曙ブレーキから登場した世界初の対向10ポットキャリパー…ニュルでも実証された実力とは?

純正ブレーキ用では世界初の10ポットブレーキキャリパー

高性能・高品質ブレーキメーカーとして世界に躍進中の曙ブレーキ工業が発表したのは、対向10ポットブレーキキャリパーでした。スーパーカーやレース用のブレーキシステム、電動パーキングブレーキ等と並んで東京モーターショーでの目玉になりましたので、見に行って圧倒された方もいるのでは無いでしょうか。

近年力を入れているモータースポーツ活動などで培った技術を注ぎ込んだ結果、重量級の高性能車による超高速、高負荷、高温という厳しい環境下でも高いブレーキ性能を発揮するだけでなく、ブレーキング時のノイズや快適性まで配慮した優れたブレーキである事を強調しています。高級大型SUVに適応するため開発されましたが、当然SUV以外の高級車への適応も考慮されているはずです。

曙ブレーキ工業はこの対向10ポットキャリパーをはじめとする高性能ブレーキシステムにより他社との差別化を図り、世界中の多くの自動車メーカーに対するブレーキサプライヤーとして、競争力を維持していく方針を発表しました。

高性能ブレーキブランドとしての「akebono」

「曙ブレーキ工業」と言えば、昔は印刷された紙箱に入ったブレーキパッドを思い出す地味なブレーキメーメーカーでした。カッコイイ名前のアフターパーツブランドとは違い、コツコツ真面目に純正ブレーキを作る、「縁の下の力持ち」というイメージでしたが、1964年の開業以来新幹線用のディスクブレーキを作っていたり、自動車だけでなく高級自転車用のブレーキも作っていたりするのです。

それでも「曙ブレーキ工業」のビジネスと言えば日本や北米の自動車メーカー(主にトヨタ、日産、GM)が中心だったので、一般ユーザーにとっては「数ある部品メーカー」の一つに過ぎませんでした。

「曙ブレーキはしょせん純正、高性能なブレーキが欲しければ、やっぱりブレンボとか入れないと!」そんなイメージから脱却すべく「世界のakebono」として高性能ブレーキブランドの世界に討って出たのは、今から15年ほど前の事です。

企業ロゴも一新して、派手さの無さが自信の無さに見えたような社員の意識改革をはじめ、企業体質を一気に変革していったのです。その頃から自動車雑誌などでもブレンボを褒めたたえつつ「日本でもアケボノが頑張っている!」と一言添えられるようになり、少しずつブランド力を高めていったのでした。

「akebono」世界最高峰へ

2002年からは「ブレーキのエキスパートになる」を目標に「VCET(Vision Creative Engineering Team」プロジェクトをスタートさせます。

アルミ製ブレーキキャリパーや、セラミック浸潤アルミ製ブレーキローターを開発してマウンテンバイクやオートバイのロードレースに投入、2006年には四輪でも「ニュルブルクリンク24時間レース」へ、そして2007年にはついに最高峰の「F1」で、マクラーレン・メルセデスのブレーキサプラヤーとして参戦したのでした。

今年2015年には引き続きマクラーレンF1へのブレーキシステム供給を続けつつ、FIA世界耐久選手権、ニュルブルクリンク24時間耐久レース、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスへも供給を続け、市販車用ブレーキへの技術フィードバックと「akebono」のブランド構築を同時に進めてきたのです。

「対向10ポットキャリパー」の実力はニュルブルクリンクで実証済?!

多くのメディアで「ポルシェのカイエンターボSなどに搭載されると推察される」と書かれていますが、そのカイエン・ターボSは今年2015年1月にデトロイトショーでデビューしています。

その際に「フロントは10ポットキャリパー」と発表してますので、おそらく既にakebono対向10ポットキャリパーはデビュー済で、akebonoブランドでの発表と出展は東京モーターショー2015が初という意味でしょう。(各メディアの記事でも、「今年からポルシェに採用されている」と曙ブレーキ関係者の談話を掲載した後で、修正しているのをよく見かけました。)

それが事実となれば、「ニュルブルクリンクで8分を切った最初のSUV」であるカイエン・ターボSの高性能には、akebonoの対向10ポットブレーキキャリパーが大きく役立っています。

カイエンのような重量級ハイパワーSUVは強力なストッピングパワーと、高熱にさらされるブレーキの耐久性も確保するため大面積ブレーキパッドを装着した大型キャリパーが必須であり、これもakebono製のカーボン・セラミックローターと合わせ、存分に威力を発揮した事になります。

10ポット以上のブレーキキャリパー自体は英タロックス社が最大16ポットのレーシング・キャリパーを販売していますが、市販車用純正品として世界初採用の対向10ポットキャリパーである事をakebonoは誇って良いでしょう。

世界中でライバルとのシェア争いは続く

「akebono」ブランドでの高性能ブレーキシステム開発の成功で、曙ブレーキ工業は今や日米だけではなく世界中のメーカーで引くてあまたの状態になっています。

そのため生産能力を超えたオーダーで人件費がかさみ、2015年3月期の営業利益が減益になるというトラブルまでありました。「地味で堅実なブレーキ屋」から「軽自動車からスーパーカーやF1まで何でも来いの、世界のakebono」として今後もブレンボやコンチネンタルとの激しいシェア争いは続きそうです。

最近では「ブレーキはブレンボ派だったけど、今はakebono派です!」というユーザーも増えてきていますので、ここを踏ん張りどころと思って頑張ってほしいですね。

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