新型レンジローバー・イヴォークのデザインや走行性能を徹底レビュー

レンジローバー イヴォーク 宮越孝政

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2012年の正式デビュー以来の7年間に累計80万台近くを生産、日本国内でも1万台を超えるセールス実績を上げるなど、レンジローバー・ブランドでは史上最大のヒット作となったイヴォーク。その第二世代がこの夏、日本にも正規導入されることになった。

文・武田公実/写真・宮越孝政

武田 公実|たけだ ひろみ

かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。

武田 公実
Chapter
スタイリッシュな正常進化
高級車としての資質が大幅にアップ
安心のクロスカントリー走行

スタイリッシュな正常進化

レンジローバーの初代イヴォークが、2011年に正式デビューを果たした際のインパクトは、控えめに見ても「センセーショナル」という表現が相応しいものだったと思われる。20081月のデトロイト・モーターショーに、ランドローバー名義で出品されたデザインスタディ「LRXコンセプト」が、ほぼそのままのスタイリングで生産化されたのだから、それはもう感嘆するほかなかったのだ。

さらにこののち、レンジローバーはSUVデザインに、もう一つのセンセーションを巻き起こすことになる。イヴォークとレンジローバー・スポーツとのギャップを埋める中級モデルとして、2017年にデビューしたヴェラールである。

仰々しいデザインが横行するSUVカテゴリーにあって、徹底してシンプルな面の美しさにこだわったヴェラールは、デビューイヤーの「ワールド・カー・アワード」にて、部門賞である「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を獲得。その評価が昂じて「世界で最も美しいクルマ」とまで呼ばれることになった。

そして、初めて目にした新型イヴォークのエクステリアデザインは、初代イヴォークの「小股の切れ上がった」プロポーションに、ヴェラールの美しい面構成を組み合わせた「イイとこ取り」であるかに映った。

しかし、デビュー当時の初代イヴォークと比べてしまうと第一印象のインパクトは若干ながら薄れた気がしなくもないのだが、これはこれでとても魅力的。まさしく初代から正常進化したと言えるだろう。


一方、インテリアについてはヴェラール譲りのシンプルかつ超モダンなものとされた。また今回の試乗車両では、シート/ドアパネルの表皮がイギリス製高級車の伝統である本革レザーではなく、リサイクル素材による模造スウェードやユーカリ由来のファブリックに置き換えられるなど、サステナブルなマテリアルにチャレンジ。レンジローバー・ブランドのエントリーモデルながら、新しい高級SUVへの大胆な提言が見られる。

でも新型イヴォークで最も進化したのは、そのメカニズム。SUVとして、あるいは自動車として大幅なレベルアップが図られたことと言わねばなるまい。

高級車としての資質が大幅にアップ

初代イヴォークは、2006年デビューのランドローバー・フリーランダー2から受け継がれてきたアーキテクチャをブラッシュアップして使用していた。中途で追加された2ドアオープンモデルを含め、そのキャパシティに不満を感じたことなど無かったのだが、完全新規設計された「プレミアム・トランスバース(横置き)アーキテクチャ(PTA)」を持つ新型イヴォークのシャシーは、まるで別次元のものと言えるだろう。

フロアの剛性感が格段にアップした上に、サスペンションのしなやかさも向上したことから、クラスが一回りも二回りも上がったような安定感と高級感を見せつけたのだ。

新型イヴォークでは、各パワーユニットの最高出力が車名に反映されることになっており、2リッター直噴ガソリンターボを搭載する「P200」と「P250」、そして48Vマイルドハイブリッド機構を組み込んだ「P300」。さらに2リッター・インジニウム・ディーゼルを搭載する「D180」がラインナップ。この日メインで乗せていただいたのは、最高性能版のP300だった。

このP300は「R-ダイナミック」と名づけられたスポーティな仕立てのモデルながら、乗り心地は極めて秀逸。荒れた路面でもショックを巧みに和らげるとともに、先代では若干気になったロードノイズも、当代最新の高級車として充分及第点が付けられるレベルに抑えられていた。

加えて、P300の高級感を決定的なものとしたのは、スムーズで力強いトルク感である。この日比較対象として少しだけ走らせたP2501840kgに対して、P3001950kgの車重となるにもかかわらず、勾配強めの登りワインディングロードもグイグイと加速してゆく。しかも、エンジン音を荒げることなくスピードを乗せてゆく高級なフィールには、1500rpmから2000rpmまでは電動モーターでアシスト、そこから上の回転域はターボチャー過給に移行するという48Vマイルドハイブリッドが大きな効力を発動しているに違いないと感じたのである。

安心のクロスカントリー走行

今回の新型イヴォーク試乗会では、別会場でターボディーゼル版、D180を走らせる機会にも恵まれた。こちらのステージでは、アスファルトの駐車場にスチール製の台座を置いてモーグルを再現したコースを特設。模擬オフロード走行を行うことができた。

初代イヴォークにはレンジローバー伝家の宝刀、エンジン、トランスミッション、トラクション、サスペンションなどの設定を路面や走行状態に応じて最適制御、着実なトラクション性能を得る走行自動制御システム「テレインレスポンス」が組み込まれていたが、新型では新世代の「テレインレスポンス2」に進化。さらに綿密な制御が行われるようになったうえに、走行モードは7つにまで増やされた。

 

通常ならば、ほとんどの路面状況でも「オートモード」にて対応可能とのことだが、せっかくなので今回の模擬オフロード走行では「泥/轍(わだち)モード」にセットしてみることにした。

ゆっくりとコースに進入すると、まず感じたのはターボディーゼルの特質である豊かなトルクである。歩くような速度域でも台座をしっかりととらえ、着実に登ってゆく。また、試乗日は雨だったため金属製の台座はかなり滑りやすい状況にあったものの、「テレインレスポンス2」が力を発揮したのか、ホイールスピンは最小限。挙動を乱すような事態に陥ることはなかった。

そしてこのような状況下で効力を見せたのが、車両前端と左右のドアミラーにセットされたカメラの映像から、進行方向下部の状況をリアルタイムで映してくれる「ドライブアシスト」機能。あるいは左右フロントタイヤ以外のノーズセクションが、すべて透明になってしまったかのごとくバーチャルに映し出される「クリアサイト グラウンドビュー」。

ギミックと思われがちなこれら先進アシスト装備のおかげもあって、一定の道幅さえあればどこへでも進入していけそうな安心感は、乗用車由来のSUVではなく、本格的クロスカントリーカー出身であるレンジローバーの真骨頂と言うべきであろう。

SUVはいわゆる「ブーム」の域を軽々と飛び越え、今や乗用車の一ジャンルとして完全定着した感の強い。そのリーディングブランドであるランドローバー/レンジローバーが、激戦区のコンパクトSUVカテゴリーに送り込んだ新型イヴォークは、まさしく王道と言える一台。このあともヒット街道を驀進するのだろうな……、と得心するには充分なできばえと感じたのである。

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