「Octane(オクタン)」日本版を発行する理由

アヘッド Octane

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英国デニス・パブリッシング社とのコンテンツ提携がついに叶い、今春から僕たちの手で「Octane(オクタン)日本版」を発行することが決まった。

text:堀江史朗 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.123 2013年2月号]
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「Octane(オクタン)」日本版を発行する理由

「Octane(オクタン)」日本版を発行する理由

オクタンとは主にヴィンテージカーやスーパースポーツカーを扱うカッティングエッジな自動車雑誌。僕はオクタンの写真の美しさや特集のユニークさに魅了されることが多く、ヨーロッパに出掛ける度に空港のスタンドで手に入れていた。

ページをめくっているだけでホッと気持ちを落ち着かせてくれたり、逆に妙に高揚させてくれたり。Octaneには、何か大切なおもちゃに囲まれて遊んでいるような、そんな愉快な気分を味合わせてくれる不思議な魔力がある。

僕のクルマ好きは子供のころからの筋金入りだ。街で見掛けるクルマの車名は、グレードまで含めてほぼ正確に覚えていた。友人たちもマニアックな愛好家が多く、ホイールキャップの写真を見ただけでインパネのデッサンを描くことができる、目をつぶってエンジン音を聞くだけで車名・エンジン形式を的中させる、などなど、まぁ完全なクルマオタクとして育ってきてしまった。

新卒で入社したリクルートではすぐに異動願いを出してカーセンサー編集部に潜り込む。当時はインターネットがない時代で、メディアは分厚い情報誌のみだった。表紙は大切に乗られている旧車と実際のオーナーを海外で撮影するという贅沢なもので、そのインタビュー記事は「カバーストーリー」として巻頭に収められる。

ラッキーなことに僕はその取材を担当する機会が多く、様々な国で素敵なクルマ生活を目の当たりにすることができた。実際カーセンサーの広告にはそれほど旧い中古車が載っているわけではなかったものの、読者に夢を抱いてもらうというコンセプトのもと、取材ターゲットはボディラインの美しいレアなヴィンテージカーばかり。この取材、クルマ好きとしては盛り上がらないワケがない。

あるときロンドン郊外にあるコレクターの邸宅を尋ねた。14世紀に建てられたという納屋は今にも崩れそうな外見だったが、一歩中に入ると室内は異常なほど明るく、最新鋭の設備が整っていた。どうやら数カ月もの時間を掛けて伊ミッレミリアに出走する車両を整備する拠点らしい。部屋毎に数人の職人が配置され、皆黙々と手を動かしている。

やや張り詰めた雰囲気のなか、機関系の匠に話を伺うことを許されたのだが、彼はシワだらけの顔をさらにくしゃくしゃにして嬉しそうに話しはじめた。
「エンジンをこんなふうにバラしていくと、当時の開発者の想いが手に取るようにわかる。一つ一つのパーツのカタチに、次の世代へのメッセージが託されている、そんなもんだ」。

クルマは、いつの時代でも技術の粋が詰まった最先端の工業製品。エコだって安全だって、もちろんスピードだって、連綿と続いてきた開発者のこだわりが育んだ工夫の賜物。特に自由な発想が許された時代に生まれた恵まれたクルマからは、我々現代人でも学ぶべきことはまだたくさんあるはずである。

デニス社で発行契約を取り交わす直前、雑誌作りにおいて最も大事にしているポリシーをOctane編集長のデイビッド リリーホワイトに尋ねてみた。彼は何の迷いもなく「ストーリー」だと答えてくれた。「高額で希少なクルマだけを取り上げているわけではない。そのクルマを、誰が、どのように愛してきたか、それがすべてだ」と。

良いこと言うね、デイビッドさん!

Octane日本版は3月26日に創刊します。クルマにおける温故知新を楽しみつつ、日本にもこんな素晴らしい自動車文化があるということを、僕は世界に発信していきたいと考えています。

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