レクサスが採用する「セルフリストアリングコート」の実力とメリットとは?

レクサス RC

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「セルフリストアリングコート」という名前を聞いたことがおありでしょうか。レクサスが採用する塗装技術です。

聞けば塗装面の傷を自動的に修復してくれるというこの技術。走っているとどうしても付いてしまう小傷、洗車時のスクラッチ傷…クルマと傷は切っても切れない関係にあり、誰にとっても頭を悩ませる問題でもあります。今回は類似する塗装を含めてどのような実力があるのかを探ります。
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セルフリストアリングコートの実力とは?
日産は「スクラッチシールド」を採用
ただし、このようなデメリットも・・・

セルフリストアリングコートの実力とは?

例えば高級乗用車に乗るのであれば尚のこと、輝いているクルマに乗るのはエチケットのようなものかもしれません。しかしその輝きを保つという「作業」は思いのほか苦労をするものです。傷が入らないように気を配り、洗車も入念に行い、といった具合でとても気を遣わされますよね。

「セルフリストアリングコート」のような小傷程度なら自動的に修復してくれるような塗装は、そうした気遣いや気疲れのようなものからオーナーを開放してくれるものと言っていいはずです。その意味では、これも一つの「高級乗用車としてのサービス」であり、レクサスとしての「おもてなし」の一環と捉えてもいいかもしれません。

高い車両価格を支払った対価として、オーナーのストレスを軽減するというのは、高級乗用車として立派な資質ではないでしょうか。

自動車の塗装とはベースコートから何層にも重ねられていて、高級乗用車になればなるほどコート数が増えていくという認識でいいと思います。発色の鮮やかさや深み、またテロッとした艶の表現など、贅沢な塗装になればなるほどその「表現力」は高くなっていくものです。

そう考えていった時に最も上に来る「クリア層」もできるだけ厚い方がいい。艶や発色のみならず、ベースコートを守るという意味でもクリアは分厚いほうが適しています。その考えを突き詰めていくと今回ご紹介する「セルフリストアリングコート」のような塗装技術に行き着くというわけですよね。

俗に「濡れたような質感」などと、例えば筆者のような模型好きの間でもそういう表現をします。美しいトップコートはそのクルマの美しさを引き立ててくれます。そして重要なのはその「柔軟性」と「復元力」。硬いものは反面傷つきやすいと言われます。この「セルフリストアリングコート」もそうですが、ある程度柔軟性のある素材で塗装をすることで、万が一傷が入っても熱を加えるなどして元に戻しやすい、というのは、やはり柔軟性=復元力のある塗料を用いなければ成りません。

「セルフリストアリングコート」のキモは「柔軟性」と「復元力」といっていいでしょう。

日産は「スクラッチシールド」を採用

日産にもじつは「セルフリストアリングコート」と同様に技術があってそれは「スクラッチシールド」と呼ばれます。シーマやフーガ、エルグランドなどの高級車に採用されているものです。これもほとんど「セルフリストアリングコート」と同じ考え方といっていいと思います。

むしろ、日産はこうした耐傷への取り組みはかなり以前から行っていて、バブル期から例えば「スーパーファインコーティング」といった塗装技術を用いるなどして、熱心に研究が進められていました。
この図を見ても、やはりトヨタ/レクサスの「セルフリストアリングコート」と似ている構図が見て取れますよね。塗装のコート数はおそらくですがこの図のためにかなり端折っていると思われますが、「セルフリストアリングコート」同様、トップコート(クリア)として復元性のある塗料を用いているというところが特徴です。

実際に同系色同士で「スクラッチシールド」とそうでないものを見比べたことがありますが、やはり艶の深みが異なりますし、指で触れた触感も「スクラッチシールド」の方がツルツルでなめらかです。とくに上級車種においては出荷前の「磨き」もかなり入念に行われているようですから、その仕上がりの良さにも納得、といった印象です。

やはり良い塗装というのは高級乗用車の、一つの証、と言ってもいいと思います。

ただし、このようなデメリットも・・・

美しい塗装面と復元力のあるクリアのおかげで、オーナーとしては非常に気持ちがよいであろう「セルフリストアリングコート」や「スクラッチシールド」ですが、そんなメリットがある代わりにデメリットも存在するのが世の常。それは、小傷やスクラッチ傷のレベルを超えて深く入ってしまった傷、あるいは再塗装を必要とするダメージを負ってしまった時です。

こうした特殊塗装というのは、当然専用の塗料を用いていますから、再塗装を必要とした時に塗料の銘柄を「指定」しなければならないという面倒が生じます。鈑金修理をディーラーに依頼すればほぼ間違いはないと思われますが、個人で鈑金業者に依頼する場合には、この点に気をつける必要が出てきます。

例えば助手席ドアに凹みを伴う傷を入れてしまって、ドアパネルを一枚再塗装となった時に、その面だけ違う塗料で塗装されてしまうと質感の差となって現れてしまうばかりか、長い時間を経過すると、劣化の仕方やそもそも小傷やスクラッチ傷が修復できないとなると、その面だけ劣化度合いが違うということになってしまい、せっかくの高品質塗装も台無しです。

筆者の知人で、かつてバブル期にあった「スーパーファインコーティング」のクルマ「フィガロ」を鈑金塗装に出した時に、まさしくこの現象を経験しています。ディーラーを通さずに鈑金業者に依頼、しかも「スーパーファインコーティング」を指名しなかったために、時間が経って塗装の質感がその面だけ違う、という事態に。

このようなトラブルを避けるためにもオーナー自身が塗装が普通とは異なるということを認識し、また、修理に出す時にもある程度知識のある丁寧な業者、ないしは、ディーラーを経由して修理に出したほうが良い、ということが言えると思います。

とはいえ、技術が進歩しクルマが常に美しく、自ら小傷を修復してくれてしまうというような有難い便利な塗装が採用されるというのは大きなメリットです。クルマの塗装面というのは人間の「お肌」と同じで、美しければ美しいほど「自信」が持てるものです。

せっかくの美しい塗装ですからマメに洗車をしてあげて、輝きを守ってあげてください。

<前田恵之進>
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