実は10年前!?部品メーカーが造った暴走しないタイヤ止めとは

わとまる 2019

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最近の自動車には誤発進抑制ブレーキなどが採用されていますが、そういった安全装備を備えていない車でのアクセル・ブレーキ踏み間違いの事故が減りません。そんな中で、いま再び10年前に開発されたある装置が再び注目を集めています。

文/写真・山崎 友貴
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自動車部品メーカーが造った新機軸商品
事故防止に効果がある装置だが問題も…
車両に後付けする誤発進抑制装置も登場

昨今、巷で問題になっているのが、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故です。特に、高齢者のペダル踏み間違いによる事故が深刻化しています。交通事故分析センターによれば、こうした事故は年間で7,000件以上発生しており、全国で毎日約21件の事故が起きていると言います。

自動車部品メーカーが造った新機軸商品

同センターの2018年の発表データによれば、踏み間違い事故においては75歳以上のドライバーの事故率が高いことがわかりました。また非高齢者でも初心者の駐車場での事故率が非常に高く、全年齢層において駐車場での発進時、直進時の事故が多いという結果が見えてきました。
こうした事故の多くは、誤発進防止装置が装備されていない車両が圧倒的に多く、事故防止には様々な課題が出てきています。こうした事故は10年ほど前から問題視されるようになりましたが、同時期に愛知県にある自動車部品メーカー・奥野工業株式会社が、ペダル踏み間違いよる事故防止装置を発売しました。

「わとまる」と名付けられたこの装置は、駐車場の車止めにローラーが付いた構造になっています。この装置を造った奥野工業は、普段は油圧ダンパーなどを製造していますが、駐車場発進時のペダル誤操作による事故発生率が非常に高いことに注目し、新規事業の一環としてわとまるを開発しました。

事故防止に効果がある装置だが問題も…

わとまるのローラーは、普段は回転しないようにできていますが、タイヤの回転によって70〜80kgf・mの荷重がかかると、ロックが外れてローラーが回転。タイヤの回転を吸収し、タイヤ止めよりも前に行かない仕組みになっています。

ただし、4WD車のように四輪に駆動力がかかる車の場合は、前進・後進してしまうため使えません。またFF車の場合は前向き駐車、FR車の場合は後ろ向き駐車を厳守しなければ正常に装置が働きません。
こうした装置の特性をユーザーが正しく認識できるかという問題に加えて、設置する側には価格という壁も立ちはだかります。一般的なコンクリート製のタイヤ止めが700〜800円程度という価格に対して、わとまるは7万円。コンビニなどの経営者にとっては、採用したくてもコストの点で足踏みしてしまうという現実もあるようです。

これまでの10年間で店舗や児童関連、障害者関連の公共施設など、約200台ほどの設置をしてきたということですが、普及という言葉にはほど遠いというのが実情です。

車両に後付けする誤発進抑制装置も登場

昨今ではデンソーやサン自動車工業といった自動車関連メーカーが、後付けタイプの誤発進抑制装置を発売しています。価格は3万円から6万円となっており、運転に自信がない人が装着するには比較的手頃な装置と言えます。

ただし、わとまるも同様ですが、こうした装置が普及していくには、ドライバーをはじめ社会全体の安全意識の向上という要素が欠かせません。

奥野工業も大手コンビニチェーン本社などに導入を働きかけましたが、個人フランチャイズ経営が中心となっていることからコスト面を重視し、やはり消極的な回答だったと言います。また自治体なども装置への関心は高いものの、どの公共駐車場でも積極的に導入、とまではいかないようです。設置が多くなれば製造コストも下がるわけで、これに比例して、さらに普及が加速する可能性があります。
昨今、ペダルの誤操作による事故がさらに問題化していますが、自動車メーカーが技術によって改善できる範囲にも限界があります。また誤発進抑制装置を備えた車が社会全体に行き渡るには、まだまだ時間を要するからです。今後、社会インフラとしての事故抑制の機運が高まらなければ、こうした事故はなかなか減らすことができないかもしれません。
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