"TRD"や"STI"等…国産車メーカー公式チューナーのそれぞれの強みとは?

GT-R NISMO 2017

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自動車メーカーの中には「公式チューナー」を持つメーカーがあります。モータースポーツ等を担当する関連会社が、そのメーカーの車をチューニングして販売したり、カスタマイズパーツを製造・販売するのです。

メーカーの名を冠したレーシングカーを作り、メーカーワークスとしてレースや競技会に参加する場合もあります。そんな公式チューナーの、魅力や強みを紹介します。
Chapter
現存する公式チューナーは4社
トヨタのスポーツファクトリー「TRD」
日産が世界に誇るワークス「NISMO」
WRCで名を馳せた「STI」
公式チューナーが持つ強み
ホンダイズムが息づく準公式チューナー「無限」
ゆるい繋がりの準公式チューナー「D-SPORT」
かつての栄光の名残を残す公式チューナー

現存する公式チューナーは4社

現在でも存在する国内メーカー公認の公式チューナーと言えば、トヨタのTRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)と、日産のNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル。通称ニスモ)、それにスバルのSTI(スバルテクニカインターナショナル)が代表的です。

TRDはトヨタの子会社「トヨタテクノクラフト」のモータースポーツおよびカスタマイズパーツ部門であり、NISMOやSTIは、それ自体が日産やスバルの子会社なのです。

また、TRDはあくまでチューナーですが、NISMOとSTIはそれ自体がメーカーワークスチームとしてレースやラリーに参戦しているという違いがあります。

他には、三菱の子会社として「ラリーアート」という、かつては三菱ワークスとしてラリーで活躍した公式チューナーが、一応現存します。
しかし2010年にモータースポーツ活動を廃止し、事業を大幅に縮小してしまいました(三菱自動車としてのモータースポーツ活動は、MMSPが存続しています)。

トヨタのスポーツファクトリー「TRD」

TRDはトヨタ自動車販売のレース用車輌開発部門を前身として、1976年に誕生しました。

国内外のレースで活躍するトヨタ車の開発から製造、メンテナンスまでを担当しており、ル・マンのような国際レースに参戦するレーシングカーから、スターレットやヴィッツのようなエントリーモデルで戦われるレースのために、カスタマイズパーツを製造、供給しています。

それだけに留まらず、TRDブランドで独自に企画したチューニングカーやカスタマイズカーを販売する事もあるんです。古くは1994年、E100系カローラに2000ccスポーツツインカムエンジン「3S-GE」を搭載した「カローラTRD2000」を限定99台でリリースしました。

最近では2009年に、やはりE140系カローラに1500ccターボエンジンを搭載した「カローラアクシオ“GT”TRDターボ」をリリースしています。

日産が世界に誇るワークス「NISMO」

一方、NISMOは日産のワークスチームの一つとしてレースを戦っていた「大森ワークス」を前身として、1984年に誕生しています。

TRDと同じように、日産車のチューニングカー等を企画・販売していますが、一番の違いはNISMO自身が現在でも日産のワークスチームとして、レースに参加している事です。
前身がワークスチームだった事も影響していますが、「日産公認のレーシングチーム」として活動する事で、よりユーザーにモータースポーツイメージをアピールする効果を出しています。

TRD自体がワークスチームとして参加していないとはいえ、NISMOとTRDは国内外のレースやカスタマイズカー市場で、常によきライバルだったと言えます。

WRCで名を馳せた「STI」

モータースポーツ活動を通したプロモーション活動のため、スバルが1988年に設立した子会社が「STI」です。

初代「レガシィ」に始まるWRCへの参戦など国内外を問わずラリーやレース、各種競技会に、ある時はスバルワークスチームとして、ある時はパーツ供給者として参戦してきました。
1990年には水平対向12気筒エンジンをコローニに供給してF1に参戦したという歴史も持っているのです。

「STI(かつては(STi)」ブランドでスバル公式チューナーとして純正オプションパーツやSTIカスタマイズカーの開発・製造も担当しており、小規模ながら豊富なパーツバリエーションを誇ります。

近年ではラリーでのワークス活動を停止しましたが、代わりにレースでスバルワークスとして活躍中です。

公式チューナーが持つ強み

全ての公式チューナーには、ある共通点があります。それは、チューニングやカスタマイズを行うメーカーでありながら、メーカーの公認を受けた純正部品を、あるいは車そのものを販売する事が許されているという事です。

つまり、何も手を加えないノーマルスペックの時点で既に「特別なチューニングカー」である事を、メーカーの保証を受けながら実現できるという事なのです。

また、メーカー直系であり、企業イメージ向上活動の一環であるモータースポーツ活動に深く関わっています。
そのため新型車の開発段階から深く関与しているという強みがあり、それが公式チューナーの持つ最大の強みです。

ホンダイズムが息づく準公式チューナー「無限」

公式チューナーに近い「準公式チューナー」としては、事実上のホンダチューナーと言える「無限(M-TEC)」があります。

「無限」はまずその生い立ちが各公式チューナーとは異なり、ホンダ(本田技研)の創立者である本田宗一郎の長男、本田博俊によって1973年に設立されました。本田宗一郎氏が子息のホンダへの入社を認めなかった事もあり、博俊氏はチューナーとしてホンダの二輪車、四輪車のチューナーとなる道を選びます。

以後はレースで活躍するホンダ車の開発やチューニング、カスタマイズパーツの販売を行いました。

しかし、自らレーシングチームとしてレースに参戦しているところは、TRDよりNISMOやSTIに近いかもしれません。
1991年に第2期F1から撤退したホンダからF1エンジンの開発を引き継ぎ、1992年から2000年までは「無限ホンダ」のエンジン・コンストラクター名でF1に参戦し、4回の優勝すら記録しています。

しかし、「無限」はホンダの子会社ではありません。あくまでホンダのビジネスパートナーであり、建前上はホンダ以外のチューニングもやるという立場で、実際に少量スポーツカーメーカーの「ヴィーマック」等にエンジンを供給しています。

ほぼホンダ「公式」ですが「準公式」に留まっていると言える「無限」は、レース等を通してホンダ車の開発に関わりつつ、ホンダ以外でも活躍の余地を残しています。
ある意味では美味しいポジションと言えるかもしれませんね。

ゆるい繋がりの準公式チューナー「D-SPORT」

「D-SPORT」も、「準公式チューナー」と言える、ダイハツのパートナーです。

「D-SPORT」は部品卸販売会社「SPK」の一部門として運営されており、ダイハツの子会社ではありません。しかし、「ブーンX4」や「コペン」など開発段階の試作車の提供を受けてレースに参戦したり、東京オートサロンにカスタマイズカーを出展するなど、公式に近い扱いを受けています。

かつてはダイハツ公式チューナーとしてサファリラリーなどを戦った「DRS」がありましたが、こちらは2009年に会社としては解体されてしまいました。「DRS」ブランドは現在では「D-SPORT」ブランドの一部になっています。

かつての栄光の名残を残す公式チューナー

過去には、今まで紹介した以外にも公式、準公式チューナーがありました。

マツダの「マツダスピード」のように、名前は残っているものの、かつての公式チューナーと繋がりの無い、伝統だけをブランド名として残した公式チューナーもあります。

「スズキスポーツ」のように、企業としては名を変え存続しているものの、もはや準公式チューナーではなくなった例もあります。

今でも残っている公式、準公式チューナーを見ると、ユーザーがメーカーの保証のもと、安心して車を楽しめる環境があるように見えるのです。今では公式、準公式チューナーを持たないメーカーも、こうしたユーザーの選択肢を増やす道を、また復活させて欲しいと思います。
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