ドイツ車に多い「形鋼ヒンジ」と国産車に多い「プレス製ヒンジ」、その違いとは?

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日本車と欧州車の違いについては多くの自動車ファンが指摘するところ。どちらが良いかというのではなく、同じ量産自動車なのに思想の違いがそこかしこに見えていて、なおかつそれぞれがグローバルでは同様に売れているのも興味深い。そうした違いの中で、マニアが指摘するのがドアを支えるヒンジの製法だ。日本車は鉄板を成形したプレス製が多く、欧州車の中でも、とくにドイツ車では鋳造・鍛造の形鋼ヒンジであることが多い。その違いはどこにあるのだろうか。

文・山本晋也
Chapter
欧州車には形鋼ヒンジが多い
プレス製だから弱い時代ではない
組み立て工程がヒンジの違いを生む

欧州車には形鋼ヒンジが多い

クルマに限らずドアを開けるには、その付け根部分に支持できる稼働部分が必要だ。蝶番、ちょうつがい、などとも呼ばれる部品だが、自動車業界では「ヒンジ」と呼ぶことが多い。

そのヒンジについて、ドイツ車ではがっしりとしたブロック状の形鋼ヒンジとなっていることが多い。一方、国産車の主流はプレス成型だ。なお、形鋼ヒンジのことを鋳造製ヒンジと呼んでいる人も少なくないようだが、実際には鍛造であったり、削り出しで作られていることもある。

プレス製だから弱い時代ではない

国産車の多くがプレス製であり、比較すると形鋼ヒンジのほうが剛性面で有利に感じるものだが、プレスといっても単純な型抜きではない。たとえば、ビードと呼ばれる凹凸加工を施すことで強度を高めることはできる。

かつてはプレス製のドアヒンジは経年劣化で微妙に曲がってしまい、ドアの取り付け角度が斜めになってしまうということもあったが、いまどきのプレス技術でそうした強度不足というのは考えづらい。

なお、欧州車でもフランス系のブランドはプレス製ヒンジが多く、アメリカ車もプレス製ヒンジを多く見かける。グローバルにはプレス製ヒンジが主流といえる。その理由としては目立たないように処理しやすいという部分もあるだろう。

組み立て工程がヒンジの違いを生む

では、なぜ国産車などはプレス製ヒンジが多く、ドイツ車には形鋼ヒンジが多くみられるのだろうか。ひとつの要素として、生産における組み立て工程の違いに注目したい。

形鋼ヒンジの場合は、ボディにドアを取り付ける際に、上から差し込むようにする。一方、プレス製ヒンジではドアを水平に動かしてボディに取り付け、ピンを刺して固定する。生産ラインの手間としては形鋼ヒンジのほうが有利なので、切り替えたほうがいいようにも思えるが、そのためには生産ロボットなどを一新する必要がある。多品種の混合生産が求められる現在において、形鋼ヒンジとプレス製ヒンジを混合させることは難しいだろう。

そうしたレガシー的な経緯もあって、ドイツ車は形鋼ヒンジを使い続けるし、国産車はプレス製ヒンジを使い続けているといえる。もちろん、これだけでヒンジの選定が決定されているわけではないので、あくまで視点のひとつとして参考にしてほしい。

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