新型 BMW 3シリーズ 登場!3シリーズが示す”ベンチマーク”とは?

BMW 330i Mスポーツ 鈴木ケンイチ

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BMWの新型「3シリーズ」の販売が2019年3月9日よりスタートした。

正直、今のブームの中心はSUVとなるが、それでも「3シリーズ」は、BMWの看板モデルとして非常に高い注目を集めてきた存在だ。

ここでは、その新型モデルの内容を紹介しよう。

文/写真・鈴木 ケンイチ

※ 2019年4月時点

鈴木 ケンイチ

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)

鈴木 ケンイチ
Chapter
3シリーズが"特別"な理由
BMWの"最新"を集めた渾身の作品
洗練を感じさせる大人のスポーティ

3シリーズが"特別"な理由

BMWの「3シリーズ」は、自動車業界にとって特別なモデルだ。過去の「3シリーズ」の歴代モデルは、どれも人気が非常に高く、このクラスにおいては圧倒的なまでの大きな存在感を放っていた。

「このクラス(サイズ・価格帯)のスポーティ・セダンならば3シリーズが一番」と見なされていたのだ。そのため、ライバルたちには次世代の新型車開発の目標として、「3シリーズ」は“ベンチマーク”と呼ばれることになる。

ライバルとなるのはメルセデス・ベンツ「Cクラス」でありアウディ「A4」であり、日系メーカーのレクサス「IS」やインフィニティ「Q50(日本名:スカイライン)」だ。

また、BMWにとっても「3シリーズ」は特別な存在だ。販売の主力というだけでなく、現在のBMWの礎を築いた最大の功労者であるからだ。話は、第二次世界大戦終結のころまでに遡る。敗戦に伴うドイツの東西分割によってBMWは主力工場を失い、さらに再建を目指して開発した新型高級車の売れ行きはさっぱり。

ライセンス生産した超小型モビリティである「イセッタ」のヒットによって、ようやく生き永らえていたが、あまりの苦境にメルセデス・ベンツに吸収される話が出るほどであった。
そんな苦境を救ったのが、「3シリーズ」の起源となる「1500」だ。これは1961年に誕生したミドルクラスのセダンで、BMW内部で「ノイエ・クラッセ(ニュー・クラス)」と呼ばれていた。

当時としては先進的な技術を数多く採用した「ノイエ・クラッセ」は、スポーティな走りが大いに受けて大ヒットモデルとなる。その後継モデルである「02シリーズ」もヒットモデルとなり、当然のように1975年から始まる「3シリーズ」も高い人気を維持。屋台骨としてBMWを支え続けてきたのだ。

BMWの"最新"を集めた渾身の作品

そんな最重要モデルである「3シリーズ」。当然のように、その内容は、非常に力の入ったものであった。プラットフォームは新世代にリニューアル。ホイールベースで+40mm、フロント・トレッドで+43mm、リヤ・トレッドで+21mmと大幅にサイズアップしながらも、重量は約55㎏も軽量化され、重心は10mm下がっている。

伸びやかで力強いスタイルになりながらも、軽く、低くなって走行性能をアップしている。デザインも新世代のコンセプトを採用し、より立体的で水平方向への表現を強化。低重心かつアグレッシブなものとなっている。

インテリアにも最新のHMIを採用。フルデジタルのメーターやタッチ機能付きの大型ディスプライがドライバーの前に備え付けられている。
また、BMW初となるAI活用型音声入力機能を採用。BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントと呼ばれる新機能は、「OK、BMW」をトリガーに起動し、会話に近い形で、オーディオやナビなどの操作を可能とする。

運転支援システムも最新型を採用。日本初採用となる3眼カメラ式のシステムを搭載しており、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)時などのレーン・キープ性などを向上させている。

振り返ってみれば新型「3シリーズ」の内容は、「最新のデザイン」「最新のインフォテイメント」「最新のプラットフォーム」「最新の運転支援」といったもの。BMWが現在、持っている最新の技術を満載した、力の入った渾身の作品と言えるだろう。

洗練を感じさせる大人のスポーティ

では、肝心の走りはどんなものであろうか。試乗したのは、上級グレードとなる「330i M Sport」だ。現在のところ「3シリーズ」は、「320i」と「330i」の2モデルを基本に、それぞれに装備の異なるグレードを用意する。

搭載するエンジンは同じ直列4気筒2リッター直噴ターボ・エンジンだが、チューニングが異なっており、「320i」が最高出力135kW(184馬力)/最大トルク300Nm、「330i」が最高出力190kW(258馬力)/最大トルク400Nmとなっている。

トラスミッションは、どちらも8速AT。パワートレイン以外のインフォテイメント系や運転支援系は、2モデルの内容はほぼ同様だ。

試乗は高速道路を含む一般市街地で、ワインディングやサーキットは含まれない。普通のドライバーが日常で使うというシーンでの試乗と思えばいいだろう。まず、気づいたのは、その落ち着いた動きだ。“スポーティ・セダンの代表格”というイメージからすれば、物足りないと思う人がいるかもしれない。

しかし、速度域を上げていくと、ナーバスな動きをするクルマは楽しさよりも疲れの印象が強くなる。そういう意味では、最新の「3シリーズ」は長時間の走行を苦にすることはない。ただし、動きが緩慢なわけではない。しっかりと微小舵から反応もするため、ドライバーの意思に遅れることはない。

ナーバスではないのに、ドライバーの意思にダイレクトに応えるというのは相反する部分が多いのに、それをしっかりと実現させるのが、さすが「3シリーズ」と言えるものだ。
また、直列4気筒のエンジンは、おとなしい時と元気な時の差が大きくメリハリあるキャラクターだ。ゆったりとクルージングしたいときは、存在感を消して静かであるが、さっとアクセルを深く踏めば、瞬時に最大400Nmもの強力なトルクを発生させる。メーター内にトルク表示が出るのも珍しい部分だろう。

元気いっぱいに走りたい人には、実に申し分ないレスポンスとパワーで応えてくれるのだ。スポーティだけど、やんちゃじゃない。大人の洗練されたスポーティなのだ。ちなみに、258馬力の「330i」は、相当に速い。

スポーツカーと言っても過言ではないだろう。ただし、“スポーティな味付けだけで十分”と考えるなら、184馬力の「320i」でも満足できるはず。コスパ的には「320i」がおすすめである。最先端のインフォテイメントと運転支援を備えつつも、走りの面でも、“洗練”という価値を提示する。それが新型「3シリーズ」であった。
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