アウディクワトロは何が優れているのか?その中身と他との優位性は?

Audi Quattro

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今やアウディの代名詞ともなっている "クワトロ"。
当初は車名として使われたこのクワトロという単語は、いまはアウディの四輪駆動システムの名前となっています。

デビュー当時は革新的な技術として受け入れられ、アウディのスローガンである「技術による先進」を体現するものでありました。
最初のクワトロのデビューから35年、現在のアウディのラインナップには、どのようなクワトロシステムが搭載され、他社の四輪駆動システムに比べてどのようなアドバンテージがあるのでしょうか。
Chapter
アウディクワトロの歴史
熟成を極めた最新のクワトロシステム
もうひとつのクワトロ - "Haldex"

アウディクワトロの歴史

1980年、アウディ初の四輪駆動システムを搭載した "Audi Quattro" がデビューしました。

それまでアウディは縦置きエンジンのFFレイアウトを採用していました。
前輪より前にエンジンが配置されるそのレイアウトはフロントヘビーな重量配分となりましたが、当時のクルマはタイヤのグリップ力が弱く、自重が軽かったため、駆動輪である前輪にしっかりと重さをかけて空転を防ぐという観点では正しいレイアウトだったのです。

しかしFFはFRに比べてアンダーステアがきつく、コーナリングでは不利となりますし、またエンジン性能が向上し、そのパワーをより有効にかつ安全に使いきるには、四輪駆動しかないというのがアウディの出した解でした。

当時の四輪駆動システムはオフロード向きのパートタイム式が主流でしたが、アウディは前述の目的を達するため、フルタイム4WDシステムが必要と判断、独自に開発を進め、1980年にアウディ クワトロとしてデビューしました。

2144cc の直列5気筒ターボチャージドエンジンは200ps を叩きだし、それに5速マニュアルのトランスミッションとトルセン式センターデフを持つ4輪駆動システムが組み合わされました。一方ボディは可能な限り既存の量産車のものを流用したため、価格は予想より安く抑えられたそうです。

このあとアウディクワトロをベースとしてホイールベースを短縮、新開発の300psターボチャージドエンジンを搭載した "アウディ スポーツ クワトロ" がデビューしました。
こちらはラリー用ホモロゲーションモデルとして開発されたため大変高価なクルマとなりましたが、グループBのラリーへの参戦が認められ、その後WRCで輝かしい勝利を獲得しました。
このアウディクワトロの活躍によって、その後のWRCではそれまでのラリーモデルの中心だったハイパワーのミッドシップ車は姿を消し、四輪駆動搭載車が主流となりました。
ラリーシーンを大きく塗り替えるほど、アウディクワトロの先進性が凄かったといえるでしょう。

熟成を極めた最新のクワトロシステム

アウディはラインナップしているすべての車種にクワトロを搭載したモデルを用意しています。
A4以上のグループでは、アウディ伝統のクワトロシステム、すなわち、縦置きエンジンにセンターデフ式のクワトロシステムを搭載しています。

これは常に4つの車輪に駆動力が伝わっており、真の意味でのフルタイム四駆となっています。
アウディはこれを車種ごとに味付けを施し、通常走行時の駆動力配分を車種によって 50:50 だったり40:60だったりと微妙に変えています。
R8やRSモデルで若干異なったシステムを持つものもありますが、大きなくくりでいえばほとんど同じシステムといえるでしょう。

車両の走行状況や路面のコンディションが変化すると、1000分の数秒以内にトルク配分を変え、エンジンの性能を最大限に路面に伝えようとします。
たとえば走行中に前輪のグリップが低下すると、後輪に最大75%のトルクを配分し、それにESC(横滑り防止機構)を組み合わせて制御することで姿勢を崩さずに走行できるようコントロールしています。

このクワトロシステムのアドバンテージとしては、四輪駆動そのもののアドバンテージである走破性や走行安定性を高度な次元で実現しつつも、後輪に多くの駆動力を配分することができるため、FRのように回頭性の高いコーナリングをも実現できることです。
この点は、通常は前輪または後輪に100%の駆動力がかかっていて、何かの時だけ主駆動輪から従駆動輪にトルクが配分されるスタンバイ式四輪駆動と比較して、大きなアドバンテージといえるでしょう。

アウディが独自開発した機構で、アウディの歴史と共に熟成されてきた、これぞまさに真の"クワトロシステム"といえるものと思います。

もうひとつのクワトロ - "Haldex"

では、A3以下の横置きエンジンのグループでは、どのようなクワトロシステムが搭載されているのでしょうか。
A1, A3 以外にも、TT や Q3 が横置きエンジンとなっています。

実はこれらの車種には、A4以上とは異なるクワトロシステムが搭載。
スウェーデンのHaldex社が開発した四輪駆動システムです。
ハルデックスのシステムはセンターデフではなく電子制御多板クラッチを用いており、この機構は"ハルデックス カップリング"と呼ばれています。
以前は電子制御多板クラッチではなくビスカスカップリングが用いられていましたが、駆動力配分の自由度を持たせたいがために、電子制御多板クラッチを用いるものに改良されました。現在は第5世代が世の中にリリースされています。

ハルデックスカップリングはその機構からスタンバイ式(オンデマンド式)の四輪駆動となっており、前輪100:後輪0の駆動力配分が基本ですが、アウディは電子制御で駆動力配分を変えられることを活かし、何かの際により機敏に駆動力配分を変えられるようにするために、常に後輪にも5%ほどの駆動力を配分するようにセッティングされています。
100:0 の配分だと後輪に駆動力を配分する際に一瞬の間が感じられるという欠点があったため、それを緩和するために常に数パーセントの駆動力を配分しておき、作動遅れを回避。
しかしながら5%ほどの配分ではほとんどFFと言ってもよく、センターデフ式の四輪駆動車と乗り比べると、その乗り味が若干違うことがわかります。

ハルデックス カップリングはアウディ以外にもVWやVolvoで採用されています。
アウディ A3 はフォルクスワーゲン Golf とその基本部分を共有していることから、Golfに採用されているハルデックスカップリングをA3の四輪駆動システムとして採用。
しかしながら、アウディは独自のノウハウを活かして電子制御プログラムをチューニングしているといわれています。
そのためか、アウディ社はハルデックスカップリング式四輪駆動も "クワトロ" の名前を与えているのです。

ハルデックスカップリングのアドバンテージは、エンジン横置きに対応でき、パッケージング的にも自由度が上がること、そして基本はFFなので燃費が四輪駆動の割には良いということが言えると思います。
アウディS3のJC08モード燃費は 14.4km/l で、ほぼ同等のパワーを持ちながらも前45:後55の前後輪トルク配分の四輪駆動システムを持つスバル WRX S4 のJC08モード燃費である 13.2km/l を上回っています。(もちろんこれには車重やミッション特性なども影響します。)

センターデフ式四輪駆動システムに比べ、燃費やパッケージングに優位なシステムといえるでしょう。
アウディの代名詞ともなっている "クワトロ"。"技術による先進" を体感できるアウディのクワトロシステム。
車種によってその中見を変えていますが、その車種の性格、エンジンなどの仕組みなどに拠って最適なものを選んでいるといえると思います。
アウディをマイカーとして自分の相棒に選ぶ際には、このシステムの違いを念頭に置いて選んでみるのもよいと思います。
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