スペックを超えた250

アヘッド SUZUKI GSR250

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またがったときにサスペンションが上品な動きをしたので、声が出そうになった。車体がゆったりと前後に動く感触は明らかにひとクラス上のものだったのだ。軽快な反面、時に落ち着きのない挙動を示す250㏄クラスとしては、異例だといってもいい。その瞬間、このバイクが予想以上の走りをしそうだと直感した。

text:横田和彦 photo:渕本智信 [aheadアーカイブス vol.119 2012年10月号]
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スペックを超えた250

スペックを超えた250

●SUZUKI GSR250
車両本体価格:¥438,900
排気量:248cc
最高出力:18kW(24ps)/8,500rpm
最大トルク:22Nm(2.2kgm)/6,500rpm
問い合わせ:スズキ(株)お客様相談室
TEL:0120(402)253
www.suzuki.co.jp


'80年代のバイクブームを体験した40〜50代のライダーには「まずスペックで判断する」という悪いクセがある。実は僕もそれが染み付いているひとりだ。

DOHC4気筒、1万5千回転からレッドゾーン、45馬力、200㎞/h…。バイクに興味を持ち始めた10代の頃は、雑誌にこんな刺激的な言葉や数字が並んでいたのだから無理もない。単純にその視点だけで見てしまうと、現代の250㏄マシンは一昔前のレプリカより魅力的には映らない。

だが実際に乗ってみると、スペックを大きく上回る感動を与えてくれるバイクが少なくない。それは街中で多用する低中速域でのエンジン特性や走行性能を重点的に磨き上げているからである。
GSR250もそんな一台だ。小柄な女性が乗ると大型バイクにも見える堂々としたスタイルは「B-KING」の流れ。今風に再構成されたフロントマスクやビルトインウインカーなどで独自の存在感を主張している。

また細かい部分まで丁寧に作りこまれているのが日本メーカーらしく好感が持てる。タンデムライダーの居住性が高い、大きめのダブルシートやグラブバーも魅力の一つだ。

セルですぐに目覚める新開発並列2気筒エンジンは振動が少なくアイドリングからして上品だ。アクセルを操作するとしなやかにレスポンスする。聞けばハヤブサやGSX-Rと同じ設計陣が手掛けたという。

なるほど、熟成した印象を受けるわけだ。納得しつつギアを1速に入れて走り出す。「低中速時、特にアクセルの開け始めのフィーリングにこだわりました」という開発者の言葉通り、スタートから法定速度+αまでストレスなく加速する。

高回転まで素直に伸びるのはパラレルツインならでは。ライダーの意志から逸脱しないエンジン特性だとこんなにも精神的なゆとりを持てるのかと再認識する瞬間だ。
落ち着いた車体の挙動もアッパークラス的な印象作りに貢献している。だからといって鈍重すぎないところが味付けの妙。あるバンク角を越えるとやや切れ込む印象があるが、慣れれば軽快にコーナーをクリアできるハンドリングを持つ。大きなバイクを操っているぞ、という手応えのあるスポーツ感を味わえる。

実用域での使い勝手を徹底的に追求した結果、市街地を流しているだけでGTらしい乗り味が感じられるGSR250。腰がずれるような加速や息が止まるような超高速走行はできないが、それをしたかったら他のバイクを選べばいいという潔ささえ感じられる。

我が道を行く。そんな意志を秘めたバイクである。

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text:横田和彦/Kazuhiko Yokota
1968年生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクやサイドカーを乗り継ぐ。現在はさまざまな2輪媒体で執筆するフリーライターとして活動中。大のスポーツライディング好きで、KTM390CUPなどの草レース参戦も楽しんでいる。
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