専用設計!エンジンは手作業!なのにR35 GT-Rはなぜ安いのか?

日産 GT-R 栃木工場 2015

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クルマ好きなら誰もが知っている「R」のバッジを付けた日産のスポーツカー、GT-R。欧州の高級スポーツカーの代表格である「ポルシェ 911ターボ」と同格以上の動力性能・耐久性・実用性を兼ね添えながら、価格は911の2分の1ほどの超破格のプライスで世界中から注目を集め、数多く販売されています。

1/100秒を争うレーシングカーのエンジンと同じく極小のチリすら侵入を許さず、温度と湿度を一定に保たれたクリーンルームにてエンジンが組み立てられているGT-Rが、欧州の高級スポーツカーと比較してリーズナブルに販売できるのは、なぜでしょうか?

文・栗原 淳

栗原 淳|くりはら じゅん

大学在学中に自動車ライターデビュー。ライター開始当時からモータースポーツのレポート、レーシングゲームやミニカーといった趣味性が強い情報を中心に執筆。最近では「グランツーリスモ」をはじめとしたeSports関係の記事をメインに執筆する傍らで自身もeSports大会に出場したり、イベント企画なども行っている。クルマ以外にもPC・スマホといったガジェット系の記事も手掛けることもある。愛車は初代スバル・インプレッサ WRX TypeR STiバージョン5。

栗原 淳
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秘密は「混流生産」
組立工程の精度を会得した作業員にも注目

秘密は「混流生産」

GT-Rの開発責任者である水野 和敏氏がメディアインタビュー中にコストの話題でよく言う「混流生産」。簡単にいうと、複数のモデルと生産ラインを共有して量産体制を整えているということです。

特にGT-Rクラスのような高性能モデル、もしくはプレミアムモデルは専用部品や独自の工程があったり、更により高い精度が求められるということで専用の生産ラインを設けることは珍しいことではありません。

ちなみにGT-Rが生産されている栃木工場の1ラインでは、スカイライン・フェアレディZを含み、1日約200台が生産されていますが、GT-Rは最大でもそのうちの1割の20台しか生産されていません。

一日に極少数の生産量だと人件費やエネルギーコスト云々を考えてしまうととんでもない値段で販売しないとモトが取れないです。

水野氏によると、もし独自の生産ラインだったら欧州のライバルと同じく2000万オーバーの値段を付けないと商売にならないとのこと。つまり、混流生産方式を取り入れたことでコストを半減させたのです。

組立工程の精度を会得した作業員にも注目

改めてこの生産方式は、組立工程が比較的近い製品同士でラインを共有し、オートメーションを用いて各製品独自の組立工程を同一ライン上で行えるようにしています。この方式を採用するには製品設計段階で混流生産で生産することを意識していないと難しいのです。

また、車両全体の組立の段階で各ユニットが「はめ込む」ぐらいにモジュール化されていなければならないのも、この生産方式で求められるポイントです。

更に組立工程を行う作業スタッフの意識アップも大事で、むしろここで躓いてしまうと、この方式は成り立たないのです。

GT-Rという特別なクルマの生産を任され、高い精度とスピードが常に要求されているという意識を常に持ち続ける必要があります。

結果的に、GT-Rの10倍近く多い量産車と同じスピードとGT-Rレベルの組立工程の精度を会得した作業スタッフのお陰で、GT-Rのコストが削減されただけではなく、ラインを共有する他車種の生産精度が向上し、日産のブランド力そのものが強化されたとも言えるでしょう。
それだけではなく、GT-Rの開発中に様々なサプライヤーと何度も何度も打ち合わせを重ね、欧州のライバル勢以上の精度と性能を持ったパーツ供給を結んだ開発陣の執念があっての結果です。

故にGT-Rはリーズナブルな値段も相まってたくさん売れ、しっかりと利益を出せるので値段が抑えられるのです。

R35 GT-Rは、年々細かな改良を行い今なお世界中のクルマ好きの人気を集めています。ライバルが続々と新型モデルを出しているなかで日産はGT-Rの未来をどう考えているのでしょうか?

この欧州勢にはできなかったリーズナブルさを維持したものを開発してほしいところですね。
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