新型フィットのデザインは柴犬!?心地よさを徹底的に追求した実力を試乗レビュー!

2019 フィット

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なんか柔らかくなったな。3度目のフルモデルチェンジで4世代目となり、「フィット4」と呼ばれる新型フィットに対する、ボクの第一印象だ。エクステリア担当のデザイナーによると、新型フィットのデザインのモチーフは「柴犬」なのだという。

文・工藤 貴宏

工藤 貴宏|くどう たかひろ

1976年生まれの自動車ライター。クルマ好きが高じて大学在学中から自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。卒業後に自動車専門誌編集部や編集プロダクションを経て、フリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジン搭載のマツダCX-5。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

工藤 貴宏
Chapter
秋田犬の人懐っこくて賢い性格をクルマのデザインで表現?
モーター駆動とエンジン駆動のいいとこどりをしたパワートレイン!
新型フィットは時代の先を行くグレード構成?
新型フィットは固定概念の打破から生まれた!?
国産コンパクト初搭載の先進運転支援装備
新型フィット VS 新型ヴィッツ(ヤリス)の行方はいかに!?

秋田犬の人懐っこくて賢い性格をクルマのデザインで表現?

といっても柴犬の姿をクルマにしたら新型フィットになったというわけではなく、柴犬の人懐っこくて賢い性格をクルマのデザインで表現したらこういうスタイルになったのだとか。たしかに、親しみやすい雰囲気を持っている。ヘッドライトもサイドウインドウのフォルムも、優しい曲線で描かれているのがいい。

たとえば先代のフィットは、なんだか「頑張っている感」みたいなものがエクステリアデザインにもあった。それはそれで悪くないけれど、新型の優しい感じもいいと思う。

ちなみに、担当のエクステリアデザイナーは現行型のシビックやシビックタイプRも担当していたのだとか。ああいった、見るからに戦闘力の高そうなバキバキのデザインから、ほぼ180度テイストの異なる新型フィットのようなゆるふわデザインまでこなせるデザイナーの幅広さと奥深さはさすがとしかいいようがない。

モーター駆動とエンジン駆動のいいとこどりをしたパワートレイン!

そんな新型フィット、パワートレインはガソリンエンジンとハイブリッドの2本立てで、ハイブリッドが主力というのは従来通りだ。しかし、その中身はかなり変わった。まずガソリンエンジンは1.5Lを廃止して、1.3Lに一本化。

いっぽうハイブリッドは、従来フィットに搭載していたハイブリッドシステムをやめ、新たに「e:HEV」という名称を付けた新タイプとしている。エンジン排気量は1.5Lで、ベースとなっているのはインサイトに搭載しているシステム。

これまでの名前でいうと「スポーツハイブリッドi-MMD」だ。エンジンは高速領域を除いて発電機に徹し、駆動力を生み出すのはエンジンで発電した電気でまわるモーター。

だからEVと同じ感覚の走行フィールを生み出し、モーターの効率が悪くなる高速域になるとエンジンが機械的に駆動輪へつながり、エンジンの力を駆動力として使うことになる。超シンプルに言ってしまえば、モーター駆動とエンジン駆動のいいとこどりをして効率を追求したユニットだ。

新型フィットは時代の先を行くグレード構成?

グレード構成も変わった。シンプルで価格重視の「BASIC(ベーシック)」、快適性を増した「HOME(ホーム)」、アクティブな雰囲気を備えた「NESS(ネス)」、そしてクロスオーバーSUVテイストの「CROSSTAR(クロスター)」の4グレードで構成。

正直に言うと「僕らのスポーティグレード「RS」はどこへ行ったの?」という気がしなくもないが、ホンダは「何を言っているんですかお客さん、もうそんな世の中じゃないのですよ」と時代の先を行く構えのようだ。

スポーティな運転を頑張る時代じゃなくて、居心地と雰囲気こそが大切というわけ。もちろん、MT(マニュアルトランスミッション)なんてあるわけがない。

新型フィットは固定概念の打破から生まれた!?

いっぽうでホンダが目指したのは「心地よさ」なのだとか。開発責任者によるとその前提にあるのが、数字を重視したクルマ作りからの脱却。実はクルマ作りは数値との戦いで、「ライバルよりもどれだけ優れている」と証明する数字とか「先代よりもこれだけ進化した」というのを示す数字が欠かせない。

しかし新型はそういうのを一切やめるという「固定概念の打破」からスタートし、それよりも「心地よさ」を重視した。特に「心地よい視界」「座り心地のよさ」「乗り心地のよさ」「使い心地のよさ」の4つのポイントを磨き上げたのだという。

それにしても驚かずにいられないのは「心地よい視界」の最たるメニューといえる前方視界だ。Aピラーの幅はなんと一般的なクルマの半分以下となる55mmで、その驚異的に細いピラーが生み出す視界の広さと言ったらまるで小田急ロマンスカーの先頭車両のパノラマ感。

斜め前方がよく見えて、交差点での右左折時から峠道でのイン側の視界までとにかくストレスがないのだ。これは凄い。はっきりいって、これだけで新型フィットを買いたくなってくる。

プラットフォームは先代からのキャリーオーバーだが、言い換えれば熟成が進んでいるし、車体構造やサスペンションなどはレイアウトも含めてかなり進化している。走り出せば速度を高めても車体の小ささを感じさせない安定感があり、タイヤがしっかりと路面を捉える感覚は相変わらず高い。

試乗したホンダのテストコースには速度を高めにして走るワインディングロードもあったが、落ち着いた挙動とドライバーの意思を邪魔しない確実なハンドリングが好印象。どこか飛びぬけて優れた特徴があるというよりも、トータルバランスの高さがフィットらしさだと感じた。

ハイブリッド車は、ガソリンエンジンをモーターがアシストするタイプだった先代から、モーター走行を主体とするタイプへ大きくチェンジしたことで、走行フィーリングは激変。モーター走行ならではの滑らかさと伸びやかさが心地いい。

国産コンパクト初搭載の先進運転支援装備

大きなトピックは、先進運転支援装備にもある。国産コンパクトカーとしてはじめて、ACC(アダプティブクルーズコントロール=高速道路でドライバーがアクセルやブレーキを操作しなくても自動的に速度を調整し、前を走るクルマに一定の車間を開けて走る)が、停止保持対応になったことだ。

渋滞中は前のクルマが停止すると自車も停止、そのままドライバーが操作しなくても停止状態を保持するのである(停止から3秒以上経過しての発進はドライバーの操作が必要)。

ライバルはマツダ MAZDA2が停止まではおこなうが停止保持はせず、来春発売するトヨタのヴィッツ改め「ヤリス」は残念ながら低速域になるとACCの作動そのものがキャンセルされてしまう。つまり、この仕掛けに関してはフィットがライバルの先を行く。

ちなみにパーキングブレーキは、SUVを除く国産コンパクトカー初の電動式。本来なら2019年内の予定だった新型フィットの発売が2020年2月まで伸びたその理由は、電動パーキングブレーキ部品のトラブルにあり、その結果として日本仕様のリヤブレーキは当初予定されていたドラム式からディスク式にアップグレードされた。

ディスクのほうがトータル性能は高いので、買う人にとってはうれしい変更だ。

新型フィット VS 新型ヴィッツ(ヤリス)の行方はいかに!?

ところで、どう考えても避けられないのはフィットとモデルチェンジのタイミングが被ってしまったトヨタ ヤリスとのガチンコ対決。ヤリスの注力された部分はとにかく走り、走り、そして走り。そのためヴィッツとはパッケージングが大きく変わって、室内は狭くなってしまった。

しかし走りは大きくレベルアップして爽快だし、MTもあるし、250psを超えるような高出力エンジンを積んだ超高性能バージョンだってある。走りありきのクルマに変身したのだ。 

いっぽうで新型フィットは心地よさ。日常に寄り添って快適であることを重視し、室内だって広いし荷室の実用性も高い。走りだってよくできている。けれど、クルマ好きとっては残念なことに、走りの楽しさに対して心躍るような雰囲気は持ち合わせていないこと。

このような対極の2台の新型コンパクト、どのような結果になるのか今から楽しみだ。
個人的には、新型フィットにタイプRとは言わないまでも、「RS」とか「タイプS」があればいいと思う。エンジンはタイで発表された新型シティに積んでいる最高出力122ps/最大トルク173Nmの1.0L 3気筒ターボに、欧州シビックで同エンジンに設定がある6速MTを組みあわせて搭載すれば楽しい仕様になりそうで、積極的に欲しいと思う。

でも、そう思うのは古典的なクルマ好きだけで、多くの人にとってはスポーティーな走りとかMTなんかよりも、新型フィットが持つ心地よさのほうが、きっと大きな魅力なのだろう。
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