クルマタイヤとバイクタイヤの決定的な違い

ホンダ シビック タイプR 2017

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クルマとバイクはどちらも、「運転を楽しむこと」や、「目的地まで移動する手段」に変わりありませんが、両者のコーナーリングの仕方はかなり異なります。そのため、両者のタイヤの使い方には大きな違いがあるのです。そこで今回は、バイクとクルマのタイヤの違いについて紹介します。

文・吉川賢一
Chapter
タイヤの役割とは?
クルマはどうやって曲がる?
バイクはどうやって曲がる?

タイヤの役割とは?

本数や構造は違いますが、クルマでもバイクでも、タイヤはモビリティとして重要な「走る」「曲がる」「止まる」の役割を担っています。

その仕事は、(1)車体を支える、(2)駆動力や制動力を地面に伝える、(3)進行する向きを変える、(4)衝撃を吸収する、ですが、このうち(3)進行する向きを変える=”曲がる”のメカニズムが、バイクとクルマではまったく異なるのです。

クルマはどうやって曲がる?

クルマがコーナーを曲がるとき、ドライバーはステアリングを切って、前輪のタイヤの向きを変えます。このとき、車両の進行方向と前輪タイヤの向きには差が生じており、これをスリップアングル(滑り角)といいます。

タイヤはこのとき、通常のコーナリングの範囲では、スリップアングルの大きさに応じたコーナリングフォースを発生。さらに、内外輪の荷重移動ぶんが加わっていたり、ブレーキを踏んでいれば前後方向の荷重移動もおきているため、前輪のコーナリングフォースの大きさは増減します。

こうして、タイヤが発生する力が、サスペンションを介して車体に伝わり、車両の向きを変えて、旋回運動を始めることになります。

クルマのタイヤは常に正立するようにして、コーナリングフォースを発生させたいので、正面から見たときのタイヤ接地面は平らであることが理想です。

バイクはどうやって曲がる?

バイクの場合、車体を傾けることによって生じるコーナリングフォースによって曲がっていくのがコーナーリングの原理です。

ライダーが車体をコーナー内側へ傾けると、自然とバイクのハンドルがコーナー内側へ向けられていきます。「セルフステアリング」と呼ぶこの現象によって、バイクは旋回運動を開始します。

このとき、地面と接しているタイヤのトレッドと、地面との間に発生する摩擦力を使って、コーナリングフォースを発生させています。タイヤを正面から見たときの、垂直方向との角度をキャンバー角といいますが、このキャンバーの大きさによって発生する「キャンバースラスト」力によって、定常的な円運動が可能になるのです。

そのためバイクでは、車体を傾けた状態でグリップするように、正面から見たときのタイヤ接地面は、円形になります。

ちなみに、タイヤを輪切りにしたとき、ドレッド部の断面がひとつのRで描けるタイヤを「シングルラジアス(シングルクラウン)」、2つのRで構成されているタイヤを「ダブルラジアス(ダブルクラウン)」といいます。

ダブルラジアスは、ロードスポーツ用タイヤに多く見られるデザインで、先端が尖った円形(卵型)をしています。これにより、バイクの倒し込みが軽く、かつ旋回時に高いグリップを得やすいことが特徴で、レーサーレプリカなどスポーツバイクが採用。一方、直進性能を優先する一般のバイクではシングルラジアスが採用されます。

また旋回時(バイクが傾いているとき)、より高いグリップを得るために、最近のロードスポーツ用タイヤでは、センターと両サイドでコンパウンドを変えるのが普通。わずかな接地面でも確実なグリップを得ることができるよう、日々研究開発が進められているのですね。

コーナリングの原理が異なる、クルマとバイクは、それぞれの使い方に合わせたタイヤの設計がされています。

もしも、両車が逆のタイヤを装着すると、まともに曲がれなくなるのは目に見えますが、日産の「ブレードグライダー」のように、4輪なのに内側へローリングするコンセプトカーも登場しています。

将来的には、こういった面白いモビリティが登場することが待ち遠しいですね。

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