2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.3

2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.3

アヘッド パイクスピーク

そんな中、トライアンフ横浜北の全員が本当に踏ん張ってくれた。

我々のようなプライベートチームの場合、レースにまつわる様々な作業は、基本的に「好きだから」とか「なんとかしたいから」といった気持ちありきの手弁当にならざるを得ない。

実際、この時のスタッフの献身もそれ以外のなにものでもなく、本来の業務の合間を縫って、エンジンのオーバーホールからパーツの手配、果てはスポンサー探しに至るまで、素晴らしい連携でタイトなスケジュールを切り抜けてくれたのだ。

そして4月29日、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイにてテスト走行にこぎつけたのである。

ところで、パイクスピークのクラス分けとそのレギュレーションはどうなっているのか?

2輪部門に関しては、排気量をベースに下から250クラス、450クラス、ヘビーウェイトスーパーモトクラス、スーパーバイク750クラス、そして1205クラスに分けられている。この他にも、サイドカーやATV、電動バイクにヴィンテージなど、実に多様なクラスが設けられているのがアメリカらしい。

我々がエントリーしたのは、最速タイムを争うことになる1205クラスだ。

このクラスのエンジンは、4ストローク751㏄から1205㏄までの3気筒以下で争われる。市販状態でバーハンドルを装備している車両に限り、エンジンとフレーム、外観はノーマルを維持。ただし、サスペンション、ブレーキ、ホイール、マフラー、エンジンマネージメントシステムは交換可というのが主なレギュレーションだ。

要するに、ストックにかなり近く、それゆえ元々のポテンシャルとメンテナンス状態がタイムを左右することを意味する。

これらを踏まえると、スピードトリプルRのスペックとトライアンフ横浜北の技術力は最良の選択だったと思う。

ちなみに、同クラスでここ3年間、連勝を重ねているのがドゥカティのムルティストラーダ1200で、今年も複数台がエントリー。しかも、そのうちの1台には元全米モトクロスチャンピオンのミッキー・ダイモンドが乗ることが発表されており、我々のようなルーキーにとって、その壁はかなり高い。

それもあって、車両作りに関してはできる限りの手を尽くしたかった。中でも、最大の懸案事項がタイヤの選択とマッピングの問題だった。

というのも、パイクスピークのゴールは富士山より遥かに高い標高4300mにある。気圧は低く、山頂に近づけば近づくほどタイヤの内圧は上昇し、ガソリンの燃焼に必要な空気の密度は薄くなっていく。

つまり、通常のサーキットのような感覚でセットアップしてスタートすると、途中でタイヤがパンパンに膨張してグリップを失い、エンジンには空気が行き渡らず、パワーが落ちる…と、そんな状況に陥るのは明らかなのだ。

この問題に対して、最大限のサポートを図ってくれたのがダンロップタイヤとマッピングのスペシャリストとして知られるジャムの代表、成毛浄行さんだった。

まず、タイヤに関してはスリックなどのレース専用タイヤの装着は止めた。こうしたタイヤは空気圧と路面温度に対して敏感で、その時々に応じたピンポイントの管理が必須になる。基本的に、走っている最中に大幅に気圧が変化するような走行条件は想定されておらず、過去のデータもないため、セッティングを外すと危険だと判断したのだ。

結果、ストリート用でありながらサーキットもこなすという絶妙なポジショニングにあるスポーツマックスα13を選ばせてもらった。

マッピングに関しては、インジェクションコントローラーのラピッドバイクを導入し、気圧や気温に対する自動補正機能を強化。外気に合わせて、常に最適なガソリンを噴射できるようにモディファイを行ってもらったのだ。

これらの装備の作動状況をサーキットで確認し、2日間のテストを通して、できる限りの準備を終えた。

そして、5月7日。最終メンテナンスを受けたスピードトリプルRを船積みのために梱包し、ひと足早く、アメリカに向けて送り出したのである。現地での初テストは、6月15〜16日を予定している。

アヘッド パイクスピーク

▶︎標高差を想定したマッピングに書き換えた。ハンドルにスイッチを増設し、走行中の切り替えも可能としている。

アヘッド パイクスピーク

▶︎スピードトリプルRは、前後OHLINSが標準装備。リアはTTX仕様。

アヘッド パイクスピーク

▶︎DUNLOPスポーツマックスα13は、サーキット走行を視野に入れながらも公道走行用に作られた。路面のミューが低いパイクスピークに合わせた選択。

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。

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