スピードメーターの値、実際の速度と誤差があるって本当?その要因とは?

運転 ダッシュボード

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ドライバーが運転中に意識すべきものの一つ、スピードメーター。しかし、スピードメーターの値は、実際の速度と若干の乖離があるのです。今回は、スピードメーターの誤差の要因、そして道路交通法において、その誤差をどう解釈し取り入れているのか、についてご紹介していきます。

文・わんわんエンジニア
Chapter
車速センサーとは?
誤差要因とは?
スピードメーターの表示には許容誤差がある

車速センサーとは?

クルマには、車速を推定する「車速センサー」がついています。通常、この車速センサーは、トランスミッションの回転に連動する「ドリブンギア」と言われる部分を介して装着してあり、トランスミッションの回転速度に比例したパルス(電気的な発信)を発生しています。その信号を利用し、スピードメーターの表示回路に情報を送っているのです。

アナログメーターの場合は、車速度に相当するパルス信号の数を、電流信号の大きさに変換し、電流の大きさに対応、交差コイルによってスピードメーターの針を動かします。デジタルメーターの場合は、パルスをカウントして、車速度をデジタル表示します。

誤差要因とは?

トランスミッションから得られるパルス信号は、自動車のCPUによって演算され、車速度へと変換されています。この演算には、ドリブンギアの歯数、パルスをカウントする演算割込み時間、デフ減速比、タイヤ外周長などの数値が使われています。この中で、「誤差」の要因となるのは、主として「タイヤ外周」です。

車速は、車軸(タイヤ)回転速度×タイヤ外周長(直径×3.14)で計算します。例えば、スピードメーター上 40km/hで走っていても、空気圧不足や、摩耗により外周が10%減ると、実車速は36.0km/hに低下します。

空気圧不足や摩耗によって、タイヤ径が10%も変化することは考えられませんが、これらによって生じる「誤差」は、メーター表示に少なからず影響してくるものです。さらに、ホイールのインチサイズを交換したりすると、スピードメーターの表示と実車速との乖離は、さらに大きくなってしまいます。

スピードメーターの表示には許容誤差がある

スピードメーターの表示と、実際の速度の「誤差」は法規で規定されています。

「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第148条」で、スピードメーターの誤差範囲は、次の数式で定められています。

10(V1-6)/11 ≦ V2 ≦ (100/94)V1

V1:スピードメーターの表示速度
V2:実際の速度

スピードメーター上で 60km/hと表示される場合、実車速の許容誤差は49.1km/h~63.8km/hとなります。

注目点は、スピードメーター表示が、実速度より低めの誤差については厳しく、逆に高めの表示の誤差については、甘い規定になっていることです。言い換えると、スピードメーターは、実際の速度より高めに表示することを、法規で推奨しているといえます。

多くのクルマを調査すると、スピードメーターは、実際の速度より高めに表示することはあっても、低めに表示することはなかったようです。

では、なぜスピードメーターは、実際の速度よりも高めに表示することが推奨されているのでしょうか。

一つ目の理由は、実車速は高いのに、ドライバーが「スピードは高くない」と錯覚し、事故を起こしてしまう可能性があるため。またもう一つは、スピード違反で捕まった場合、メーターの表示で速度を確認し、法定速度を守って運転していたと主張するドライバーと、メーカー間でのトラブル回避のためです。

多くの方は後者を思い浮かべるかもしれませんが、より大事なことは、一つ目の運転ミスによる事故を起こさないことです。

スピードメーターと実速度との乖離は、現在のシステムにおいては避けられないものです。そして道路交通法において、この誤差は、ドライバーをより安全運転に導くよう、いわば「利用」されているのです。私たちドライバーを厳しく取り締まる法規は、実はこんなにも私たちドライバーのことを考えて設定されているものなのです。

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文・わんわんエンジニア
某自動車メーカーで30年以上、エンジンの研究開発に携わってきた経験を持ち、古いエンジンはもちろん最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。EVや燃料電池が普及する一方で、ガソリンエンジンの熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きなクルマで、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ること。
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