フェアレディZとティアナ。なぜ同じエンジンでも、駆動方式で出力に違いが出るのか?

ティアナ

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日産自動車の上級車種に用いられているVQ系V6エンジン。なかでもVQ35DEは幅広い車種に用いられていますが、車種によってはFRだったりFFだったりと駆動方式もまちまちで、駆動方式によってスペックが異なります。その理由はどうしてなのかを探ってみたいと思います。
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歴史ある汎用性高いマルチプレーヤー
スポーツカーからミニバンまで幅広く搭載
FFへの搭載、しかもCVTと組み合わせ
SUVだって豪快に走らせる!!
ミニバンの長距離ドライブも後押し
高い評価の反面、批判も…

歴史ある汎用性高いマルチプレーヤー

日産VQ型エンジンの歴史は意外と古く、デビューは1994年。当時の2代目セフィーロへの搭載が初めてでした。

高効率で生産性も高く、耐久性と信頼性、さらにメンテナンスフリー性を備え、しかも排気量の増減にも広く対応できるという、新世代のV6エンジンとして登場したのです。

生産は、福島県のいわき工場、アメリカのテネシー州デカード工場(2004年から)、中国の東風日産花都工場(2011年から)の3つ。いずれも、VQエンジンの生産に求められる高い精密性と工作精度を満たす品質管理が徹底された工場になっています。

また、アメリカのWard's AutoWorld magazine社が毎年選出する10ベストエンジンに1995年~2008年まで14年連続で選ばれるという快挙も達成。技術と性能の高さ、またそれを長く維持し続けている開発努力などが世界で評価されています。

スポーツカーからミニバンまで幅広く搭載

カルロス・ゴーン氏が日産の舵取りをするようになって、合理化が推し進められたことは有名ですが、その内容はプラットフォームの共用化にはじまり、エンジンバリエーションの絞込みまで、いうなれば「ワンソース・マルチユース」という考え方で徹底されていました。

そのためスポーツカーのZ33型フェアレディZ、FFセダンのティアナ、そしてミニバンのエルグランドに同じVQ35DEエンジンが積まれています。

これは、同一機種を大量生産することでコストを抑える目的が大きかったわけですが、かといってFRスポーツカーとFFサルーンにまったく同じ仕様を載せるわけではありません。いわゆるデチューンで対応しています。

FFへの搭載、しかもCVTと組み合わせ

Z33型フェアレディZに搭載されたVQ35DEは、最高で294psを誇っていました。一方で、ティアナに搭載する際は、まず横置き前輪駆動であり、トランスミッションはエクストロニックCVTとの組み合わせとされたため、フェアレディZと同じハイパワー仕様をそのまま搭載することはできませんでした。

そこで、最高出力を231psまで絞り、同時に最大トルクも3kgダウン。このトルクは、発生回転数を2,800rpmまで低めて、低速から実効性のある出力特性に変更し、CVTとのマッチングにも大きく配慮したセッティングに変更されました。

そのため、ティアナの3.5L版は余裕のある走りを生み出すと言われています。

CVTの滑らかな走行感覚に、豊かなサスペンションストロークによってもたらされる、ゆったりとした乗り味が加味され、大型セダンらしい高級感を持った乗り味に仕上がりました。

SUVだって豪快に走らせる!!

同時期に販売されていたムラーノは、ティアナ同様横置きFFとCVTの組み合わせです。

ムラーノとティアナはプラットフォームを共有していたため、ある意味搭載は簡単だったのかもしれません。しかし、こちらは重量の嵩むSUV。重心も高く、タイヤの径も大きいため、その点の配慮はあったはずです。

しかし乗ってみればまったく心配は無用。ティアナで実績のある実用的なセッティングは、大型SUVにもきわめて有効で、見るからに大きな巨体を軽々と、しかも滑らかに加速させるのです。

ましてやムラーノはスポーティな走りを売りにするSUVでしたから、この余裕あるパワーユニットはまさしく設計者が求めたスポーティな味にぴったりだったわけです。

ミニバンの長距離ドライブも後押し

エルグランド初代の後期型にもVQ35DEが搭載されました。2000年8月のことです。搭載順としてはかなり早い方ではなかったでしょうか。

もともとのエンジンは、VG33E型という年代物のエンジンで、その性能には満足できないというユーザーに応えた格好でもあります。

するとこれが実に良い作用を見せるのです。VGに比べVQははるかに軽量でスムーズ、しかも静かでしたから、エルグランドのガソリン車をより高級感のあるクルマにステップアップさせてくれたのです。

出力値にして70psアップの240ps、トルクも8.9kgアップの36.0kgと大幅な性能向上。元来、しっかりとしたシャシーで高速道路でも不安なく走れるという定評のあったエルグランドですが、VQエンジン搭載で、長距離クルーザーとしての資質を高めることになりました。


高い評価の反面、批判も…

思いつくだけでもフェアレディZ、スカイライン、フーガ、エルグランド、ティアナ、ムラーノ、プレサージュ・・・といった具合で、VQ35DE型エンジンの搭載車種の多さは、もちろん汎用性の高さの裏付けですし、現代のエンジン技術の象徴といえるのかもしれません。

しかし、やはり特にスポーツカーファンからは多少ならずも不満の声が聞こえてくるのも事実です。それはズバリ「スポーツカーなのにミニバンと同じエンジンなのは…」というもの。

それもそうですよね。スポーツカーファンは愛車に対する思いは当然強いでしょうし、何よりエンジン音に対するこだわりは人一倍ではないでしょうか。そう考えると、たとえば隣の家のエルグランドと、自分のフェアレディZが同じ音がする、というのはちょっといただけないかもしれません。

それに応えるように、フェアレディZエンジンは、マイナーチェンジでVQ35HRに進化しています。

とはいえ、エンジン技術の向上により合理化が推し進められ、収益も改善された日産自動車。その結果が良い方向に作用した例はたくさんあり、恩恵に浴したユーザーも少なくないでしょう。

現代の量産品にはこうした二面性がついてまわるもの。信頼性と耐久性によって、それだけ浸透しているという証拠と考えることもできるのではないでしょうか。

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