人気シート素材アルカンターラの歴史は意外に古い?お手入れのコツとは?

先見の明は、やはりイタリア

ランチア

冒頭にも記しましたようにアルカンターラ、いや、当時は「アルカンタラ」と呼んでいましたが、それは日本の東レが「エクセーヌ」の名で売り出していたものをイタリアの化学メーカーが目を付け、イタリア国内に「アルカンタラ」というブランドを立ち上げてまで、主に自動車やファッション業界になどに積極的に売り込みをかけた、というのが最初だと言われています。そしてその代表的な採用例はランチア。

もともとランチアはインテリアに非常に高いセンスがあり、華美にすぎず、控えめながら上品さを併せ持つというテーマにまさしくこのアルカンタラは合致していたのです。それまでもランチアは、エルメネジルド・ゼニアの高級生地を内装に用いたり、本革も、最高級のポルトローナ・フラウを用いたりと、素材に対するこだわりが強く、そうした中で日本発の素材が、ヨーロッパという排他的な文化の中で堂々と採用されたことは誇らしいことでもありました。

画像は、90年型ランチア・デルタHFインテグラーレ16Vの内装。これは高級車というよりスポーティーカーではありますが、レカロシートの中央部には有名ブランド「ミッソーニ」の生地を貼り、サイドをアルカンタラが固めるというコンビネーションで、これは当時オプションの本革内装よりも人気の高い仕様でした。

これに前後して、ランチア・テーマ、デドラ、カッパ、リブラなどにもほぼ標準的な仕様としてアルカンタラは採用され、また同時にこのランチアを発信源としてヨーロッパ全体にこのアルカンタラの素材を内装に用いるという仕立てが流行りました。

1980年代前半から1990年代にかけてのこと。アルカンターラは意外に歴史が古い、というわけです。

日本では平成元年、ローレル・クラブSに…

さて、そのアルカンタラの発信元日本ではどうだったかというと、ちょうどバブル期の平成元年、C33ローレルのクラブSが皮切りだったと記憶しています。上級スポーティグレードに美しい木目パネルとセットでコーディネートされたこげ茶のアルカンタラ、もとい、「エクセーヌ」は非常に渋い印象で大人っぽく、それまでのキャバレー趣味のようなドぎついインテリアからははっきりと一線を画す趣味の良さを持ち、またそれが人気となりました。

画像はC33ローレル後期型に追加された「セレクションS」と呼ばれる、ノーマル外装にエクセーヌを組み合わせたもの。あまりの人気の高さに、ローレルは91年のマイナーチェンジでエクセーヌの採用範囲をどんどん拡げました。本革でもない、ベロアでもない、新しい感覚と美意識を持つエクセーヌはたちまち日本でも拡がっていきます。

この他にも、同じ日産ではA31セフィーロにも前期型の限定車に採用され始め、90年後期型ではオプションで選択可能、R32スカイラインでもGT-Rのインテリアには部分的にこのエクセーヌが採用されていました。また、同時期のホンダ・アコードインスパイアにもエクセーヌが採用されていたり他数多、この標準的なベロアよりやや付加価値のある素材としてのエクセーヌは人気を博します。

しかし、その後バブルがはじけると、日本ではとにかく合理化とコストダウンという考え方に傾きましたから、エクセーヌは一旦姿を潜めてしまうのです。その後、2000年代に入り、また「アルカンターラ」というブランド名で再登場したというのが経緯。

やはり良いものは見捨てられることがない、ということなのでしょう。

手触り最高!でもお手入れには注意が必要です

アルカンターラが自動車の内装材に用いられるようになったのはもちろん自動車の内装用素材としての耐火性をクリアしていること、また紫外線や湿気にも強く、色落ちや破れが少ないという点が挙げられます。そうした実用的な観点からも自動車の内装に相応しい素材であるということができると思います。がしかし…。

アルカンターラの唯一の欠点は、「スレ」。画像のようにサイドが本革ならまだ良いのですが、スポーツシートでサポートが深かったりすると、必ず身体を擦って乗り降りすることになりますから、「スレ」が発生します。で、スレるとこのアルカンターラ、どうなるかというと、物の見事に毛羽立ちます。あるいは、消しゴムのカスのような毛玉ができてしまうんですね。これが新品時の美しさから比べると非常に醜いわけです。

これに対処するには毛玉トリマーを使うなど方法はあるのですが、結局、身体を擦るのをやめないことには改善しないので、乗り降りに注意するしかないんですよね。それから、薄いカラーだったりすると汚れが落ちにくいということ。これも掃除の時にゴシゴシやるとこれがまた毛玉の原因になってしまうので、固く絞ったウエスで強く叩くという汚れの取り方しかできないわけです。けっこう汚すと厄介です。

そんな点からしても、アルカンターラ。やはりデリケートな高級品という認識でいいのではないでしょうか。乗り降りに注意しなければならないとか、車内で飲食を控えるとか、薄い色のアルカンターラにデニム、これもマズいかもしれない。こうなるともしかしたら本革よりも気を使ってあげなければならない素材かもしれません。


高級素材ですから、相応のデリケートな扱いを、というのは高級商品を購入した時の宿命のようなものですよね。もちろんアルカンターラも年々防汚処理やスレへの耐久性など改善はされているようですが、素材の性質上どうしても影響を受けやすい…。
上質なタッチを堪能するために、手間を惜しんではいけない、ということなのかもしれません。

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