トラックやバス、航空機に使われているリトレッドタイヤ(再生タイヤ)って何?

リトレッドタイヤ ウイングトレッド_ビルディング直後

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乗用車用タイヤの大半は、摩耗したら交換するのが一般的だが、トラックやダンプカー、大型バス、航空機などにはリトレッドタイヤ(再生タイヤ)が使われることがある。「再生するタイヤ」とは一体どんなタイヤで、どんな工程を経て再生されるのだろうか。

文・塚田勝弘
Chapter
リトレッドタイヤ(再生タイヤ)とは?
リトレッドタイヤの生産工程は?
自分でタイヤの溝を削るリグルーブタイヤとは?

リトレッドタイヤ(再生タイヤ)とは?

少し前になるが、2018年の夏に、日本ミシュランタイヤのプレス向け取材会が新潟県糸魚川市で開催された。日本ミシュランタイヤがリトレッドタイヤの生産を契約・委託しているリトレッドタイヤの老舗である高瀬商会のリトレッドタイヤ工場が公開されたのだ。高瀬商会は、1931年に通産省(経産省)指定のタイヤ更正工場になっている。現在もフランスのミシュランタイヤ本社お墨付きという高い技術力を誇る。

なお、再生タイヤ全国協議会のホームページによると、2017年末現在、全国にリトレッドタイヤの製造会社は21社(40工場)あるという。

さて、リトレッドタイヤ(再生タイヤ)を簡単にご説明すると、すり減ったトレッドゴムを交換したタイヤ。古いトレッドゴムを除去し、新しいトレッドゴムを貼り付けるわけだ。もちろん、単に「貼り付ける」のではなく、数多くの工程を経て、最終的には低温で長時間加硫する。加硫することにより、分子レベルでしっかりと結合させることで高い信頼性、安全性が確保される。
新品タイヤが摩耗して走れなくなっても、ベースとなる台タイヤが適合する状態であれば、リトレッドタイヤとして再生される。日本ミシュランタイヤ(高瀬商会)では、再生は基本的に1回としているが、オーダーがあれば2回再生させることもあるという。その際ももちろん安全性は担保されている。

また、台タイヤは、廃棄されたタイヤを使うのではなく、あくまで摩耗したタイヤを再生させるというのもポイント。要は、出所が怪しいタイヤが使われることはない。

リトレッドタイヤの生産工程は?

さて、リトレッドはどうやって生産されるのだろうか? まず台タイヤを洗浄することからスタートする。ブラシと自動洗浄機で水洗いした後に、乾燥させる。

キレイになった台タイヤだが、そのまま再生するのではなく、釘穴検査機で貫通の有無を確認する。きちんと使える台タイヤかどうか検査されるわけだ。さらに、シアログラフィーという検査機を使い、超音波ウルトラソニックで部材間の剥離を探し、目視と触診で傷や変形などを確認。
キズや貫通などがないなどの確認がされると、バフ掛けを行う。さらに、トレッドをサイズとパターンに応じた設定値に削り、スカイピング&修理という工程で、傷口をきれいに削った後に修復される。続いて、セメティングという行程で、削ったゴムの表面が酸化しないように加硫用セメントを塗布する。
溶けた合成ゴムで削った部分が埋められるフィリングという行程を経て、トレッドゴムが準備される。次に、トレッドに液剤を塗り、ビニールを巻き直した後にビルディングという行程でタイヤのカーカスにサイズとパターンに応じたトレッドが貼り付けられる。
これで終わりではない。先述したように、加硫という仕上げが待っている。タイヤをエンベロープと呼ばれるカバーに包んで加硫機に投入し、低温で長時間加硫。その後、高圧検査でリトレッドの耐久性をチェックし、目視などの最終検査を経た後、温かいうちに仕上げの専用塗料がペイント、乾燥すれば完成となる。
リトレッドタイヤの利点は、運送会社などユーザーのコスト削減、環境負荷低減などがある。さらに、ミシュランタイヤでは、リトレッドタイヤの対象となるトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「MICHELIN X One」を展開しているのも特徴。

「MICHELIN X One」は、トラックなどの後輪に装着されるダブルタイヤをシングルタイヤとすることで、1車軸あたり約100kgの軽量化が実現できる点。軽量化により、燃費削減も期待できるだろうが、何よりも積載量の維持と拡大、メンテナンス費用の半減、廃棄タイヤ削減による環境負荷削減、パンク率低減、ハンドリングなど操作性の向上、車両設計の可能性が広がるなどのメリットがあるという。

現在は、乗用車用タイヤのリトレッドタイヤはない。日本ミシュランタイヤや高瀬商会の方に伺うと、トラックやバス、航空機、産業用などのリトレッドタイヤに比べ、乗用車用タイヤはサイズなどが膨大な数に達するため。設備投資などのコスト面からもビジネスとして成立させるのは、非現実的だという。

自分でタイヤの溝を削るリグルーブタイヤとは?

さらに、今回の取材では、専用器具を使ってマニュアルどおりにタイヤにパターン(溝)をふたたび刻むリグルーブも体験することができた。専用器具を使うことにより、削り過ぎなどを防ぐ。

リグルーブは、トレッドゴムの溝を手作業で文字どおり削ること。トレッドゴムを厚めにしておくことで可能な「溝の再生作業」で、摩耗で低下したウェットグリップなどの性能を取り戻す、あるいは維持するのが狙いだ。

リグルーブにより、寿命を最大25%伸ばせるとともに、摩耗によってトレッドの発熱が抑制され、転がり抵抗が低くなることで燃費が改善するという。これは、ミシュラン独自の強固なケーシング(タイヤのコード層)により実現している。

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