ガソリン車にはガソリン税。EVには走行税!? 導入はありえるのか

日産 リーフ 2018

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2018年現在、電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)は給油がないため、走行を重ねても「ガソリン税」を取られることはありません。その状況を受け、昨年「EVに”走行税”が導入されるか?」という話が、自動車メディアなどで何度か取り上げられました。そこで今回は、走行税について世界的な背景も含めて考えてみたいと思います。

文・吉川賢一
Chapter
「EVに走行税」の話題が上がったきっかけ
ガソリン税とは?
これから予定される環境規制とは?
走行税とは?
EVに走行税は妥当か?

「EVに走行税」の話題が上がったきっかけ

2017年9月、石油連盟の木村康会長(JXTG HD会長)が、「EVもガソリン車と同じ道を走っているので、相応の負担をしてもらう必要がある。ガソリン税がなくなったらどうするのか?」という発言をされました。

その背景には、重い税負担に対する、石油業界の根強い不満があると言われていますが、その一方でガソリンを使わない車両が増えた場合、これまでガソリン税でまかなってきた財源をどこから確保するのか、という問題が行政側も発生します。

ガソリン税とは?

ガソリン税とは、揮発油税と地方揮発油税を総称したもので、2018年6月現在、1リットルあたり53.8円を受益者負担としてドライバーが負担しています。

揮発油税は、年度の歳入のうち、約3%にあたる約2兆5千億円にのぼり、国の大事な収入源のひとつとなっています。しかしながら、今後は内燃機関車の販売縮小にともなってガソリンも売れなくなり、ガソリン税収入も大幅に落ち込むことが予想されています。

世界中で起きているEVへの移行を促す法規制が、相次いで提案されていることが要因です。

これから予定される環境規制とは?

これまで、環境規制値を達成する方法は、各自動車メーカーにはある程度自由がありました。しかし現在は、EVやPHEV、FCVを市場へ一定台数以上投入することを義務付ける規制に変わりつつあります。

2016年から、北欧を中心に内燃機関車の販売禁止方針が表明され、自動車の巨大生産・販売国である中国も、内燃機関車販売禁止の工程表作成に着手しました。予想では、2030年には世界全体で、新車の30%がEVやFCVに代わるとされています。

そのままEV/FCV化が進み、2050年にガソリン車の新車がなくなると仮定した場合、日本エネルギー経済研究所の試算によると、2015年のOECD(経済協力開発機構)参加35カ国で見ると2015年の約2割程度にまで減ると試算されています。

日本にあてはめてみると、2015年の揮発油税収入が2兆4,600億円ですので、2050年の税収は約5,000億円。2兆円もの税収減になってしまうのです。

走行税とは?

走行税とは、走行した距離に比例して税金をかけるという考え方の税金です。2009年にアメリカのNSTIFC(米国陸上交通インフラ資金調達委員会)がとりまとめた「長期的には、自動車燃料税方式による税財源の持続は不可能」とする報告書を発端として、”走行距離課税”の議論が本格的に始まりました。VMT(Vehicle Miles Traveled) feeと呼ばれ、アメリカでは走行距離の情報をモニタリングし、実験的に導入され始めています。

しかし、走行中すべての情報が記録として残れば、交通違反の取り締まりや、交通事故の検証、居場所の特定等にも使われることは必至で、プライバシーと個人情報の流出についての問題が、まだ十分に検討されていないという指摘もあります。

EVに走行税は妥当か?

税制には、①公平、②中立、③簡素の原則があります。先の木村会長は、このうちの「公平性」を踏まえてのご発言と考えられます。

これまでガソリン税が財源となって建設されてきた道路を使う以上、受益者負担の原則から、EVやFCVにも負担を負ってもらいたいという考えももっともです。

ただし、EVやFCVは、現在、国が補助金交付をしてでも普及させていきたい時期ですので、走行税が導入されれば、EVの販売にも足かせとなる可能性があります。業界の発展状況を見ながらの、税の議論を進めていただきたいと考えます。

EV普及には、バッテリーに関する課題や、インフラ整備など、まだまだ検討・解決すべき問題が山積しています。税収に関しても同様で、同じ道路を使う以上、誰が建設や整備のための費用を負担するのでしょう?現在のガソリン税だけでは、いずれ立ち行かなくなることは明らかです。

すでに転換期にあるガソリン税の存在。今後、国民の意見をよく聞いて、将来の国の財政制度設計の議論のひとつとして、しっかり検討していただきたいものです。

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