ダウンサイジングターボの台頭…ターボは今と昔でどう違うの?

そもそもの理念は同じ、ターボチャージャー

フェラーリ ダウンサイジングエンジン

ターボチャージャーがエンジンの補助装置だという認識は皆様お持ちだと思います。排気のエネルギーでタービンを作動させ、過給器とし、シリンダーへの空気の充填効率を高めるという役割。こうして自然吸気よりも高い熱効率による高出力、高効率を得るという考え方は今も昔も同じです。しかしどうして今改めてまたターボなのか。そこにある大きな違いとは「目的」にあるといっていいと思います。

以前のターボチャージャーはあくまでも「馬力」。モアパワー、モアトルク、モアスピード、こうした「要求」から、いわゆる「加速装置」としての役割、目的で用いられていたわけですよね。ところが今注目され用いられている理由は、そうした面も多少はあるにしても、どちらかというとエンジン自体の「効率」を求めてのことです。だからタービン自体のサイズも違えば制御に関する考え方もまるで違う。同じターボだからといって昔のターボと同じようなものを想像していると肩透かしを食らうことになると思います。

メーカーとしてもそのあたりには苦慮しているようなところがあって、ユーザーの側が「ターボ」というだけで「パワー」を想像してしまうと、ダウンサイジングターボは全く目的も違えばフィーリングも違う物になっているので「物足りない」と思われてしまう。だからディーラーさんで説明を受けたりすると、そこを強調して「以前のものとは全く違う考え方なんです」ということを言われたりすることも少なくありません。

お若い方は、以前のパワーオンリーのターボをご存知ないため、スンナリ受け入れて頂きやすいダウンサイジングターボではあると思いますが、筆者も含め、アラフォー以上の世代には「ターボ」というだけで昔の「アレ」を期待してしまうようなところがある。これはもうジェネレーションギャップとしか言い様がないのですが、それくらい時代は変わり、ターボの役割や考え方が変化したということを認識しなければならないと…自分に言い聞かせているようなところもあります。

ドッカンターボでイケイケだった80年代のターボ車

80年代のパワー重視のターボ車の魅力といえばやはり、ある回転数から爆発的に加速力を発揮する「ドッカンターボ」ではないでしょうか。

ターボという装置そのものが物珍しく、ターボが付いているということが大きな付加価値、商品価値になっていた時代です。誰もがその爆発的なパワーに魅力を感じ、ターボを「感じたい」と多くの人が魅了されていたターボパワー。折しもF1ではホンダV6ターボが席巻している時代でしたから、日本人にとってターボ車というのはじつにタイムリーだった。メーカーが違うのに、Y31セドリックのカタログには「F1と同じV6ツインカムターボ搭載」という見出しまで用いられたほどです。

この頃の日本車はまだ足回りも十全なキャパシティを持っていたわけではなく、有り余るターボパワーを吸収しきれないようなところがあった。でも、そのやや乱暴なハンドリング、パワーでハンドルが取られるトルクステアやパワースライドなどが「運転している」「操っている」という実感に繋がったりして、そんなところを楽しめるという風潮があったのもターボを後押しした部分でもありますよね。

後に安全性が重要視されるようになるとパワーを制御するデバイスも生み出され、やがて燃費の時代に突入すると、パワー重視のターボエンジンはまるで潮が退けるように姿を消していくことになるのです。そこには排ガス規制の問題も存在しました。

多くのパワー重視のターボ車は、排ガス対策とパワーの両立が難しい代物だったというわけです。同時に、たとえばホンダでいうならVTECなどの自然吸気でも高出力を可能とするエンジンが台頭するなどして、ターボというデバイスでパワーを得るということがトレンドから外れていった、という側面もありましたよね。

こうして2000年代前半には、パワー目的のターボエンジンは一部を除きほぼ姿を消しました。これでもうターボ車にはお目にかかれないかもしれないな、と思っていると、早くもその数年後に欧州発信で新世代のターボエンジンが産声を上げることになるのです。

各社ダウンサイジングターボの味付けの違い

国産モノでいうと、ホンダの1.5リッターVTECターボ、トヨタの1.2リッターターボ、2リッターターボ、これらそれぞれダウンサイジングターボエンジンですが、乗った印象は完全に自然吸気と区別がつきません。実にNAライク。

だから以前のターボを期待するとちょっとガッカリするでしょう。ましてやトランスミッションも多段ATやCVTですから、エンジンパワーの段付きなどを吸収してしまうようなところがある。つまりスムーズで洗練されています。

日産の、ちょっと毛色は違うけれどジュークの16GTは完全な、今時珍しいパワー重視のターボ車。とは言っても爆発的にパワーが盛り上がるというより、1.6リッターにして2.5どころか、3リッターくらいのパワー感を寄越してくるというタイプの、モリモリと力を発揮するエンジン。これはこれでなかなか魅力的。

またスカイラインに搭載のメルセデス系4気筒は、コッテリとした濃密なトルクで重い車体を軽々と推進してくれるというタイプのエンジンで、その印象はメルセデスそのもの。スカイラインという銘柄から受ける印象からはちょっとかけ離れているかも。

レヴォーグの1.6リッターはスバルの「苦悩」が顕著に現れている例ですね。スバルは従来からハイパワーターボをウリにする数少ないメーカーでしたから、この1.6リッターターボのセッティングにも、そのパワー重視型のころのような雰囲気を残している、つまりターボパワーを感じさせながら燃費を得ているというところがミソです。非常にスムーズでパワーの立ち上がりもリニアですが、どこかターボの存在を意識させるというのはきっと意図的なものでしょう。

このあたり外国勢ではどうかというと、この道のパイオニアたるワーゲングループ、TSIエンジンで言うと、これが意外と気持ちの良いパワーの伸びを味わえる、望外にスポーティな仕立てだったりします。

ポロの1.2TSIなどは車体の軽さとも相まってかなりキビキビと気持ちよく走ってくれて、しかも高速でも伸びやかに力を発揮して楽しませてくれる要素も十分。また、ツインエアやマルチエアなどで独自路線のフィアットグループは、これもまたターボにはノウハウのある会社なので、日常的な扱いやすさを保ちながらターボの爆発力をも感じさせるあたりはいかにもイタリア。でもちょっと実用燃費は落ちるようです。


ターボで燃費とパワーを得る。排気量を下げた分だけ充填効率を上げて、しかもターボのフリクションや制御も現代の技術で十全にカバー。いうなれば以前はただの「加速装置」だったターボチャージャーの「新たな活用法」として再注目されているのが現在のダウンサイジングターボエンジンということになりますよね。そもそもパワーを得るという行為自体、エンジンの効率を高めるという目的でもありましたから、本来的にはこうした燃費重視のエンジンが作れないことはなかったとは以前から言われていたことです。

ターボエンジンは復活するべくして復活した、そう考えて間違いなさそうです。

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