2、3、4、5、6、8はあるのに、7(気筒エンジン)がないのはなぜ?

1気筒あたりの適正な排気量がある

BMW  直列6気筒ツインパワーターボ

エンジンの(総)排気量は、クルマのコンセプトやサイズから、必要馬力とトルクの目標値が決まり、そこから決定されます。排気量が決まれば、次は気筒数やシリンダーのボア×ストローク(1気筒あたりの排気量)など基本構成が決まります。

このとき、効率が良いエンジンにするため、気筒あたりの排気量は400〜600ccに設定します。これは、1気筒あたりの排気量が大きすぎる(ボア径が大)と、ノックをおこしやすく、燃焼期間が長期化してしまうこと。反対に、排気量が小さすぎる(ボア径が小)と、熱損失が大きくなってしまう、といった感じで、1気筒あたりの排気量は、大きすぎても小さすぎても燃焼効率が下がってしまうのです。

ただし、軽自動車のように総排気量が小さい特別なエンジンでは、振動騒音の問題で単気筒や2気筒が成立しにくいため、気筒あたりの排気量は、やむを得ず小さくなっています。

7気筒エンジンは搭載性が悪い?

V6 エンジン

エンジン設計のもうひとつの課題としてエンジンルームがあります。そのサイズには限りがあるので、搭載するエンジンは、おのずとそこに収まる大きさにしなければなりません。特に直列エンジンの場合は、長さがネックになります。

気筒あたり排気量を前述した効率の良い範囲に設定すると、6気筒エンジンなら総排気量が2.4〜3.6L、7気筒なら2.8〜4.2Lが適正となります。このとき仮に、6、7どちらのエンジンでも、気筒あたりのボア×ストロークを理想的な数値に設定した場合、シリンダーを直列に配置すると、エンジンの長さは7気筒のほうが100mm程度長くなる計算です。

直列エンジンをエンジンルームに収める場合、一般的な自動車のパッケージでは6気筒が限界というのが常識ですから、それよりも長い直列7気筒は成立しないのです。ちなみに6気筒でV型レイアウトを採用する例が多いのは、こうした長さの問題あるからです。

では、V型7気筒にすれば良いかというと、今度は長さとは違った問題が出てきます。

7気筒エンジンの振動とバランス

ホンダ シビック タイプR 2017 直4

4サイクルエンジンでは、クランクシャフトが2回転する間に、各シリンダーが順番に、吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程を繰り返します。4行程のなかで、トルクを発生するのは燃焼行程だけなので、どうしてもトルク変動が発生します。気筒数が増えれば増えるほど、1回転中にどこかの気筒で燃焼行程が発生するため、トルク変動が小さく、振動も小さくなります。

その点では、7気筒エンジンは有利となり、非常になめらかになる可能性はあります。

しかしながら一般的な等間隔爆発エンジンの場合、クランク形状は、クランクシャフトの中央位置を中心に、ピストン配置を対象な形状にする必要があります。たとえば、偶数気筒数の4気筒の場合、1番気筒と4番気筒が上死点の場合、2番気筒と3番気筒は下死点となり、それぞれ逆方向に動き、振動を相殺できます。V型は、それを左右に振り分けて、それぞれ対になる気筒が振動を打ち消し合う設計になっています。

一方、7気筒の場合、ピストン配置を対象にできないので、エンジン自体を上下に揺する偶力振動が発生してしまいます。3気筒や5気筒も同様で、奇数気筒数の大きなデメリットです。

さらに7気筒を直列配置にした場合には、クランクシャフトが長くなり、ねじれが発生しやすく、高出力対応が難しいことに加えて、ここでも振動・騒音の問題が避けられなくなってしまいます。


気筒数や気筒配列は、性能、振動、コスト、搭載性など総合的に判断して、決められています。そのような中、性能的なメリットが少なく、しかも搭載性や振動特性が悪い7気筒をあえて選択する理由は見当たらないのです。

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文・わんわんエンジニア
某自動車メーカーで30年以上、エンジンの研究開発に携わってきた経験を持ち、古いエンジンはもちろん最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。EVや燃料電池が普及する一方で、ガソリンエンジンの熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きなクルマで、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ること。

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