)。

実は現代だと電子制御でいかようにも

ここまでアンダーステアとオーバーステアの駆動方式別解説をしました。

さらにチューニングカーでのセッティングやドライビング技術まで深掘りしていくと奥が深いのですが、実のところ、現代の車のほとんどは電子制御デバイスでコントロールしてしまうので、アンダーもオーバーも関係無い車が増えています。

タイヤをロックさせて起きるブレーキングアンダーはABSで解決できますし、オーバースピードでのアンダーやプッシングアンダー、さらにオーバーステアも、全てアクティブデフやトラクションコントロールABSなどを電子制御でエンジンも含め統合してコントロールし、オンザレールで走れる限界がとてつもなく高くなっています。

そのため、現代の最速マシンやスーパーカーのほとんどは電子制御デバイス満載のハイパワー4WDです。そういう意味では、ドライバーは「走れ・曲がれ・止まれ」と基本的な命令を下すだけで後は車任せの、「半自動運転」で走る車が今は多いかもしれません。

電子制御デバイスが無い車で試行錯誤を繰り返して走る事も非常に楽しいものですが、そうした「走り」を求めない人にとっては、技量を問わず安全に走れるのが一番かもしれませんね。
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