ツインターボ、トリプルターボ、クアッドターボ…ターボの数を増やしていくとどうなる?

ブガッティ ヴェイロン 16.4 グランスポーツ

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ターボ過給は、出力向上と燃費改善には欠かせない技術。最近では、ツインターボに加えて、トリプルターボやクアッドターボなどもあり、なんとなく数が多いほどエライ感じがします。でも本当に、ターボの数を増やせば増やすほど、出力は向上し、メリットも増大するのでしょうか。

文・わんわんエンジニア
Chapter
ターボ(過給)とはなにか?
ターボのシステム構成とは?
トリプルターボ、クアッドターボの採用例は?
ターボの数を増やすのは、今後のトレンド?

ターボ(過給)とはなにか?

ターボとは、エンジンから排出される燃焼ガスのエネルギーをタービンによって回収し、タービンと直結したコンプレッサーによってエンジンに吸入される空気を圧縮(過給)、吸入空気量を増大し、出力を向上させるシステムです。

過給によって吸入空気量を増大させるので、排気量を増やすことと同じ効果が得られます。

ガソリンエンジンでは、燃費を良くするために排気量を小さくして、出力を過給でカバーする「ダウンサイジングターボエンジン」が最近のトレンドになっています。

またディーゼルエンジンでは、高出力化に加えて、排出ガスを低減させる効果があるため、古くからターボを組み合わせて使うことが一般的でした。

ターボのシステム構成とは?

ターボのレイアウトや構成は、気筒数、気筒配置、またメーカーによっても異なります。ターボの数によって、シングル、ツイン、トリプル、クワッドと呼ばれます。

そのなかの”ツインターボ”は、レイアウト、構成によって3つに分けられます。

・パラレル”ツインターボ”
6気筒以上の多気筒エンジンに使われ、気筒を2グループに分けて、同じサイズのターボ2基で過給 (V6エンジンの左右バンクに1基ずつなど)。

・シーケンシャル”ツインターボ”
大小2基のターボを組み合わせて、2つを連続的に切り替えることによって、低回転から高回転まで安定した過給圧を実現。

・2ステージ”ツインターボ”
1基目のターボを通過した排出ガスを、もう1基のターボに2段で過給。

トリプルターボ、クアッドターボの採用例は?

ツインターボを搭載したクルマの例は多数ありますが、最近は、さらなる高出力を目指し、トリプル、クアッドなどが出現しています。

ターボを3、4基と増やす一般的な方法は、パラレル”ツインターボ”と同様に、1基のターボが担当する気筒をグループわけする方式です。

BMWの直6エンジンを2気筒ずつに分けたトリプルターボや、ボルボのハイパフォーマンス Drive-Eのように、もともとのツインターボに電動ターボ(モーターでターボのコンプレッサーを回すシステム)を追加した、トリプルターボシステムがあります。

またクアッドターボとしては、スーパーカーのブガッティ ヴェイロン8.0L W型16気筒エンジンの4気筒に1基のターボを搭載(計4基)したものや、現行BMW 7シリーズに搭載された3.0L 直6ディーゼルがあります。

ターボの数を増やすのは、今後のトレンド?

ターボの効率は、排気エネルギーをどれだけ回収できるかにかかっています。

回収できる排気エネルギーは、ターボの数が増えるに従い、徐々に減ります。パッケージングの難しさやコスト高の割には、ターボ数を増やすことのメリットが小さくなってしまいます。

特にガソリンエンジンの場合は、吸入空気量が増えるとノックしやすくなる特性があるので、高過給のメリットは減少していきます。

一般的な排気量3.0L以下のガソリンエンジンでは、シングル~ツインターボが適正と言われ、ディーゼルエンジンの場合は、ノックの発生がなく、排出ガス低減効果もあることから、出力要求によっては、トリプルターボの採用もありうると考えられています。


ディーゼル車が好きな欧州市場では、ディーゼルエンジンと相性の良い複数ターボ方式は、すでに普及し始めています。しかし、ガソリン車中心の日本市場では、複数ターボのメリットを生かすのは難しく、今後も拡大することはないと推測できます。

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文・わんわんエンジニア
某自動車メーカーで30年以上、エンジンの研究開発に携わってきた経験を持ち、古いエンジンはもちろん最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。EVや燃料電池が普及する一方で、ガソリンエンジンの熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きなクルマで、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ること。
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