新型トヨタヤリスは世界のコンパクトカーのベンチマークとなることができるのか?!新型車インプレッション解説

トヨタ ヤリス

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前型である「ヴィッツ」の欧州名だった「ヤリス」。今回のモデルチェンジで、日本市場でも「ヤリス」とした背景には「グローバルモデルとして戦う」という決意がうかがえます。本記事では、ヤリスHYBRID Z 2WD(部分的にはガソリン車含む)の走行性能や乗り心地、ロードノイズといった、動的性能をレポートしつつ、トヨタの決意通り、ヤリスは世界のコンパクトカーのベンチマークとなることができるのか、考察・解説していきます。

文・自動車ジャーナリスト吉川賢一/写真・エムスリープロダクション鈴木祐子

吉川 賢一|よしかわ けんいち

モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。

吉川 賢一
Chapter
新型トヨタ・ヤリスの高速直進性は?9点 (10点満点)
新型トヨタ・ヤリスのコーナリング性能は?8.5点 (10点満点)
新型トヨタ・ヤリスの乗り心地性能は?8.0点(10点満点)
新型トヨタ・ヤリスのロードノイズは?うるさい?8.0点(10点満点)
新型トヨタ・ヤリスの動力性能は?8.0点(10点満点)

新型トヨタ・ヤリスの高速直進性は?9点 (10点満点)

ヤリスは、LTAなどの運転支援を使わずとも、直進性がとても高いです。クルマで走行していると、横風に煽られたり、道路の継ぎ目の段差、といった外乱を受けることがありますが、ヤリスは、それらの外乱を高速走行中に受けても進路の乱れが少なく、ステアリングに手をそっと添えているだけで、真っすぐに走ってくれます。フロントサスペンションのジオメトリや、EPS制御によって、ステアリングがセンターに戻される復元力が強いことも影響しているのでしょう。

さらに、レーダークルーズコントロールや、トヨタのコンパクトカーとして初搭載されたレーントレーシングアシスト(LTA)などの安全運転支援システムを使うことで、コンパクトカーであることを忘れるほどの安心感を得ることができます。

なお、LTAは、2段階での切り替えが可能です。LTAの動作が煩わしい方は、走行車線を外れそうになったときのみアシストが働くモードに変更できますので、状況に応じて使い分けることをお薦めします。

新型トヨタ・ヤリスのコーナリング性能は?8.5点 (10点満点)

車重1090kgと、ハイブリッド車にしては軽量なボディのおかげで、コーナーへのターンインや、旋回中のステアリング切り増し操作にも、クルマがしっかりと応答してくれる、素晴らしいハンドリング性能を持っています。

操舵力が軽く、補舵力も軽めですので、軽快なハンドリングに感じられます。
また、コーナリング中にあるギャップを乗り越えた際など、若干タイヤが跳ね上げられる印象はあるものの、サスペンションが衝撃を上手くいなしています。

揺れのおさまりが早く、ロールやピッチングといったボディモーションが小さく感じられ、安心感が高いです。車重重量が60kgほど軽いガソリンモデルも、ほぼ同様のコーナリング性能に感じます。

新型トヨタ・ヤリスの乗り心地性能は?8.0点(10点満点)

ヤリスは、フワフワとする上下の動きが少なく、ダンピングの効いた乗り心地です。路面突起や段差への当たりは、ライバルである「フィット」の方が柔らかく感じますが、フィットはダンパー減衰力が低めに設定されているのか、高速走行中に上下のフワ付きがあり、クルマの揺れがヤリスよりも大きめです。
まるで、柔らかいタイヤを履いているかのような、滑らかな乗り心地のフィットと、ボディの揺れが少なく、すっきりした印象のヤリス、乗り味の好みによって、評価は分かれるところでしょう。

新型トヨタ・ヤリスのロードノイズは?うるさい?8.0点(10点満点)

写真:宮越孝政
これまでのコンパクトカーと比べて、ヤリスのロードノイズは、十分に静かです。特に中低速(~60km/h)では、バツグンの遮音性能を誇り、「サー」というロードノイズも、ごく小さい音量で抑えられています。

100km/h程度の高速走行時は、若干ロードノイズが大きくなったように聞こえますが、それでも、このカテゴリでは相当に静かです。
ガソリンモデルは、走行中は常にエンジン音が聞こえる分、ハイブリッドモデルよりは車室内の静粛性が落ちますが、ロードノイズ自体はよく抑制されているように感じます。

ただし、フィットも静粛性を飛躍的に上げてきており、フィットe:HEVと比べてしまうと、ヤリスハイブリッドのほうがロードノイズはやや大きめ、ということになります。

新型トヨタ・ヤリスの動力性能は?8.0点(10点満点)

今回、ハイブリッドモデルで、大人3人+機材(約30kg)を乗せて、小田原から沼津方面まで、箱根の山を越えるドライブをしてみました。

中低速からアクセルペダルを踏み込めば、力強いサウンドとともに、それなりの加速をします。登坂ではエンジンがしきりにかかりますが、エンジンのサウンドやフィーリングは悪くはなく、小気味良く加速ができることは、非常に良い点です。
ガソリンモデルの方も、速さはありませんが力強い加速をします。エンジン音も滑らかな音質で、ラバーバンドフィールも少ないため、フィーリングも良く感じます。

きつめの登坂路でも加速し続けますが、エンジン音は大き目のうなり音を発生します。このあたりはハイブリッドの余裕あるトルクの方が、圧倒的に好ましく感じます。
写真:新型トヨタ・ヤリスのメーター表示
なお、試乗したヤリスHYBRID ZのWLTCモード燃費は35.4km/L、300㎞走行した後の実燃費は、28km/Lでした。走行場所は、高速道路50%、ワインディング20%、渋滞のある一般道30%。特に燃費優先走行をせずに走行した結果です。

3人乗りをしていた区間もありますので、条件的には厳しい運転をしたことになりますが、実燃費で28km/Lを超える燃費には、驚かされます。ちなみに高速走行のみですと、30km/Lを超えていました。
ヤリスが「超優秀なコンパクトカー」であることは間違いないですし、国内販売台数ナンバー1を競う一台となるでしょう。しかしながら、クルマの細部の作り込みにおいて、欧州車のコンパクトカーと比べると、まだ粗さや妥協があるように筆者には見えます。

例えば、ドア閉じ音はフォルクスワーゲンポロのような重厚さはありませんし、時速30km/h以下になるとカットされるACCとLTCなど、最新の欧州車と戦う上で、商品力に物足りなさを感じる部分があります。
ヤリスは、いまや日本にとどまらず、欧州地域でも人気となっています。しかし、世界のコンパクトカーのベンチマークとなるところまでは、まだあともう一歩足りていない、というのが筆者の見解です。それでも、日本車で、欧州車と真っ向勝負できるコンパクトカーは、おそらくこのヤリスだけでしょう。

2020年の日欧カーオブザイヤー、そして国内の登録車販売台数で上位にどこまで迫れるのか、2020年末が非常に楽しみな一台です。

新型トヨタ・ヤリス<主要諸元>

<主要諸元>

トヨタ ヤリス HYBRID Z(2WD) 

車両価格229万5000円

WLTCモード燃費 35.4km/L

外板色(内装色) ホワイトパールクリスタルシャイン(クレアトープ)

全長×全幅×全高[mm] 3940×1695×1500

ホイールベース 2550mm

最小回転半径 5.1m

車両重量1090kg

乗車定員5名

エンジン:1490cc直列3気筒エンジン

最大出力67kW[91ps]/5500rpm、最大トルク120Nm[12.2kgfm]/3800-4800rpm

モーター:1NM交流同期原動機

最大出力59kW[80ps]、最大トルク141Nm[14.4kgfm]

無鉛レギュラーガソリン(タンク容量36L)

電気式無段変速機

タイヤサイズ185/55R16
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商品詳細