運転に合わせて初音ミクが喋るアプリ、Hondaの「osoba」が誕生した理由とは?

osoba(オソバ)(栗原祥光撮影)

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Hondaは、「初音ミク」の声でドライブがより楽しくなるiPhone用アプリ「osoba(オソバ)」をドワンゴと共同開発。2019年1月11日午後を予定としてダウンロードサービスを開始する。同社軽自動車「S660」とインストールしたiPhoneをUSB接続することで、運転状況に合わせて初音ミクが喋るというこのサービスを早速試してみた。

文・栗原祥光
Chapter
クルマが喋る!? iPhone用アプリ「osoba(オソバ)」が誕生!
「osoba(オソバ)」の開発経緯は?
初音ミクと喋りながら楽しいドライブ

クルマが喋る!? iPhone用アプリ「osoba(オソバ)」が誕生!

▶︎使い方はS660とiPhoneをUSBで接続。アプリを立ち上げるだけです。

接続は「osoba」をインストールしたiPhoneとS660をUSBケーブルでつなげるだけ。アプリを起動すると「今日はどこに行くんですか?」と初音ミクが語り始め、運転中に例えば右に曲がろうとすれば「右です、右です」、運転中停車すれば「信号待ちかな?渋滞かな?」と話かけてくる。

さらに「時速ミク!いや、時速39キロぐらいですね」といったユニークなものから、安全運転の啓蒙といったもののほか、季節や時間、気温、そして場所によって変化する。さらに「そろそろオイル交換ですね」「ブレーキフルードを交換しましょう」といった、自動車を維持する上で忘れがちな「気付き」も与えてくれる。

物を言わないクルマが、そういった形で自身の状態を伝えてくるのは驚きだ。

ボーカロイドである初音ミクだから、歌も歌ったりする。時折このアプリのために作られた楽曲が流れるのだが「ちょっと歌っちゃおうかな」というような前置きをしてから流れるから、それもまた面白い。

話す頻度は約10~20秒に1回程度。ほとんど喋りっぱなしなのだが、そのタイミングが実に自然なうえに、1回の運転でセリフが重複しない工夫がなされているため飽きることがない。まるで車が独り言を言っているような感覚だ。そして利用後はなぜか初音ミクが好きになってしまう魔力を秘めている。

このアプリは、車両と接続していない状態でも利用できる。アプリが起動していた時点のガソリン残量や総走行距離といった車両の情報が手元で分かるほか、過去のドライブルートや、その時に初音ミクが喋ったセリフなどが記録として残されている。離れていても、車の状態がわかるだけでなく、車との思い出を振り返ることができるアプリなのだ。

「osoba(オソバ)」の開発経緯は?

▶︎S660からの車両情報とiPhoneのGPS情報を元に、初音ミクが色々なメッセージを喋ります。

さて、どうしてこのようなアプリを提供しようと思ったのだろうか。担当者の1人、本田技研工業の橋本さんは、「お客様と販売店を繋げる接点が作れないのかなと考えていました。色々なアイデアの中から、スマートフォンのアプリケーションと自動車を繋げたサービスがよいのではないだろうか」と思いついたという。

その中で「何か新しいことをしようとすると、自動車メーカーはどこも同じようなことを考えてしまいます。でもそれでは面白くない。そこで自動車業界と最も遠い業種の中で、方向性が同じ企業と手を組もうとした時、ドワンゴさんと一緒にやってみようという事になりました」。

いっぽう、本田技研工業から話を受けたドワンゴの鹿島さんは「我々のチームはモバイルの音楽配信をはじめとするコンテンツサービスを提供する部門なのですが、今後のプラットフォームの拡大などを考えていた時に、これから進化して行くであろうクルマという新しいプラットフォームに魅力を感じ、一緒に取り組みを始めてみようと思いました」と協業を決断。2016年にプロジェクトはスタートした。

その後、1年ぐらい企画会議が繰り返された。「我々はクルマのことがわからない。ホンダさんはアプリ開発等について勉強されながらという形からスタートしました。ですので、企画の時間が長かったのです」(ドワンゴ・鹿島氏)という。

異業種ゆえ、まずは相互理解から始まった。その中で、車両が喋るというアイデアが浮かび上がった。車両を喋らせるためには、車両の情報を何らかの形で取り出す必要があったが、当時のホンダ車で唯一USB経由で車両情報が取り出せるのはS660だけ。こうして車種は決定した。

次は誰の声で喋らせるかだ。「声優さんをはじめ、色々なキャラクターを検討しました。その中で、全世代で認知度と好感度が高いこと、未来的であること、そして実際にサンプルなどを作っていくうちに、この企画の趣旨やS660にマッチしているということで初音ミクがいいのではないだろうか、という結論に達しました」(ドワンゴ・鹿島氏)という。

企業コラボの多くが初音ミクのキャラクターを使って何かをする、というのに対して、やりたいことをスムースに伝えるのに初音ミクを選択した、という形だ。
▶︎歌は2曲入っています。時々再生されます。

こうして初音ミクを用いたアプリの開発が始まった。プロトタイプが完成したのは2017年11月。誰もが仕組みはわかっていてもクルマが喋るという事に驚いたという。

ドワンゴの行田さんは「もちろん課題はありましたが驚きましたね。私達は基本的にアプリやWebで完結するチームでしたので、実際に動く車で体験するというのは新鮮でした。

また我々はハードに対する憧れがあり、それに携われたことが嬉しかったですね」と、笑顔を見せてくれた。これはホンダ側も同じで、今まで物を言わなかった自動車が喋ることに驚いたそうだ。

そこから先の開発は進み2018年11月頃にリリースに近い物が完成。「自然なセリフ、違和感を覚えさせない発音タイミング、そして使いやすいアプリの設計に気を使いました」と、ドワンゴの行田さんは自信をもっている。ホンダ社内は、当初何をやっているんだろう、という空気だったとのことだが、いざ出来上がってくると「乗せて欲しい」という声が高まってきたという。

初音ミクと喋りながら楽しいドライブ

こうして出来上がったアプリ「osoba」。スマホアプリを立ち上げて、車両とUSB接続。あとはスタートを押すだけで、初音ミクの音声と共に、車両のセンターディスプレイに、最も知られているKEI氏が描いた初音ミクのイラストが表示される。ただ、それ以外は何も表示されないのがちょっと寂しいところ。

「アニメーション表示などを試したのですが、運転中に画面を見つづけてしまうことは安全面に問題があると考えて静止画としました」と、本田技研工業の橋本氏は語る。

ちなみにosobaの紹介サイトでは「ToLOVEる-とらぶる-」などの作品で知られる矢吹健太朗氏のイラストが使われているが「このイラストはosobaのプロモーション用として描き起こして戴いたものですので、あえて入れませんでした。また初音ミクというとKEI先生のイラストですので」(ドワンゴ・鹿島氏)とのこと。

幅広い世代に認知されているから初音ミクを採用した、というコンセプトゆえの決断なのだろう。

S660ユーザーとしては、osobaを利用してのカーナビ利用が気になるところ。S660のカーナビは「internavi POCKET」という専用アプリを立ち上げて使用するのだが、結論から言うと同時利用は不可だ。

ただドワンゴの行田氏は「ナビを使う際は、Google Mapなどを利用しバッググラウンドで音声が出れば、その音声を流すことができます。たまにGoogle Mapが「右に曲がります」と言った時にミクが「右に曲がりました」というコラボが楽しめます」(笑)とのことで、全く利用できないわけではない。osoba起動中にiPhoneに入っている音楽を聴くことも可能だ。

「アプリのいいところは、アップデートができることです。現状で私達が良いと思った状態でのリリースになりますが、改良が必要とあれば改良はしていきます。また、このような機能が、という声があれば、追加することも可能です」とホンダの橋本氏は、今後の機能追加に含みを持たせていた。

ちなみに検討項目の中には、初音ミクと親密度によってセリフが変わるパーソライズ機能も含まれているという。実現したら楽しみ機能で、もっと初音ミクとおでかけしたくなることだろう。

「S660のオーナーの方には、車が喋るという違った体験や便利さをご提供し、今まで車に興味を持たれなかった方には、コンテンツを通して車に興味を持って頂ければと思います。ぜひ東京オートサロンの会場で試乗体験をして頂きたいですし、会場に展示した矢吹健太朗先生描き下ろしの初音ミクのラッピングカーを見ていただければと思います」とホンダの橋本さんは新しい自動車体験を訴求されていた。

「osoba」は、リリース時点では期間限定アプリだが、好評ならそれ以降もサービスを継続するかもしれない。また好評なら今後、他の車種への採用も検討しているという。

まずは触れて体験して頂きたい。あまりの初音ミクの「しゃべりっぷり」に驚くと共に、運転が一層楽しくなること間違いないだろう。

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