日産 スカイラインGT-R「R32・R33・R34」を徹底比較!

2019 スカイライン GT-R

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2019年は日産スカイラインGT-Rが誕生して50周年になります。初代スカイラインGT-Rは、「ハコスカ」の愛称で親しまれた3代目スカイラインをベースに「レースで勝つため」に生まれたスペシャルバージョンでした。ご存知のようにスカイラインという車名は、もともとプリンス自動車のブランドでした。

3代目スカイラインは、プリンス自動車が日産自動車に吸収合併されてから生まれた、最初の“日産”スカイラインなのです。最初の「GT-R」に与えられたのは、レーシングエンジンさながらの4バルブのDOHCヘッドを持つ2.0L 直列6気筒「S20」型エンジン、最高出力160PSは現代の基準では大人しく思えますが、当時としては「リッター80PS」というのは驚異的なスペックだったのです。

この初代スカイラインGT-Rは当初は4ドアベースでしたが、途中で2ドアベースとなり走りをレベルアップ。その名前は、4代目スカイラインにも心臓部ごと受け継がれましたがオイルショックなど社会情勢の影響もあって、いったんはGT-Rの文字は日産の歴史から消滅します。

文/写真・山本 晋也

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也
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エンジンは「RB26DETT」で共通
駆動系が進化、R34は6速MT搭載
最新モデルの半額以下で売っていた

エンジンは「RB26DETT」で共通

初代スカイラインGT-Rの誕生から20年を経た1989年、8代目スカイラインにおいてスカイラインGT-R(BNR32型)は復活します。当時の日本はバブル景気の真っ最中ともいえる状況で、イケイケムード。

2.0Lエンジンと5ナンバー(小型車)サイズボディーの組み合わせを基本としていたスカイラインに、ワイドボディーと2.6Lターボエンジンを組み合わせたスカイラインGT-Rを十分に受け止められるだけ市場は熟成していました。この2.6Lエンジンこそ、ここから続く第二世代GT-Rにおいてマストアイテムとなる「RB26DETT」型エンジンです。
丈夫な鋳鉄ブロックの直列6気筒エンジンはパラレルタイプのツインターボを組み合わせることでパワーとレスポンスを両立。280PS/36.0kgmというスペックは、当時としてはインパクトのあるものでした。

そのパワーを伝えるのは「アテーサET-S」と名付けられたトルクスプリット式のフルタイム4WD。コーナリングを邪魔しない初めての4WDとまで評価されたこのシステムは、第二世代GT-Rにおける必須デバイスとなりました。

駆動系が進化、R34は6速MT搭載

その後、1995年に9代目スカイラインをベースとしたBCNR33型スカイラインGT-Rが誕生します。RB26DETT型エンジンは過給圧を高めるなどのリファインによって最大トルクを37.5kgmにパフォーマンスアップしています。しかし、BCNR33型での注目点は駆動系の進化です。

GT-Rの上級グレードVスペックに採用された「アテーサET-Sプロ」では後輪に駆動力を分配するディファレンシャルに電子制御の「アクティブLSD」を採用。前後の駆動力配分に加えて、より緻密な制御を可能としたのです。
1999年に誕生したのが第二世代GT-Rの最終仕様といえるBNR34型です。9代目スカイラインに対して、ボディをコンパクトに引き締めた10代目スカイラインの素性の良さを活かしたGT-Rでは、まずエンジンが進化。

スペック自体は最大トルクが40.0kgmになったことが目立つくらいですが、ボンネットを開けてエンジンを眺めただけでも点火系が一新されていることが確認できます。

また、ターボチャージャーは、ボールベアリングタイプとなり、過給圧も高められているのです。なお、駆動系はBCNR33に続いて「アテーサET-Sプロ」がVスペック系に与えらました。大きな違いはマニュアルトランスミッションがゲトラグ製の6速になったこと。この6速MTはBNR32やBCNR33に流用するオーナーも少なくないと聞きます。

最新モデルの半額以下で売っていた

ふたたび、スカイラインGT-Rの系譜がいったん途絶え、2007年にスカイラインから独立した「GT-R」というモデルとして復活します。いわゆる第三世代のGT-Rです。このモデルにおいてもトルクスプリット型のフルタイム4WDというGT-Rらしいメカニズムを採用しています。

エンジンは3.8L V6ツインターボへと成長、駆動系についてもトランスミッションをリアディファレンシャルと一体化したトランスアクスル・レイアウトにするなど、スポーツカー専用に設計されたシャシーを与えられています。伝統に従い、R35という型式を与えられた現行GT-Rは、やはり歴代モデルと同様に毎年のように進化しているのも注目です。

2020年モデルのGT-R NISMOでは専用ターボチャージャーなどによりさらなるパワーとレスポンスアップを果たしているといいます(予約販売は2020年5月からの予定)。

そんな歴代GT-Rは、パフォーマンスだけでなくメーカー希望小売価格も立派に成長。以下に、代表的なグレードをピックアップして並べてみましょう。
●歴代GT-Rメーカー希望小売価格(税抜き)

1969 PGC10:150万円

1973 KPGC110:163万円

1989 BNR32:445万円

1995 BCNR33:529万円(Vspec)

1999 BNR34:559万8,000円(Vspec)

2007 R35:719万4,444円

2019 R35:984万4,000円
2019年基準でいえば初代スカイラインGT-Rの150万円というのはリーズナブルに思えますが、当時の大卒初任給は3万円。現代では大卒初任給がおよそ20万円であることを考えると1,000万円に相当する価格だったのです。

もっとも、最新のGT-Rの価格を見れば1,000万円オーバーですから、初代スカイラインGT-Rの価格感は現代のGT-Rに通じるものがあるといえます。

ちなみに第二世代GT-Rが隆盛を誇った1990年代の大卒初任給も20万円程度でした。つまり、BNR32型は、歴代GT-Rにおいてもっとも手の届きやすいGT-Rでした。実際、ほぼ日本国内だけでしか新車販売されていなかったBNR32型ですが、4万3,934台も作られています。ちなみに、BCNR33型は1万6,520台、BNR34型は1万2,175台でしかありません。

BNR32型こそ、GT-Rを身近にした特別な存在であったと言えるでしょう。
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