なぜ車に軽量フライホイールを取り付けるのか?そのメリット・デメリット

フライホイールの役割

フライホイール

エンジンから出力される「回転」の力には、エンジンの力による「ムラ」があります。燃焼室での燃焼・爆発による力を、ピストンからクランクシャフトへ、あるいはロータリーエンジンの場合はローターの回転を直接といった形で「回転力」に変えるのですが、その過程で必ずしも一定の回転力を保てるわけでは無いのです。

そのため、エンジンからの出力を単純に伝達してしまうと、タイヤまで伝わる頃には一定しないガクガクした力となって、走行安定性も乗り心地も損なわれます。そこで、エンジンからの出力軸にある程度の質量を持った円盤を組み込んで回転させ、その慣性モーメント(回転する勢い)を利用して、回転力の変化を減らして安定させる、それが「フライホイール」です。

自動車用エンジン以外の、変わった用途

フライホイール

自動車用エンジンの「フライホイール」の役割とは以上ですが、別な用途で使われる時には、フライホイールの慣性モーメントを生かして「運動エネルギーを蓄積」し、必要な時にフライホイールから動力を取り出す、一種の「エネルギー源」として活用される事もあります。

レーシングカー用のハイブリッドシステムの一種として使われた事もあり、1990年代には米クライスラー(現フィアットクライスラー)が「パトリオット」というレーシングカーを作ってル・マン24時間レースに出場しようとした事もありました。

ガスタービンエンジンで発電してモーターで駆動するというシリーズ式ハイブリッドカーでしたが、同時に抵抗を減らすため中が真空の容器内でフライホイールを高速回転させ、必要があればそのフライホイールから動力を取り出すという「ジャイロ回生システム」です。

当たり前な話ですが、激しい横Gなどに晒されるレーシングカーの中でそんなものを回してると危ないので(実際、フライホイールが暴れて吹き飛ぶ事故が2度ほどあったそうです)、「パトリオット」はテスト走行だけでお蔵入りし、その後「ジャイロ回生システム」を使った車はアウディがル・マンなどに投入したレーシングカーなど、レースや一部の試験用車両での採用にとどまっています。

トルコンを使う車にはありません

普通の自動車では、フライホイールはエンジンから出力された回転軸上に、クラッチディスクのカバーを結合した形で装着されています。クラッチカバーとともに、クラッチディスクへの摩擦面を構成していますので、クラッチディスクやクラッチカバーと共に摩耗していく消耗品でもあります。

当然摩耗すればクラッチの摩擦力に影響しますので、ハイパワーエンジン用に使われる強化クラッチにフライホイールもセットな事が多いのは、「軽量フライホイール」への交換だけが全てでは無いのです。

以上はMT(マニュアルトランスミッション)での話ですが、それではオートマ車の場合はどうでしょう?通常のMTと同じようにクラッチを持つDCTやAGSなどのセミAT(2ペダルMT)や、電磁クラッチを使った多段式ATまたはCVTの場合はもちろんフライホイールがありますが、トルコン(トルクコンバータ)を使った多段式ATやCVTの場合は、トルコンそのものがフライホイールの役割を果たす部品を組み込んでいます。

そのため、フライホイールが無いわけではないのですが、その他のミッションのように別体でフライホイールという部品は無いのです。

フライホイールの軽量化にはどんな意味がある?

前述のようにフライホイールには、その慣性モーメントで回転力を滑らかにする効果があります。

アクセルレスポンスが悪化する要因には、このフライホイールの重さが関わってきますので、とにかくレスポンスを良くしたいと思えば、フライホイールを軽くしてやると良いのですね。

一方で、その慣性モーメントを超えた動き、つまり加速力に対してはフライホイールの慣性モーメントが増すまでのタイムラグが生じますし、逆に減速してエンジンの回転数を下げようとしても、フライホイールの慣性モーメントが邪魔して、これもタイムラグが生じます。

この慣性モーメントの厄介なところはエンジンブレーキの効きにも影響するところで、一番影響を受けるのはロータリーエンジンです。「モーターのように回る」ことはロータリーエンジンが好評価を得ているポイントの一つですが、その理由としては低回転で回転ムラが大きい(ローター自体が真円運動をしていないので当然です)ため、質量の大きいフライホイールを使って安定させているからです。

そのため回転をひたすら上げていく時にはスムーズなのですが、いざエンジンブレーキをかけようとするとフライホイールの慣性モーメントが大きすぎて、初期のロータリーエンジン車ですと、「アクセルを戻すとかえって加速するような」錯覚を受けるケースもありました。

このように、フライホイールはドライバビリティに大きな影響を及ぼすので、設計の際には適正な質量をもたせる事が重要なのです。

フライホイールは無闇に軽量化しないこと

車の設計時に計算され尽くした結果として採用されているのが純正フライホイールなので、それを軽量化するとなれば、メリットだけでなくデメリットも当然発生します。その最たるものが不安定なアイドリングで、低回転での回転ムラを消しきれなくなります。

同じように、アクセルを踏み込んでエンジンの回転数を上げていく時にはフライホイールの慣性モーメントによる抵抗が無いのでレスポンスも良くリニアな吹け上がりを見せる一方で、アクセルを戻した時にはスコンと回転数が下がりすぎるほど下がってしまいます。

そんなデメリットを解消するために、ヒール&トゥその他「エンジンの回転数をドライバーが任意にコントロールする技術」があるのですが、スポーツ走行時はともかく、普段の買い物までそんな事をしていたら疲れて仕方が無いので、フライホイールは無闇に軽量化するものでは無いと言われるのです。

そのため、フライホイールの質量は用途に合わせ、街乗りにしか使わないならノーマル、たまにスポーツ走行をする程度ならノーマルを加工して少し削った程度、本当にタイムをコンマ秒単位で削るようなスポーツ走行をメインに、あるいは特化する時に初めて、素材にまでこだわった軽量フライホイールを使う事、とされています。

表から見えるものではないのでドレスアップ用途にもなりませんから、競技会やレースにでも出ない限りは無闇に軽量フライホイールに交換しない事、どうしてもフィーリングを味わいたいなら純正品を少し削る程度にして、それも走行中に破損しないよう、削りすぎに注意、チューニングでのフライホイール軽量化の目安は、そんなところです。

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