オンナにとってクルマとは Vol.31 納車室

オンナにとってクルマとは

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学生の頃から輸入車が好きで、愛車のほとんどは知人から購入した中古車だ。その知人たちが人生のひと時を共にしてきた、大切な家族を譲り受けるような気持ちで、納車の日にはちょっと寂しそうな旧オーナーを前に、私もこのコを大切にしなきゃと心に刻んだものだった。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.125 2013年4月号]
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Vol.31 納車室

Vol.31 納車室

そして輸入車雑誌の仕事に就き、読者の投稿ページを担当すると、やはり納車のエピソードが多く寄せられた。新車を購入した人からも、「納車式でスタッフ全員から拍手で見送られました」とか、「ドアを開けたら花束とメッセージカードがあり、感激しました」といった心温まるものばかりだった。
 
ところが、日本車に関してはあまりそうした話を聞いたことがなかった。私は新車で3回ほど日本車を買ったが、納車は良く言えばシンプルで、あっさりとしたビジネスライクなもの。

商談の時と同じテーブルで書類の説明をひと通り受けたあと、お客様駐車場に置かれた愛車と対面という流れで、感動もなにもない。まぁ、輸入車とは販売台数のケタが違うわけだから、いちいち感動的な納車式などやらないのかな。ちょっと寂しいことだけれど仕方ない。そんなふうに思っていた。
 
それが先日、まだオープンして間もないというスズキのディーラーへ取材に出かけると、そこにはなんと、「納車室」なる部屋があるではないか。ショールームからドアを開けて入ると、ピカピカの愛車が置かれていて、前方のシャッターが開くとそこから乗って帰ることができるという、特別な空間だ。

これまでは、やはり屋外のお客様駐車場に停めて納車を行っていたというが、社内の通称「女子会」プロジェクトで持ち上がった意見によって、この納車室が取り入れられたそうだ。
 
人生のうちの何年かを一緒に過ごす愛車と、初 めての一歩を踏み出す時というのは、やはり期待と不安が入り混じっているものだ。モノを買うのではなく、これは新しい出逢いの瞬間そのもの。

その気持ちを汲んで送り出してくれたら、クルマに対してはもちろん、メーカーに対しても、セールスマンに対しても、ビジネスを超えた情が湧いてくるもの。輸入車にあって日本車になかったもののひとつを挙げるとすれば、そうした気持ちの部分なのではないだろうか。
 
スズキの納車室を見て、日本車はまだまだこれから魅力的になる。そう思えて嬉しくなった。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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