MOTORCYCLE SELECTION

アヘッド MotorcycleSelection

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エンジンを掛けずに車体を押し引きしただけで、良いバイクだと確信できることがある。それは、めったにない出会いだが、「ニュー・ストリート・トリプル85」がまさにそれだった。なにせ軽い。

text:伊丹孝裕 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.126 2013年5月号]
Chapter
TRIUMPH NEW STREET TRIPLE 85
TRIUMPH NEW TIGER 1050

TRIUMPH NEW STREET TRIPLE 85

3気筒のライトウエイトスポーツ自由自在にコントロールできる

カタログ上の装備重量は182㎏で、これ自体は同クラスのモデルと比較して、必ずしも突出しているわけではない。にも関わらず、極端に軽く感じられるのだ。その理由は重量バランスの良さに起因している。

車体の中心から離れたところに重たいパーツがなく、ほとんど全てがエンジン付近に凝縮していることが大きい。押し引きや取り回しで感じられるのは、まさにそこ。エンジンを掛けないからこそ、〝素〟の状態が分かりやすいのだ。
もし数字として軽くても、バランスが悪ければ、転がり始めに抵抗感があったり、安定感に欠けたりするものだが、このモデルに関してはそれらが皆無。片手8の字が描けるような気さえするのだ。

これは、物理的にも説明できる。ブレーキキャリパーとディスク、ホイールといったバネ下パーツの他にフレームやスイングアームを刷新、前モデルと比較して6㎏もの軽量化に成功している。
中でも最も効果を発揮しているのがマフラーだ。従来は2本出しのマフラーが重心の高い位置に置かれていたのだが、これを1本出しのショートタイプに変更、軽量化とマスの集中が一気に進められたのである。

さらに特筆すべきは、日本仕様は音量や排ガス規制をクリアさせるため、パワーが85馬力に制限されているにも関わらず、これが全く気にならないことだ。スロットルを開ければレスポンスよく加速する。

その時に聞こえてくる3気筒特有のザラついたサウンドを楽しみたいがために、ついつい無駄にギヤチェンジをしてしまうほど、走りに引き込まれる。何よりこれほどの心地よさの対価が、90万円を下回るということも見逃せない。

明確な設計思想や、軽量化からくる運動性能、そして経済性においても、ミドルクラスの新たな可能性を広げた「ニュー・ストリート・トリプル85」。これがユーザーに受け入れられないはずはない。
ニュー・ストリートトリプル 85
車両本体価格:¥890,190
排気量:675cc
最高出力:63kW(85ps)/10,000rpm
最大トルク:60Nm/8250rpm

TRIUMPH NEW TIGER 1050

コーナーを攻める気になる オールラウンド・アドベンチャー

「もしかしたら…」試乗中、ふとそう思いつき、ギアを6速に入れたまま停止。そのまま、ゆっくりとクラッチをつないで発進してみた。すると、思った通りと言うべきか、まさかと言うべきか、さほど嫌がる素振りを見せることなく車体は前に押し出され、そのまま車速を上げてみせたのだ。

「ニュー・タイガースポーツ1050」が、どういうキャラクターかと聞かれれば、この体験について語るのが最も分かってもらいやすい。あきれるほど広いトルクバンドを持っている。
広さで言えば、カバーするカテゴリーに関してもそうだ。トライアンフは、すでにタイガーの名を持つモデルを数機種販売しており、800ccのタイガー800と同XC、そして1215ccのタイガーエクスプローラーと同XCという2機種4バリエーションがある。

但し、これらのモデルは軸足がオフロード寄りで都会では持て余しがちだった。そこで、よりオンロードでの性能を高めて新たにラインアップされたのが、このタイガースポーツというわけだ。
 
基本はタフな使い方にも耐えるアドベンチャーとして造られている。それを防風効果に優れたカウルで覆い、高速巡航性を追求。各部の軽量化と剛性の高いフレームでハンドリングも向上させ、低シート化によって扱いやすさも手に入れている。

要するに、高速道からワインディング、街中に至るまで、どこでも快適に走れる万能さが盛り込まれたというわけである。
エンジンのフレキシブルさについては既述の通り。1215ccのタイガーエクスプローラーより2100回転も低い4300rpmで最大トルクを発生するため、加速はイージーそのものだ。

驚いたのは、剛性感にあふれるフレームとそれに合わせてセットアップされたサスペンションで、高速域での走りはスーパースポーツのアップハンドルバージョンと言えるほどの安定感を発揮する。

バンクさせれば、リヤからグイグイと旋回し、大柄な車格を感じさせないほど小気味よくコーナリングを楽しめる。これは一台でなんでもこなしたいという望みに、存分に応えてくれるモデルである。
ニュー・タイガースポーツ1050ABS
車両本体価格:¥1,449,000
排気量:1,050cc
最高出力:92kW(125ps)/9,400rpm
最大トルク:104Nm/6,250rpm

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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