高性能エンジンオイルの代名詞「100%化学合成」「エステル」って一体何?

高性能エンジンオイルの代名詞「100%化学合成」「エステル」って一体何?

MOTUL

――エンジンオイルを大きく分けると、低価格な鉱物油と値段の高い化学合成油に分けられると思います。鉱物油は原油を精製すれば得られると何となくわかるのですが、化学合成油とは一体何からできているのでしょうか。

「100%化学合成油も大元を辿ると油田に行きつきます。原油を温めたりして粘度別に分けたのが鉱物油です。化学合成油は、それに化学反応を施して形を作り変えたものとお考えください。ですから、ベースオイルの品質によって、鉱物油なのか化学合成油なのかの違いになります。

なぜ100%化学合成にするのかというと、目的にあったものにしたいから、目標となる性能に近づけたいからです。また、ヨーロッパの最新の規格ですと、100%化学合成でないと規格に通りません。つまり鉱物油は規格外となってしまうのです。

そういうこともあって、お使い頂く方から見て100%化学合成という文字を見たら、わざわざその性能を出すために作ったものだと思っていただければと思います。」

「また100%化学合成というと、全部化学合成物質でできているかと思っている人がいらっしゃいますけれど、そうではありません。添加剤まで含めると鉱物油ベースの添加剤もありますので。また製造工程上、どうしても入ってくるものもあります。でも性能には全く問題がありません。」

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▶︎販売店に並ぶMOTULのエンジンオイル(撮影協力:オートバックス246江田店)

――では低価格な鉱物油はよくない、ということはありますでしょうか。

「鉱物油だからダメということはありません。使ったところでエンジンが壊れることはありませんし、ご心配なくお使いいただけます。ただどれだけ安全マージンがありますか、といったところで大きな差が出てきます」

 
――高級エンジンオイルを入れた方が、交換時期が伸びるということはありますか?

「オイルが劣化するという観点でいえば高級オイルも鉱物油も同じです。メーカー規定のエンジンオイル交換サイクルよりも早く交換することがエンジンにとって優しいことになります。メーカー規定の交換距離というのは、そこまでいっても壊れないという意味であって、必ずしもベストコンディションという意味ではありません(笑)」

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▶︎量販店で販売されているJ-01(写真は0W16)


――御社には「J-01」というエンジンオイルと「300V」と、主に2つのグレードのエンジンオイルが量販店に並んでいます。特に300Vシリーズは高級エンジンオイルとして知られていますが、J-01とはどのような違いがあるのでしょうか。

「J-01は量販店向けの一般ユーザー向けの商品になります。特にMOTULというとモータースポーツのイメージが強いですけれど、モータースポーツをやられない方にその技術をフィードバックしたオイルで、公道向けとなります。

300Vは純粋にレース向け、車を趣味とする人向けですし、長く大事に乗りたい、車を愛する人に向けた商品になります。特に出力向上と耐久性の向上を主に開発した商品になっています。」

「高級エンジンオイルが一般的なエンジンオイルと異なるのは狙っている性能が違います。特に300Vはモータースポーツのような、高い負荷でエンジンが長い時間使われるような状態でも、エンジン側にダメージがおきない、さらに出力が取ってこれるようになっています。そこに手間暇がかかっています。

J-01はどうかというと、車が街のいかなる状況においてもエンジンにダメージを与えない。ではモータースポーツに持っていったとしたらどうなるかというと、エンジンが壊れることは少ないけれど、出力が得られなかったり、部品の摩耗が進んだりすることはありえます。それは役割が違うと考えて頂ければと思います。」


――では、300Vシリーズは一般的な街乗り用途では意味がないのでしょうか。

「街乗りで300Vはオーバースペックですね。でも人って街乗りで踏みたくなるではありませんか(笑)。たとえばETCゲートを超えてアクセルを踏むと、スロットルが開いてエンジン回転数が上がりますが、エンジニアリングの面で見ると、油がオイルパンからオイルポンプで吸い上げられて、細いギャラリー(エンジン内の油道)を通り上まで行く。それはそれなりに時間がかかります。

エンジン回転数が上がっているのに充分な油量があるかというと、それはわからないんです。そういう意味で、安全率は300Vの方が高いのです。オーバースペックではあるけれど、のりしろはいっぱいあると思います」

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――300Vシリーズの容器には「エステル」が入っていると書かれています。そのエステルというのは一体どういった物質なのでしょうか。

「エステルは1971年にMOTULが世界ではじめてエンジンオイルに配合した物質で、磁石みたいな分子と思っていただければと思います。主な原料はヤシ油で、それをアルコールと酸にして、それぞれのいいところを合成して作ります。金属にくっつきやすいため、上手に使うと金属の表面について摩擦係数を減らすことができるため出力が上がると思っていただければと思います。

また熱に強くスラッジができにくいため、エンジンを綺麗に保つことができます。よくレースなどで300Vを使われている方から『エンジンオイルは汚れるけれど、エンジンは綺麗だね』と言われます。それはエステルがスラッジを取り込むからです。エンジンオイルは黒くなるのが当たり前で、相手側には残さないことが大切です。それがエンジンオイルの目的でもありますから。」

「現在では色々なブランドがエステルを配合していると思いますが、エステルは逆に上手に使わないとゴムが伸びたり、ガスケットが劣化するなどの弊害があります。また、中には加水分解といって、水が入ると酢の成分が出てくるものがあります。

かつてはエステル入りのオイルを使ってそのままほっといたら、クランクシャフトがサビだらけになった、といったこともあったそうです。私達はそういった適合性を試験してから出しています。実は今も社内でやっていますよ(笑)」

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――MOTULというとモータースポーツのイメージがとても強いです。実際に日本のレースシーンで300Vは使われているのでしょうか。

「同じ物を使われているところもありますし、違うところもあります。スーパー耐久はほとんど市販の物をお使い頂いていると思います。ですがスーパーGTの場合は、エンジンそのものが市販されていないエンジンですので、メーカーと共同で性能部品として開発しています。

MOTULがレースにこだわるのは、そこで得た知見が、新しい市販向け商品にフィードバックできるからです。厳しい環境でなければ技術は進歩しないのです。」

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