37年間もの歴史!初代から最終型まで。日産 シルビアはどう進化してきた?

日産 シルビア 初代

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初代から7代目まで約37年間生産された日産シルビア。時代(世代)により異なるものの、若者でも(新車だけでなく中古車も含めて)買える車格であり、デートカーからドリフトまでクルマで遊び、クルマで自分らしいスタイルを見せるという良き時代を象徴したスポーティカーの変遷を辿ってみる。

文・塚田勝弘
Chapter
モータリゼーションの波に乗って登場した初代シルビア
2代目ニュー・シルビアが誕生
サニーベースになった3代目
ブルーバード・ベースに格上げされた4代目
5代目S13シルビアが最大のヒット作に
3ナンバー化で立派になったS14型
電動オープントップ仕様も設定された最後の7代目シルビア

モータリゼーションの波に乗って登場した初代シルビア

1960年代初め頃の日本は、モータリゼーションにより日本の自動車メーカーが欧米の技術を取り込みながら、技術を試行錯誤で築き、学び(マネ)ながらデザインを培っていくーー。非常に大まかにいうと、そんな時代だった。

初代シルビア(CSP311型)が登場する前の1960年には、イタリアのデザイナーであるジョヴァンニ・ミケロッティのデザインによるスカイライン スポーツがトリノショーで披露されるなど、クーペという趣味性の高いモデルが続々と登場する下地ができあがっていく。そして、1964年にダットサン クーペ1500として東京モーターショーでお披露目され、翌年初代シルビアとしてデビューした。

ベースとなったのは、当時大人気だったダットサン フェアレディ1500(S310型)で、フェアレディ1500は初代ブルーバード(310型)がベース。ボディとシャーシを分けた「はしご形」フレームを採用していたため、上屋を設計すればクーペに仕立てやすいという事情もあり、初代シルビアを比較的短時間で送り出せたのだ。

デザインは、「クリスプルック」といわれるダイヤモンドカットのようなエッジの利いたフォルム。極端ではないものの、ノーズは比較的長く、ショートデッキという、当時のクーペの文法に則っているといっていいだろう。

フェアレディ1500から変わったのは見た目だけでなく、「R」型エンジンの1.6L OHVを搭載。SU製ツインキャブレターを採用し、最高出力90ps、最大トルク13.5kg-mを発生した。組み合わされるトランスミッションは4MT。なお、ブレーキはフロントがディスクで、リヤはドラム。サスペンションは前がダブルウイッシュボーンで、リヤは60年代当時は、スポーツカーでも当たり前だったリジッドだった。

2代目ニュー・シルビアが誕生

2代目シルビアは、1975年に「ニュー・シルビア」の名で登場し、初代の2人定員から5人乗りクーペに変身している。1970年代から始まったスペシャリティカー・ブームをトヨタ セリカとともに牽引した1台だ。北米市場を意識したような伸びやかで流麗なフォルムが特徴。

全長が4mを超え、全幅も1.6m台に達したボディは、3代目サニー(B210型)がベースで、エンジンはL18型の1.8L直列4気筒OHCを搭載。初代のOHVからOHCに進化し、105ps/15.0kg-mというスペックに向上している。L10型エンジンは、シングルキャブだが、1976年のマイナーチェンジで排出ガス規制対策のためインジェクションが新たに採用された。

ブレーキはフロントがディスク、リヤはドラム。サスペンションはフロントがストラット、リヤがリーフリジッドとなっている。なお、日産初のロータリーエンジン搭載の噂も囁かれた1台だ。

サニーベースになった3代目

1979年デビューの3代目(S110型)もサニーをベースにクーペ化されたが、2代目よりも直線を基調としたフォルムになり、当時から多かった「くさび」形でウェッジシェイプと呼ばれるサイドビューも目を惹いた。

さらに3代目になり、日本国内のスーパーシルエットレース、サファリラリーに出場するなど、モータースポーツの場でも活躍するとともに、技術を蓄積していく。

ボディバリエーションも広がり、ハードトップ、3ドアのファストバック風のハッチバックもラインナップ。エンジンはZ型の1.8L、2.0Lに移行したが、インジェクションとキャブレター仕様も設定されていた。

機構面では、2.0Lにパワーステアリングを搭載するなど、現代的な装備も出始めるとともに、オプションで日本初のドライブコンピューターを設定。さらに、トランスミッションには4MT、5MTに加えて、3ATも登場するなど、イージードライブも許容する仕様も設定されていた。

ブルーバード・ベースに格上げされた4代目

4代目(S12型)は、サニーからブルーバード・ベースにスイッチし、ボディサイズも全長4.43m、全幅1.66mにまで拡大され、2ドアクーペと3ドアハッチバックが用意された。

機構面では、リトラクタブルヘッドライトやチルトアップ機構付き電動ガラスサンルーフを設定するなど、よりスペシャリティカーらしい装備で訴求するものの、販売的にはライバルのホンダ プレリュードには及ばなかった。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラットで、リヤはついにセミトレーリングアームの独立懸架に進化するなど、ハンドリングの向上も図られている。ブレーキもリヤがドラムからディスクにアップデートされるなど、進化を遂げた。

エンジンはキャブレターのCA18S型1.8Lのほか、1.8LはインジェクションのNA、インジェクションのターボの3タイプを用意。さらに、インジェクションのFJ20E型の2.0LもNAとターボを設定していた。

5代目S13シルビアが最大のヒット作に

最大のヒット作となったのが1988年発売の5代目シルビア(S13型)だ。ホンダ プレリュードなどとともに、スペシャリティカー(=デートカー)という図式を成立させていく。

歴代モデルでも最も流麗と称されるフォルムは、「エレガントストリームライン」と称した線と面の構成が美しく、華美ではなく、無駄を注ぎ落としたデザインによる最大ヒット作となる。

「PLASMA」というコピーで高性能を謳うツインカム(DOHC)エンジンの搭載もトピックス。NAエンジンの1.8L(CA18DE型)は、135ps/16.2kg-mというアウトプットを誇った。電子配電点火システムや電子制御可変吸気コントロールシステム、直動式油圧リフター、白金(プラチナチップ)を使ったプラグを採用することで、高性能を謳っていたのだ。

さらにツインカムターボのCA18DET型は、過給により175ps/23.0kg-mまで動力性能が引き上げながらもレギュラーガソリンを指定。さらに、トランスミッションは4ATと5MTが設定され、バブルという時代背景もあり、若者でも比較的気軽に乗れるスポーティクーペであった。

サスペンションも新開発のマルチリンクサスペンションを搭載。これは、ダイアゴナルAアームサスペンションを進化させたもので、高いロードフォールディング性能を実現している。

足まわりでの最大の注目は、メーカーオプション設定された「HICAS-Ⅱ(ハイキャス)」と呼ばれた4輪操舵の4WSで、R31型スカイラインにも初搭載されて以来、日産が磨き上げてきた技術だ。「技術の日産」にふさわしい技術とアイディアが具現化され、高いライントレース性を謳っていた。さらには、ビスカスLSDによる安定感のある走りも支持された要因といえるだろう。

なお、1989年3月に、3ドアハッチバックボディにリトラクタブルヘッドランプを採用した180SXという兄弟車も人気を誇った。

3ナンバー化で立派になったS14型

1993年登場の6代目(S14型)は、スタンダードなFRクーペという方程式は守りながらも、3ナンバー化することで、若者の支持が薄れたのは否定できないだろう。

エンジンは先代の後期から採用されていたNAのSR20DE型、ターボのSR20DETで2.0Lのみ。NAにもターボにも可変バルブタイミング機構を採用するなど、走りや動力性能はS13から着実にアップしていたものの、ハイオク指定になるなど、私自身も性能向上は手が届きにくい高級化と見られていた記憶がある。全日本GT選手権のGT300クラスに出場するなど、モータースポーツでも活躍した。

電動オープントップ仕様も設定された最後の7代目シルビア

1999年に登場した7代目(S15型)は、5ナンバーサイズに戻すことで若者の人気回復を狙ったものの、時代はRVブームの真っ直中で、S13の大ブーム再現とはならなかったが、S14よりも人気を集めた。さらに、現在もドリフトやジムカーナのニーズがあり、5ナンバーサイズのFRモデルとして2002年まで生産された恩恵は大きい。

エンジンは2.0LのSR20DE型のNAとターボで、4AT、5MTのほか6MTも設定された。サスペンションは、6代目と同じ、フロントがストラット、リヤがマルチリンクではあるが、改良を施すことで、よりストローク感のある走りを実現。

さらに、4WDの「電動SUPER HICAS」も設定されていた。ボディバリエーションでは、クーペカブリオレである電動リトラクタブルハードトップの「ヴァリエッタ」が2005年に追加されている。

2000年代初頭に消えたスポーツカー、スペシャリティカーは排出ガス規制によりリストラの対象となり、先述したRVやミニバンブームによりクルマへのニーズが変わった潮目。S15シルビアもそんな1台といえるかもしれない。

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