電気のチカラでサビを止めるラストアレスター

アヘッド ラストアレスター

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錆の進行を遅らせるシステムがあると聞くと、「自分には関係ない」と思うかもしれない。確かにそうだ。ひと昔前のクルマならいざ知らず、最近のクルマは塗装技術が発達しているので、特別なメンテナンスを施さなくても錆とは無縁でいられる。気にしたことすらないかもしれない。

text:世良耕太 photo:  長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
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電気のチカラでサビを止めるラストアレスター

電気のチカラでサビを止めるラストアレスター

だが、それはクルマを大ざっぱに眺めた際の話である。ミクロに観察すれば、放っておけない現象に気づくことになる。原因のひとつは飛び石などによる小さな傷。この傷がコート層や塗装を切り裂いて金属面まで到達すると、水分が染み込んで腐食反応が起こり、錆が発生する。

飛び石の場合はアクシデントのようなものだが、紫外線や酸性雨に鳥のフンなど、クルマのボディは日常的にさまざまなダメージを受けており、それらが金属の腐食を誘発する。塗装の浮きは錆の予備軍だ。

錆は酸化還元反応によって金属表面が電子を失ってイオン化し、表面から脱落することで進行する。簡単に言えば、金属の電子が水に奪われることで進行するわけだ。水に電子が奪われてしまうなら、補充してやればいい。そうすれば錆の進行を遅らせることができる。その発想を具現化したのがラストアレスターだ。

ラストアレスターは電気をコントロールするユニットと、車体に電気を送り込むアルミ製のアノード(電極)で構成される。このアノードを車体に装着するのだが、その際、雨水などが掛かる部位を選ぶのが肝要。なぜなら、ボディに付着した水を介して金属面に電子を供給するからだ。アノードはホイールハウス内に装着するのが効果的。1つのアノードで半径3mの範囲に防錆効果が及ぶので、前後左右4ヵ所のホイールハウスに取り付けるのが理想だ。

バッテリーから電気を受け取ったコントロールユニットは、ケーブルを通じて各アノードに一定周期で微弱電流を送り込む。アノードは絶縁体を介してボディに装着されているので、乾燥時には電流は流れない。アノードに水分が付着したとき、または湿度が60%を超えると電流が流れる仕組み。ボディに流れる防錆電流はマイクロアンペアレベルだから、電流が流れているときにボディに触れても一切問題ない。アノードから水膜あるいは水分を介して流れた微弱電流は、金属面にできた小さな傷に電子を送り込み、金属分子を安定させる働きをする。

それだけではない。供給される電子がめっきの一種であるイオンプレーティングと同様の働きをするため、塗装表面の光沢を引き上げる効果を発揮する。この機能だけでもありがたいと感じるユーザーはいるだろう。

ラストアレスターはクルマに特化した電子防錆システムだが、我々の身の回りには、同種のシステムが役立っている。集合住宅などの鉄製非常階段や配水管、橋脚などに適用されて実績を挙げているのだ。錆の進行を遅らせ、補修費用を抑えられる点が歓迎されている。

ラストアレスターは積雪地で働く車両にも装着されているが、この場合はアンダーシャシーを錆から守り、車両の耐用年数を延ばすのが目的。さまざまな分野で役立っている実績のある技術を、クルマの美観維持に生かそうというわけだ。

このシステムは、もともとはアメリカ・フロリダの科学者が開発したもので、1980年代後半に日本上陸を果たしている。製品名に変わりはないものの、従来の製品と2008年に生まれ変わった現在の製品では、洗練の度合いが異なる。

従来はアメリカ側で開発した製品をそのまま日本に持ち込んでいたのだが、新生ラストアレスターは、クルマに愛情を注ぐ日本のユーザーの嗜好を反映した仕様変更が施されている。アノードがその代表例。よりシンプルな構成にし、取り外してもクルマに跡が残らないようにした。

錆の進行を遅らせ、光沢度を引き上げる。科学の力を利用した一挙両得なボディコートシステム。
それがラストアレスターである。
クルマの塗装浮きや、飛び石などによる避けられない小さな傷からもサビは始まる。そんなサビの進行を微弱電流によって食い止めるのがラストアレスターである。

問い合わせ先:(株)ラストアレスター・ジャパン
TEL:03(5847)8547 
Email:raj-info@rustarrestor.jp
URL:www.rustarrestor.jp
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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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