“カルチャー”としてのトライアンフ

アヘッド トライアンフ・ライブ2012

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8月31日から9月2日までの3日間、イギリス・レスターシャー州にあるサーキット、マロリーパークで『トライアンフ・ライブ2012』というイベントが開催された。トライアンフの創立110周年を祝うオーナーイベントでありながら、前半の2日間は夕方から夜にかけて音楽フェスへとカタチを変え、皆ビールを片手に大いに盛り上がる、日本ではちょっと考えられないようなモーターサイクルイベントである。

text:河野正士 photo:長谷川徹 撮影協力:トライアンフ横浜北 [aheadアーカイブス vol.119 2012年10月号]
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“カルチャー”としてのトライアンフ

“カルチャー”としてのトライアンフ

トライアンフ・ライブが開催されるのはこれが2回目。マロリーパークからほど近い、ヒンクレーに本社を構えるトライアンフが2年前に初開催した。意外だが、それが本社が主導する初のビッグイベントだったという。

ヒンクレー工場創立20周年を記念した1Dayイベントだったが、夕方からは音楽フェスへとなり、今回同様の盛り上がりを見せた。

これまで様々なメーカーのイベントに参加したりその様子を伝え聞いたりしたが、こんな、音楽フェスへとクロスフェードしていくメーカーイベントは見たことがなかった。

しかもフェスのトリを務めたのは、ロンドンオリンピックの閉会式にも出演した〝カイザーチーフス〟。いまやイギリスを代表するバンドだ。
かつて日本にもアイドルグループなどを呼んだ二輪系イベントがたくさんあった。そのときの現場は、それぞれのファンが完全に分かれていて相容れない雰囲気に満ちていた。

しかしトライアンフ・ライブでは〝TRIUMPH〟のロゴ入りジャケットを着た多くのライダーが夕方から芝生に陣取り、仲間たちとのお喋りを楽しみながら深まる夜と音楽を楽しんでいるようだった。

もちろん明らかに〝追っかけ風〟の若者たちもたくさん来場していたけれど、ビンに入れた水と油のような雰囲気は醸し出していなかった。
オリンピックの開会式&閉会式という、その開催国の歴史や未来を表現する場所に、新旧イギリスを代表するミュージシャンや風刺の効いたアーティストたちを揃え、〝文化〟を前面に押し出したイギリス。かつてイギリスはもちろん、世界中の大人たちを大いに悩ませたカウンターカルチャーは、未来に向かうイギリスの核となったのだ。

トライアンフは古くから、イギリス発のカルチャーと深くリンクしてきた。いや、正確にはカルチャーそのものだった。そう考えると、モーターサイクルと音楽が混ざり合うトライアンフ・ライブ的な思考は、極々当たり前なのかもしれない。

だとしたら、こんなに羨ましいことはない。イギリスの二輪市場は、日本同様、とても厳しいと聞く。しかし音楽やファッションとともに、文化としてのモーターサイクルの価値を見いだし、他と交わり、化学反応の可能性を持ち続けているからだ。身体の芯まで冷えたマロリーパークの芝生の上で、そんなことを考えたのだった。
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